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インバウンド消滅を乗り切る!ラオックス起死回生の戦略と新業態「亜州太陽市場」とは

主力ビジネスとしてきた総合免税店事業が、インバウンド需要消滅により厳しい状況に置かれている老舗量販店ラオックス(東京都/飯田健作社長)。厳しい環境下で同社は、「グローバル・ライフ・スタイル」を合言葉に、新業態開発を推進、起死回生を図っている。本稿では、2021年11月にオープンしたアジア食品専門店「亜州太陽市場」のレポートを、同社の新業態開発戦略をまとめた。

本場の品揃えを実現した亜州太陽市場

 2021年11月25日、「亜州太陽市場」の1号店が東京・吉祥寺に誕生した。1号店出店に吉祥寺を選んだのは、流行感度の高い地域であることに加え、同店がファミリー層を中心とした日常使いに照準を当てているからだ。

 正念場を乗り越える切り札として期待を背負う亜州太陽市場のコンセプトは「Sunshine Market」。約134㎡の店舗スペースには、日本では同店以外ではほとんど取扱いのない珍しい商品を含め、中国・韓国・台湾やベトナム・タイなど12の国と地域の食品・食材約1400アイテムがずらりと並ぶ。アジアエスニック食品のパッケージが持つ独特の色彩がより映えるよう、店内は白を基調としあえて照度を上げているという。

店内の様子。シンプルなようで、アジア食材のパッケージ特有のカラフルさで賑やかさが際立つ

 亜州太陽市場は気軽さと、品揃えの圧倒的豊富さを両立した点に魅力がある。アジアエスニック商品は、最近は食品スーパーなどでも手に入れやすくなった。ただし、ラインナップは売れ筋に絞られていて品揃えは少ない。品揃えの豊富さと立ち寄りやすさを両立し、本場の食文化をより身近に再現できるのが亜州太陽市場の強みだ。

 商品を一部紹介すると、真空パックの牛肉が入った台湾を代表するインスタント麺「満漢大餐」(648円/以下すべて税込価格)、容器に具材からカトラリー、発熱剤まで入っており、火を使わない火鍋キット「海底撈 自煮火鍋套餐」(1283円)など他ではあまり見かけないものの、ファンの間では注目度の高いアイテムが並ぶ。

 とくに今回目を引くのが、中国延辺朝鮮族自治州の家庭料理だ。中国吉林省には昔から朝鮮族がコミュニティを形成しており、中国・韓国を融合した独自の食文化を作り上げている。日本ではまだ珍しいジャンルの料理だが、東京・新大久保の専門店「金達莱(キンタツライ)」の総菜を日替わりで毎日約15種類程度販売するなど、他では手に入りにくいものを積極的に発信・取り入れていく姿勢が垣間見える。

「金達莱(キンタツライ)」の総菜

家電量販から総合免税ショップ…そして新たな挑戦へ

 ラオックスの源流は1930年、創業者・谷口正治氏が電気行商「谷口商店」を立ち上げたことによる。量販店としての歩みを始めたのは60年代のことで、千葉を皮切りに多店舗展開を推し進めてきた。76年に現在の「ラオックス」を設立、最初はオーディオ製品、80年代にはパソコン商品と、時流を捉えた成長を続けてきた。ところが2000年代に入り家電量販店の競争が激化したことや拡大路線での出店計画がたたり、ラオックスは窮地に陥った。そんな同社を救済したのが、中国資本だ。09年5月、ラオックスは中国の家電量販店最大手だった「蘇寧易購」の傘下となる。

 傘下に入ったラオックスは、大型免税店として変貌をとげる。訪日観光客による爆買いの流行によってラオックスは再び上昇気流に乗ったのだ。店舗の前には連日大型バスが停まり、中国語を話せる販売スタッフがフロアを飛び回る…そんな日々が続いた。しかし、やがて爆買いブームも下火になり、さらにはコロナ禍が追い打ちをかけた結果、ラオックスの経営は急速に悪化する。20年夏からは、店舗の閉鎖や人員削減などの構造改革を進めてきた。

 そしてコロナ禍の出口がようやく見えつつある今、ラオックスは新たな挑戦を始めた。消費の多様化・ボーダーレス化が進むマーケットに立ち向かうため、国を越え、世界中の商品やサービスを届けることで顧客の生活を彩る「グローバル・ライフ・スタイルのトップランナー」をめざして、新業態にチャレンジする。

ラオックス 飯田健作社長

 亜州太陽市場に続き12月には、コスメ専門店「ラオックス・ビューティー・エアポート」を自由が丘にオープンさせた。取り扱うのは、今話題を呼んでいる韓国・中国などアジアコスメだ。亜州太陽市場も、吉祥寺を皮切りに2号店・3号店と出店を予定している。

 インバウンドに対する見通しもポジティブだ。「日本には一桁しかない人口100万人以上の都市が中国には80前後あり、さらにまだ日本観光を体験したことのない中国人が内陸部を中心に大勢いる」と、飯田健作社長はアフターコロナでの爆買い復活に期待を寄せる。