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ユニクロ原宿店最速レポート 「ポップカルチャーの情報発信基地」の全貌

ファーストリテイリング(山口県/柳井正会長兼社長)傘下のユニクロ(同)は65日、「ユニクロ原宿店」(以下、原宿店)をオープンする。開店に先駆け、同3日に報道陣向けの内覧会が開催された。最先端ファッションの発信地としても知られる原宿への出店ということもあり、同店は「ポップカルチャーの情報発信基地」として多くのアーティストやブランドとコラボした商品の品揃えを強化しているほか、アプリと連動した240台のディスプレイを導入。リアルとバーチャルの融合を図り、実店舗ならではの魅力を追求した店舗となっている。

イケアの小型店も開業する複合商業施設「WITH HARAJUKU」に出店!

ユニクロ原宿店は、JR原宿駅前の複合商業施設「WITH HARAJUKU」内にオープンする

 原宿店は、JR原宿駅から出て徒歩1分の場所にある複合商業施設「WITH HARAJUKU(ウィズ原宿)」の地上1階と地下1階に出店しており、2フロアを合計した売場面積は約600坪となっている。同施設には原宿店のほか、家具専門店「IKEA」の国内初の小型フォーマットや、「ドクターマーチン」「オッシュマンズ」などの専門店、「スターバックス」「オーバカナル」などのカフェ、イタリア発の食料品店「EATALY」なども65日から25日にかけて順次オープンする予定だ。そのほか、賃貸マンションや、展示会・セミナーなどに利用できるホールも併設している。

 ユニクロが原宿に出店するのはこれが初めてではない。1998年にオープンした旧「ユニクロ原宿店」は同社の都心型店舗の1号店で、アウトドアウエアのイメージが強かったフリースをカジュアルウエアとして打ち出し、全国に浸透させるきっかけとなった店舗だ。また、2007年には同店を改装し、さまざまなブランドやアーティストなどとコラボしたユニクロの人気Tシャツブランド「UT」の専門店「UT STORE HARAJUKU.」として再オープンした(12年に閉店)経緯がある。

全国最大規模のUT売場

 そんな旧店舗の閉店から約8年、原宿に“帰還”したユニクロは、どのような売場づくりを行っているのか。写真とともに見ていこう。

 地上1階は「UT POP OUT」と銘打ったUT専門の売場で、「ポップカルチャーの情報発信基地」を体現した演出を施している。壁面上部に展示されているUTの新商品や人気商品は、さながら博物館のギャラリーのようだ。ユニクロは今シーズン1000種類以上のUTを発売する計画で、原宿店にはシーズンにより変動はあるが常時500600種類の商品が並ぶ予定となっている。

1階壁面上部には、UTの新商品や人気商品がギャラリーのように展示されている

 また、UTの新商品は基本的に原宿店とECで他店よりも先行して発売し、その後全国の店舗に展開するという。「カルチャーの発信地として、原宿店では新商品をいち早くお客さまにご提供する」(ユニクロ広報担当者)。

 そのほか、店頭にはアメリカのエレクトロポップミュージシャン、ビリー・アイリッシュと、現代アートの巨匠、村上隆とのコラボ商品をUTで発売することを記念し、村上氏が制作したビリー・アイリッシュのモニュメントが展示されている。ポップカルチャーの最先端店舗であることをアピールした演出だ。

店舗入口そばに展示されているビリー・アイリッシュのモニュメント

 また、原宿店からはUTでコラボしたブランドやアーティストのノートや豆皿、バンダナ、ステッカーなどの雑貨類の販売も開始している。原宿は観光客も多く、一定のお土産需要を見込んでの販売だという。

UTは今後、Tシャツだけでなく豆皿やノート、ステッカーなどの雑貨も販売する

 

リアルとバーチャルが融合した売場

 UTのほか、原宿店の取り組みで注目したいのが、地下1階で展開する「StyleHint(スタイルヒント)」のコーナーだ。スタイルヒントとは、ユニクロとGU(ジーユー:東京都/柚木治社長)が共同で開発・運営しているスマートフォンアプリで、ユニクロやGUで購入した商品を使ったコーディネートを投稿することができる。

地下1階では、スマートフォンアプリ「スタイルヒント」と連動した240台のディスプレイを設置した

 スタイルヒントのコーナーでは壁一面に240台のディスプレイが埋め込まれており、ユーザーが投稿した着こなしの写真が一定時間で切り替わって表示されるようになっている。気に入ったコーディネートがあれば、ディスプレイをタッチ操作するか、表示されたQRコードを自分のスマートフォンで読み込むことで店内での商品の場所を探すことができるという仕組みだ。そのほか、コーディネートの写真を撮影できるブースも設けており、その場で撮影した写真をディスプレイ上で共有することもできる。まさに、「リアルとバーチャルが融合した」売場だ。

地元の店舗のロゴを使ったTシャツを作成できる

 そのほかの取り組みとしては、オリジナルのTシャツやトートバッグをつくることができるサービス「UTme!」で原宿にある飲食店や雑貨店とコラボしており、これら店舗のロゴを使用した商品を作成することが可能となっている。「地域と共存・共栄できる店舗をつくりたい」(ユニクロ赤井田真希CEO)という考えを反映させたものだ。

オリジナルのTシャツやトートバッグを作成できるサービス「UTme!」では、原宿の飲食店や雑貨店とコラボした(写真右部)

 また、定額音楽配信サービスの「Spotify」ともコラボ。ガールズバンドのCHAIなど、若者に人気のアーティストがセレクトした原宿店限定のプレイリストの配信も行っている。

原宿店では定額音楽配信サービス「Spotify」ともコラボし、ガールズバンドのCHAIなど、若者に人気のアーティストがセレクトした原宿店限定のプレイリストの配信も行っている

 新型コロナウイルスの感染が拡大し、ECの利用率が高まるなか、リアル店舗は「わざわざ足を運ぶだけの価値」を提供しなければ生き残れない。原宿店は「ポップカルチャーの情報発信基地」として、単に商品を販売するだけでなく、デジタルを活用した販促や、多くのブランド・アーティストとの協業により最先端の情報発信を行い、リアル店舗ならではの価値を追求しているといえるだろう。