東京都を中心に首都圏で食品スーパー(SM)を展開するサミット(東京都/服部哲也社長)が、4月6日、120店舗目となる「サミットストア世田谷船橋店」をオープンした。ドミナントエリアでの出店であり、「社会に必要とされる新しいSMの創造」を目指す2020~22年度の中期経営計画「GO GREEN 2022」の取り組みを前面に打ち出した先進的な店舗だ。※文中の価格はすべて税抜き
ファミリー層に向けて「ドミナントエリア」に出店
サミットストア世田谷船橋店は、小田急線「経堂」駅から北西に1.7km、京王線「八幡山」駅から南に1.2km離れた、朝日新聞社の印刷工場跡地に開業した。同店は世田谷区で同社18店舗目の店舗であり、2km圏内にも、「サミットストア上北沢店」など3店が出店しているドミナントエリアへの出店である。
サミットストア世田谷船橋店の商圏は、世帯年収の高いファミリー層が多いのが特徴。店舗から半径0.5km圏内は6365世帯(1万2605人)が居住、20年度の住民基本台帳によると、対16年度比で世帯数が約6.9%、人口が約3.8%伸長している。さらに、同商圏内の年齢別人口比率では19歳以下と40歳代の構成比が同社全店平均よりも高く、2人以上の複数世帯の割合も高い。また、同店の隣にはファミリー向けマンションの「アトラスシティ世田谷船橋」(228戸、2LDK~4LDK)が建設中で、23年3月から入居開始予定となっている。世帯年収の高いファミリー層が多く、世帯数は増加基調、さらには大型マンションが隣接地に建設中という恵まれた環境下で、サミットは世田谷船橋店を旗艦店の位置づけでオープンした。
サミットストア世田谷船橋店の売場面積は499坪で、取り扱いアイテム数は1万828。同社取締役常務執行役員サイト開発部・店舗開発部分掌の星野郁夫氏は、「(同店から2.2kmの場所に21 年2月に改装オープンした)「ライフ千歳烏山店」(売場面積486坪)と競合することを考えると、約500坪の売場面積は必要。地域のお客さまに支持していただくためにも、幅広い品揃えを用意することは必須だ」と説明する。
旗艦店である世田谷船橋店の特徴は大きく二つだ。第一に、環境や社会に配慮する「社会に必要とされる新しいSMの創造」を目指す同社の20~22年度の中期経営計画である「GO GREEN 2022」を具現化した店である点だ。このビジョンは、同社が単に食材を提供するにとどまらず、事業を通じて高齢化や地域共生、環境保護などの地域社会の課題にも貢献し、SMの枠を超えた「生きる糧(かて)を分かち合うお店」になることをめざしたものである。
同店では初めて、トムラ・ジャパン(東京都/ソニー・サンダーバーグ社長)が開発したペットボトル自動回収機を設置。「社会課題の解決」という同社が目指す方向性をアピールする店舗になっている。ほかにも、店舗バックヤードに野菜くずなどの生ごみを微生物の働きで分解する「生ごみ処理機」を設置するなど、環境問題に配慮した取り組みが見られた。
また、4月30日には、サミットと親会社である住友商事(東京都/兵頭誠之社長)その子会社であるドラッグストア(DgS)のトモズ(同/徳廣英之社長)が「サミットストア亀有北店」など4店舗で運営する「けんコミ」をスポットで展開する予定だ。「けんコミ」は食と健康のコミュニティづくりを謳ったもので、健康測定器を使ったセルフチェックや管理栄養士による食事のアドバイスを無料で受けられるサービス。「けんコミ」を通して「GO GREEN 2022」の目標の一つである「地域コミュニティとの共生」を実現しようとしている。
「あったらいいな」を実現するMDを結実!
第二に、11年に出店した「成城店」から始めている、顧客目線に立ち、お客の「あったらいいな」を実現する商品政策(MD)の集大成を売場で表現しようとしている点だ。サミットは過去10年、部門横断型の商品開発に取り組み、「即食」「簡便」「小容量」を中心としたMDに注力し、お客の高い支持を受けてきた。世田谷船橋店でも、10年間のMDの成果が随所に見られた。売場を詳しく見ていこう。
総菜売場では、部門横断商品開発の集大成である商品を訴求していた。精肉部門の素材を使った「シーザードレッシングで食べるローストビーフ丼(598円)」や鮮魚部門(サーモンなど)と青果部門(アボカド)の素材を使う「海鮮ユッケ丼(ゴロッとアボカド入)(490円)」など、各部門が協力して開発する商品を販売している。
導入部の青果売場では、店内加工のメリットを生かした商品が並んでいた。既存店で人気の「ふわシャキ!千切りキャベツ(78円)」のほか、同店から新たに「千切りにんじん(93円)」「ちぎりレタス(118円)」を販売。共働きで忙しいファミリー層に向けて即食性の高い商品を豊富に取り揃えていた。
また、「農家さんから直送」という産地直送の野菜を販売するコーナーを設置。千葉県産の「ケール(138円)」など、フレッシュな野菜が並べられていた。
健康志向が強いお客に対しては、大豆ミートを使用した「さくさく大豆フレークと蒸し黒豆のサラダ(198円)」を訴求していた。同社広報によると、同商品は世田谷船橋店の出店を機に開発したもので、健康需要を深掘りするために販売したという。
鮮魚売場では、福井産「めばる(680円)」や大分産「ほうぼう(680円)」などの丸魚を並べることでライブ感を演出。ガラス越しに店員が「天然ぶり(100gあたり88円)」を捌く様子を見ることができ、鮮度をアピールしていた。
さらに、ファミリー層の「即食・簡便ニーズ」を捉える商品が並ぶ。焼くだけで調理が完了する、冷凍の「骨取り白身魚のバジルソテー(198円)」や、店内で調理した「脂ののったメロカマ西京焼(704円)」などを訴求していた。
驚いたのは、刺身の「つま」を従来より少ない量の食べきりサイズに調整していたことだ。これは、食べる際に、「(『つま』でかさ増しされていて)思ったより刺身の量が少なかった」とガッカリする体験を避ける工夫である。POPにも、「他店より(見た目と実際の量のギャップが)少ないです」と表記することでお得感をアピールしていた。「つま」の量の調整は、お客の声を受けて始めた取り組みで「あったらいいなを実現するMD」の典型的な例であると言える。
精肉売場でも、店内加工した商品を訴求。ソースから店内で調理した「アンガス黒牛もも赤身ステーキ シャリアピンソース(449円)」などを販売していた。
所得が高いお客が多い商圏特性に対応するべく、100gあたり798円の「岩手産 黒毛和牛ばらカルビ焼用・4等級(1276円)」や100gあたり598円の「岩手産 いわて和牛サーロインステーキ用・4等級(1184円)」なども訴求する。
サミットストア世田谷船橋店の目標年商は29.2億円。「GO GREEN 2022」の集大成の店であることに加え、「ドミナントエリア」で旗艦店としての役割を発揮できるか、注目が集まる。