消費低迷下でも売上・利益アップを実現する戦略的マーチャンダイジングとは
経済環境が厳しさを増す中で、今流通・小売の現場では経営改革の必要性が高まっている。それは在庫計画の適正化であったり、商品の配分・調整、品揃えやコスト管理であったりと多岐にわたっている。そうしたニーズに対応してSASは流通・小売の経営改革を支援するソリューションを提供している。
SASはもともと統計・解析ツールを開発し提供してきた。その経験から、情報の分析・活用による高付加価値化推進の仕組みとして、流通・小売向けにも複雑な経営課題を解決するソリューションを提供しているわけだ。従来の経験と勘に基づく判断のみに頼らないよう、POSデータなどの実績情報から、需要予測、商品分析など分析力を活用し、必要な情報をタイムリーに提供。それに基づくアクションにより売上・利益の向上という効果を生み出す。また、従来のBIツールが実績情報の集計を基に、定型/非定型レポート、検索ドリルダウン、アラートまでをカバーするのに対して、SASのソリューションは高度な分析から導き出される予測、予測型モデリング、最適化、さらに「見える化」の先を行く「予見力」を提供することで付加価値の創出を可能にしている。
SAS(R) Business Analytics Frameworkは流通・小売業をはじめ、各業種の経営課題解決や意思決定を支援するフレームワークであり、顧客のニーズに対応してさまざまな仕組みを提供できる。
一般的な小売業でのMD、バイヤーを中心とした業務部の業務フローは前期の実績を基にした販売計画・需要計画を立てて発注、それを店舗に展開し、店舗では売れる売場を実現するために価格決定やキャンペーンの実施、レイアウトやゾーニングの展開を行う。さらに売れ筋や死筋管理、コスト管理など店舗運営に必要な情報を蓄積し、予算と実績の対比などの情報を在庫調整に吸い上げるという仕組みになっている。SASはそれら各業務の意思決定を支援するソリューションを揃えている。
英国の高級食材中心のスーパーWaitroseは、多品種・小ロットの商品を扱っており2万5000アイテムを180店舗で展開している。しかし450万SKUを揃えていても欠品も多いという課題があった。そこで既存のメーンフレームで構成する基幹システムはそのままに、導入しやすいシンプルな構成で分析を行うSASサーバを導入した。SASのテクノロジーを分析に活用し、大量のデータから傾注すべきパターンを抽出して分析の方向性を決定し将来パターンを予測、イベントや天気など需要変動にタイムリーに追随した業務判断を誘導する仕組みを構築した。これにより需要予測精度は10%以上のSKUで向上し、廃棄ロス削減、在庫金額の削減などを実現している。
また、アパレル・雑貨でマークダウン(値下げ)に活用した事例では、カナダのHudson’s Bay Companyで行ったシミュレーションが挙げられる。四半期ごとに3回に分けて収集した実績値を基に行ったところ、在庫処分率約10%向上、マークダウンによる1商品当たりの単価は約1%アップという結果になった。単価の1%アップというのは効果として小さいように見えるが、価格で1%のインパクトは結果的に利益の改善への効果として非常に大きなウェートを占める。このマークダウン最適化は事前に設定可能なマークダウン用予算の範囲内で行うために、マークダウンが必要な店舗と不要な店舗を抽出して週次でプラン最適化を行い、在庫削減と売上・利益の向上のバランスをとることが可能だ。
最後に、参考事例として、国内小売業における在庫調整のシミュレーションでは、店舗数が多いために安心在庫を抱えているケースでも、SASの在庫最適化ツールを使うことで在庫を13%削減し、約6億円のコスト圧縮が可能になるという結果も出ている。SASのソリューションは、業務フローの中でデータを分析し見直すことで、結果的に業務を変革することを支援するツールなのである。