イズミ(広島県/山西泰明社長)は10月27日、広島県東広島市に近隣型ショッピングセンター(NSC)の「ゆめモール西条」をオープンした。広島県では初のNSCで、同社としては3年以上ぶりの新規出店となる。核テナントの食品スーパー「ゆめマート西条」を中心に店づくりのポイントを見ていこう。
ショートタイムショッピングを実現するNSC
イズミが10月27日にオープンした「ゆめモール西条」は、JR西日本山陽本線「西条」駅から直線距離で約1.4kmの場所にある。食品スーパー「ゆめマート西条」を核とするNSCで、同店のほか29のテナントが入る。なお、10月27日のグランドオープンでは、ゆめマート西条のほか、「ケーズデンキ」「スターバックス」など22の専門店がオープンしており、2023年秋までに残りのテナントが開店していく予定だ。
2019年7月オープンの「ゆめマート青山」(福岡県北九州市)以来、3年以上ぶりの新規出店で、広島県では初の「ゆめモール」屋号での出店となったゆめモール西条。オープンニングセレモニーに臨んだイズミの山西泰明社長は、NSCタイプでの出店について「コロナ禍を経験したこの2年間、クローズドな大型店では不安を感じられるお客さまがいた。密にならない、かつ、ショートタイムで買物ができる店としてこのような店づくりに取り組んだ。来年秋までに段階的にテナントがオープンしていくのも密を避けるための試みだ」と話す。
ゆめモール西条では、約1380台の駐車場を取り囲むように各テナントが並んでいる。来店客は目的に店舗の近くにクルマを停め、ほかのお客との接触を最小限にしながらショートタイムで買物ができるというわけだ。
ミレニアル世代、Z世代を取り込む!
全国各地で人口減少が進む中、ゆめモール西条がある東広島市は世帯数・人口ともに増加傾向にあり、ほかのエリアと比べて若い年代が多い。そうした地域特性を踏まえ、ゆめモール西条では、ミレニアル世代やZ世代と呼ばれる若い世代の取り込みに力を入れる。
「今後はミレニアル世代やZ世代のような若い世代が社会の中心になる。従来のロイヤルカスタマーであるご年配の方々だけでなく、若い世代のお客さまに当社の新しい魅力を知っていただきたい。当社の10年後を見据えた、第1号店となる店だ」(山西社長)。
そうしたねらいのもと、ゆめモール西条では、「衣」「食」「住」、ぞれぞれの領域で若い世代を意識したテナントを誘致している。たとえば、衣料品では、中国地方初出店となるアダストリア(東京都)が運営するOMO(オンラインとオフラインの融合)型店舗「.st(ドットエスティ―)」、住居関連ではともに東広島市初出店となる「ハンプティーダンプティー」「ケーズデンキ」などが入る。
「食」の領域でも「すし遊館あさひ」「一風堂」など東広島市初出店の外食テナントを多く誘致するとともに、核店舗の「ゆめマート西条」においても若い世代を取り込むための試みが随所で行われている。
生鮮食品を強化!冷凍食品も充実
核店舗「ゆめマート西条」の売場を見ていこう。
同店の売場面積は約540坪。商品政策では、「30~40代の方々が志向するカテゴリーを拡大した」(ゆめマート西条店長の石元克典店長)とのことで、忙しい共働き世帯の需要に応える即食商品や冷凍食品など充実させたほか、食品スーパーの競争力の源泉となる生鮮食品も強化している。
たとえば青果売場では、地域の生産者とタッグを組んで地場野菜を豊富に揃える。週末には、店舗の軒下で地域の農産物を販売する「地元マルシェ」も開催する予定だ。
鮮魚売場では、要望が多かったという鮮魚の対面コーナーを設け、丸魚を豊富に揃える。開店日は、生魚をバケツいっぱいに詰めた「バケツ盛り」を1杯税抜1000円で販売しており、売場には人だかりができていた。
また、青果・鮮魚・精肉の売場ではそれぞれ冷凍ケースを導入し、各種冷凍食品を充実させているのも特徴的だった。
オリジナルブランド「zehi」の総菜
強化部門である総菜では、企画・製造・販売の全工程を自前で行う自社製造ブランド「zehi(ぜひ)」が目を引く。「店内仕込みのポテトサラダ」(100g168円)、「鉄板焼きのだし巻き玉子」(1本350円)、「泉唐匠のとりから揚げ(だし塩)」(100g158円)、「広島風お好み焼き(そば・うどん)」(各450円)など幅広いラインナップで展開する。
そのほか総菜部門では、近隣の競合店が20時閉店であることから(ゆめマート西条は22時閉店)、夕方以降の商品製造を強化するとしている。
店内に10台のサイネージを配置!
こうしたMDにスペースを割いた代わりに、加工食品は通常の8割ほどの約8000品目に絞っている。「購買頻度の高い商品に品揃えを絞ることで商品の回転率を上げていく」(石元氏)というねらいが込められている。また、同じ建物内に直営ドラッグストアの「ゆめドラッグ」、100円ショップの「ダイソー」などが入ることから日用雑貨も売場を縮小させているという。
そのほか、ゆめマート西条では店内に10台のサイネージを導入しており、商品の魅力を訴求する映像やゆめモール西条に入るテナントの情報などを配信している。同社によれば、サイネージでメーカー広告などを配信する「リテールメディア」の推進も今後の検討事項だという。
また、サイネージには、来店客の動きを把握するカメラが設置されており、今後は行動データを蓄積し、今後の店づくりに役立てていくという。イズミでは初の試みとなる。
GMS企業として知られるイズミだが、今後はゆめモール西条のようなNSCや食品スーパー単独での出店に注力する方針を打ち出している。食品スーパー業態を軸に据えた出店戦略はGMSに代わる新たな成長ドライバーになるのか。ゆめモール西条はその試金石となりそうだ。
(店舗概要)
開店日 2022年 10月 27日
所在地 広島県東広島市西条町助実1189番ほか
敷地面積 約9万6700㎡
延床面積 約3万3900㎡
店舗面積 約2万9300㎡
駐車台数 約1380台
建物構造 鉄骨造平屋建(一部多層階あり) 店舗数 30店舗(ゆめマート西条含む)