食品スーパー業界では今、ディスカウントフォーマットが注目を集めている。埼玉県を地盤とする食品スーパーチェーンのマミーマートは2022年5月、ディスカウント型の新フォーマット「マミープラス」の1号店を千葉県流山市に出店した。同9月に2号店を埼玉県戸田市にオープンした。本稿では、マミープラス2号店「マミープラス下戸田店」の売場を見ていこう。
調査日=1月10、12日 ※本文中の価格はすべて本体価格
「マミープラス」とはどんな店なのか
マミーマートが2022年9月に改装オープンした「マミープラス下戸田店」(以下、下戸田店)は新潟県長岡市に通じる国道17号沿い、戸田市と蕨市との堺付近に店を構える。
同店の開店は2018年12月。1階が駐車場、2階が売場の、いわゆるピロティタイプの店舗で売場面積は約630坪(歩測)となっている。店舗周辺は「ヤオコー蕨錦町店」「ベルクス戸田店」「ドン・キホーテ蕨店」など有力チェーンがひしめく激戦区で、マミーマートとしてはジリ貧状態であったと思われる。そうした状況の打開策が、「マミープラス」への業態変更というわけだ。
マミーマートは現在、埼玉県51店、千葉県21店、東京都3店、群馬県2店、栃木県1の合計78店を展開する。そのうち、「行くのが楽しくなる食の専門店」をコンセプトとする「生鮮市場TOP」フォーマットは現在、19店舗にまで増えている。
同フォーマットでは、日配品や加工食品ではEDLP(エブリデー・ロープライス)で地域最安値を訴求しつつ、生鮮食品では価格だけで なく鮮度や品質にもこだわっているのが特徴だ。昨年4月に、大型店である「ビバホームさいたま新都心店」を「マミーマート」から「生鮮市場TOP」に業態変更したのが注目を集めた。
この「生鮮市場TOP」をディスカウントに特化するかたちで進化させたのが「マミープラス」だ。マミープラスのコンセプトは「美味しさをプラス」「満足をプラス」「家計にプラス」で、安さだけではない、付加価値を追求しているのが特徴だ。
ディスカウントフォーマットでは、EDLP(エブリデイ・ロープライス)政策で、品揃えは売れ筋商品に絞り、商品幅を狭めるのが一般的だが、マミープラスでは商品をあえて絞り込まず、通常の食品スーパーのスタイルにこだわっているようだ。こだわり商品は多少扱いがあるものの、基本はNB(ナショナルブランド)商品にPB(プライベートブランド)商品、CGC商品を絡めたオーソドックスな商品構成である。価格訴求と豊富な品揃えを両立させてこのスタイルが客層の幅を広げているようだ。
売場スペース構成比では、生鮮食品は全体の18%で、さらにその内訳をみると青果33%、鮮魚16%、精肉22%、総菜29%と総菜の構成比が高いことがわかる。全体では加工食品が32%、酒類が12%、菓子7%と、ドライ商品が合計51%と高い。日配は26%で洋日配の構成比が高いようだ。
●青果
目玉商品で「安さ」を演出!
売場を見ていこう。入口からエスカレーターで上がってまずお客を迎えるのが青果売場だ。レジ側から見て店舗左側壁面12尺は「超目玉コーナー」で、日替わりで目玉商品を販売。調査日はタマネギ1kgを250円、トマト箱入り(5個)を298円で提供していた。
超目玉コーナーの隣、84尺のスペースでは入口側からイチゴを先頭に、トマト、キューリ、レタス、ブロッコリーなどサラダ系の野菜を陳列。その対面は前方47尺でメロン、オレンジ、キウイといった輸入フルーツ、国産果実のほか、カット野菜やもやしなど、後方42尺では、小松菜、ほうれん草、白菜などのほか、ネギやピーマン、土野野菜、最後尾には生花をコーナー展開する。
平台はないものの品揃えも豊富で、価格訴求もしっかりと行われており、「ディスカウント」というコンセプトが打ち出された活気のある売場となっている印象だ。
●鮮魚
冷凍魚が充実、「寿司」の扱いも!
鮮魚はレジ側から見て左側壁面20尺でたらこやしらす、ししゃもといった塩干物、正面壁面24尺で寿司、刺身、たこ、エビなどを揃える。
寿司は店内加工で、「魚屋の本気寿司」と銘打ち、「寿司12貫」(798円)をメインに、「ねぎトロ丼」(398円)、「たっぷり鉄火巻き」(598円)、「まぐろ3種中巻」(500円)などを販売する。刺身はサク、切り落としなどを揃えた標準的な構成で、「刺身12点盛」(1980円)、「刺身とくとく盛(大)」(980円)、「本まぐろ切り落とし」(1000円)、「海鮮盛」(600円)などを販売する。
冷凍魚は5段のケース40尺で94品目と取り扱いは幅広い。「銀鮭甘口3切」(498円)、「めかじき3切」(598円)、「シシャモオス1パック」(298円)、「天然無頭14尾」(680円)、「白身魚と野菜の黒酢あんかけ」(398円)などを魅力的なラインナップとなっている
●精肉
国産商品を豊富に品揃え!
精肉は奥側壁面38尺のスペースで「冷凍肉」で「粕漬」「豚肉」「鶏肉」「ハンバーグ」「餃子」など約100品目を販売。搬入口を挟んだ奥側壁面64尺スペースは牛肉、豚肉、鶏肉、ひき肉コーナーで、グループ会社である彩裕フーズの商品を揃える。
牛肉コーナーは「マミーマート売上NO.1ステーキ」だという「牛肉カットステーキ用(豪州産)」(100g229円)や、北海道産黒毛和牛「宗谷黒毛」の「国産牛ももカットステーキ用」(100g399円)、「和牛肉カットステーキ用」(100g499円)など国産牛をメインに品揃えする。豚肉も国産重視で、北海道産の「三元豚」を軸に、カナダ産と米国産の輸入豚をラインナップする。鶏肉も国産がメインで、兵庫県産の「丹波鶏」、東北産の「めぐみ鶏」などこだわり商品の扱いもある。どのコーナーもケース下段で大型パックを配置しており、単価アップを図ろうとしているのが目を引いた。
●総菜
グループ会社、彩裕フーズの商品が充実
総菜はレジサイドの壁面に、「寿司」「サンドイッチ」「麺」「フライ」「おつまみ」「サラダ」「和総菜」「魚総菜」「スイーツ」、平場で「弁当」「フライ」、平台で「ピザ」をそれぞれコーナー展開する。店内加工商品、彩祐フーズの商品を織り交ぜた、豊富なラインナップがお客を引きつけている。
「おにぎり」「寿司」は18尺のスペースで売場を展開。彩裕フーズの「おにぎり」は8品目で1個110円をよりどり3個298円で販売。「寿司」は店内加工で「24貫」(980円)、「12貫」(598円)、「8貫」(500円)のほか、センター納品の「韓国風キンパ巻」(4個268円、8個498円)の商品も扱う。隣の12尺の平台2段では、「厚切りハムカツと玉子サンド」(298円)、「ホイップサンド」(350円)など自家製サンドイッチ12品目をよりどり2個550円で販売する。
「サラダ」「和総菜」は25尺で、「ポテトサラダ(大)」「3種のマカロニサラダ(大)」(各298円)、「鶏のシーサーサラダ(大)」(278円)、「チョレギサラダ」(298円)、「黒酢とリンゴの中華サラダ」(198円)などサラダにはとくに力を入れているようだ。和総菜は売れ筋が中心のオーソドックスなラインナップだった。「魚総菜」は4尺で、「にしん塩焼」「さば塩焼」(各298円)、「京都産本かます焼」(398円)などを揃える。
スイーツは16尺のスペースで「濃厚プリン」「レトロプリン」「コーヒーゼリー」などの自家製スイーツを各1個138円、3個298円で販売する。売場中央には8尺の平台什器を設置し、ピザコーナーを展開する。「ミックスピザ」「シーフードピザ」(各500円)などチルドピザ6品目のほか、「シカゴピザ(チーズ)」「ミートソース」(各698円)など焼きたてピザも提供する。
平場は26尺2段の什器を使って、前方に「中華」「天ぷら」「唐揚」、後方に「弁当」「焼きそば」「たこ焼」などを配置する。弁当は、店内加工の「特製ハンバーグステーキ弁当」「厚切りヒレカツ重」「「厚切りロースかつ重」(各398円)などのほか、「豚生姜焼弁当」「煮物弁当」「人気の洋食プレート」(各298円)など、彩裕フーズ商品も目立つ。
総菜は店舗と核とも言える売場となっており、競合店との差別化を意識した、独自のスタイルが構築されている。グループ会社である彩裕フーズの商品力に強い自信を持っているのだろうか。利益面の貢献度も高いとみられる。
後編では、日配・加工食品・菓子・酒類の売場を解説していく。
(店舗概要)
店名 マミープラス下戸田店
所在地 埼玉県戸田市下戸田2-31-4
改装開店 2022年9月17日
売場面積 約630坪(歩測)
営業時間 9:00~22:00
駐車台数 125台