メニュー

東急ストアが挑戦する駅ナカ「超小型スーパー」、成功の条件とは?

東急ストア(東京都/須田清社長)が「超小型スーパー」の展開に乗り出した。11月27日、東急田園都市線・大井町線「二子玉川」駅改札内に第1号店をオープン。売場面積はわずか49坪で、総菜と加工食品に特化した品揃えとなっている。コンビニ的な利便性を提供しつつ、話題性のある商品も多く扱い”買物の楽しさ”も提案する。軌道に乗れば駅ナカやオフィスビルなど新たな立地への出店にもはずみがつくとみられるが、果たしてその成否は。

女性客ターゲットに「利便性」と「話題性」で勝負!

11月27日にオープンした「東急ストアフードステーションミニ二子玉川駅構内店」

 二子玉川駅は、東急田園都市線と大井町線が乗り入れる東急線のターミナル駅の1つ。周辺には「玉川高島屋S・C」や、2011年に開業したオフィス複合型商業施設「二子玉川ライズ」などがあり、乗降人員は1日あたり16万5000人(乗り換え客を除く)を数える。 

 そんな同駅の改札内に11月27日、東急ストアの新業態「東急ストアフードステーションミニ二子玉川駅構内店」(以下、二子玉川駅構内店)がオープンした。書店の跡地への居抜き出店で、売場面積はわずか49坪(162㎡)の超小型スーパー。標準フォーマット「東急ストア」、高質フォーマットの「プレッセ」、小型スーパーの「フードステーション」、そして昨年9月に「渋谷ストリーム」内に開業した総菜専門店「プレッセシブヤマーケット」に続く、5つ目の新業態の位置づけである。

品揃えはグロサリーと総菜が中心。生鮮は扱っていない

 当然のことながらターゲットは駅利用客だが、二子玉川駅は平日・休日ともに女性の構成比が高く、とくに20~30代の年齢層がボリュームゾーンとなっている。そのため二子玉川駅構内店では女性にフォーカスした商品政策(MD)を導入。生鮮は扱わず総菜と加工食品に特化した商品構成のなかで、話題性のある商品を多く提供することで集客につなげたい考えだ。

菓子のアイテム構成比は50%

 このうち加工食品では菓子の販売に力を入れており、アイテム構成比は約50%に上る。とくに輸入菓子の品揃えが充実しており、担当バイヤーがヨーロッパの商品展示会で発掘してきた”インスタ映え”する商品も多く揃えた。また、「キットカット」のご当地商品を集積したコーナーや、人気菓子のパッケージデザインを取り入れたバッグなどを集めた「おかしな雑貨」コーナーも設置している。

フランスの「ル・ショコラ・ド・フランセ」のチョコレート。見た目も楽しい”インスタ映え”するパッケージデザインが目を引く
「おかしな雑貨」コーナーでは有名菓子のパッケージデザインを取り入れたバッグなどの雑貨を販売

 

総菜はすべてアウトパック 

カバンに入るサイズの弁当を提供

 総菜は店内に加工スペースがないため、すべてアウトパックとなっている。午前中は外部メーカーの弁当や米飯類、午後以降は東急ストアのプロセスセンター「長原サテライトキッチン」から供給されるフライ類などの温総菜がラインアップに加わる仕組みだ。

 総菜でとくに力を入れているのは弁当だ。オフィスに向かう前に昼食用に購入してくお客が多いと見込み、朝の時間帯から豊富に展開する。カバンに入るサイズの商品や、十穀米を使用した500キロカロリー以下の商品、彩りにこだわった商品など、女性客のニーズに応えた商品が多い。

三軒茶屋の人気パン店「nukumuku」の商品

 売場ではこのほか、地元・世田谷の人気専門店の商品も多く取り扱う。このうち、三軒茶屋の人気パン店「nukumuku(ヌクムク)」の商品はゴンドラエンドでコーナー展開し、「コッペパン」(260円、以下税抜)、「チョコクロワッサン」(260円)、「生ハムのパニーニ」(330円)など常時15種類程度を揃える。また、チルドデザートでもティンラ成城の「成城チーズプリン」、クレヨンの「パンナコッタ」など、世田谷区内の人気スイーツ店の商品を販売している。

成功のカギは利便性と話題性のバランス

 今回の新業態開発のねらいについて東急ストアの担当者は、「いろんな引き出しを持ちたい」と語る。「当社は駅前立地の店を多く持っているが、(駅ナカという)引き出しを増やすことで、出店余地を広げることができる」(同)。東急ストアが主戦場とする都内では出店用地の確保がいちだんと難しくなっており、他社との競争も激化している。そんなかで駅ナカ立地の超小型スーパーというフォーマットを確立できれば、新たな成長エンジンとして出店スピードを加速することができるのは確かだろう。

 ただ、確固としたフォーマットづくりには時間も要しそうだ。実際、駅改札内への出店は初めてということもあり、「品揃えについてはギリギリまで修正を重ねた」(開発担当者)という。

 カギとなるのは、「利便性」と「話題性」のバランスをどのように保つかということだろう。利便性に偏ればコンビニとの差別化が難しくなり、話題性に偏ればふだん使いしにくい立ち位置の不明瞭な店になってしまう。東急ストアは今後の利用動向を細かく分析しながら、フォーマット確立をめざす方針だ。

 

■店舗概要

店舗名 東急ストア フードステーションミニ二子玉川駅構内店
住所 東京都世田谷区玉川2-22-13 二子玉川駅構内
売場面積 162㎡
営業時間 7:00~22:00
年商目標 2億6000万円
従業員数 14人(社員1人、パート・アルバイト13人)