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顧客を創造する~新たなマーケティングのあり方~

カタリナ マーケティング ジャパン株式会社 代表取締役社長 若林 学氏

 小売業にとって消費者の動向を把握し、売上アップにつなげていくことは永遠の課題である。そのための今日的なマーケティングアプローチには、どのようなことが必要になってくるのか。まず考えるべきは、買いたい人を絞り込んで、どのように見込み購買を増やしていくかの方法を検討すること。さらに、これまでマーケティング理論の中で言われてきたパレートの法則や80:20の法則はそもそも正しいのかを検証すること。そして社会も個人も変化する中で、消費市場がどのように変化し進化しどんな可能性を秘めているのかを予測すること。この3点が重要な要素となる。


 こうした要素に対してカタリナマーケティングが提供するターゲッティングは、一言で言ってしまえば原点に戻るということである。ターゲッティングの場合、年齢や性別など人口動態に基づくデモグラフィックスがあり、もうひとつが嗜好性などライフスタイルに基づくサイコグラフィックスがあるが、我々はそうではなくて商品を買ったのか買わなかったのかのデータに基づいたバイオグラフィックス、つまりバイ=購買に基づいたターゲッティングを重視している。その事実に基づいて買いそうな人を探索し、買った人にはもっと買ってもらうという施策を展開している。


 そのひとつがターゲットメディアを使った施策である。これはPOSレジの横にプリンターを置いて、今回何を買ったのか、これまで何を買ってきたかの履歴から分析して、その買物客をターゲットかどうか判断しターゲットとする場合はクーポン券などを発行する仕組みだ。無作為にクーポンを発行するのではなく、ターゲットを明確にしているので迷惑がられることもないし、効果も高い。これは現在26チェーンの約3000店舗で展開しており月間2億6000万人の消費者がカタリナのレジを通過している。消費者にとってはテレビと同様に、すでにおなじみのメディアになっていると思う。TVがスポンサーとして時間を買って広く浅く展開しているのに対して、カタリナはターゲットをより狭く深く展開している。今はインターネットをはじめとして情報洪水の時代。カタリナは広く情報提供するのではなく、いかにして不必要な人に提供しないかということを考え続けてきた。


 すでにGMS、SMの約50%をカバーしており、これを75%に高めるのが当面の目標である。そして来年からはカラープリンターで提供し、商品の情報を多く伝えられるように変えていく考えである。また、この施策では膨大な情報が集まる。そのためカタリナのサーバーは2.5ペタバイトという膨大なデータマイニング容量を備えている。


 これらのデータから分析した事例に基づく消費者の心理が、上位20%の顧客が売上の80%を占めるというようなパレートの法則による80:20の法則や、ブランドスイッチを起こさない、逆に起こすための戦略につながってくる。米チーフマーケティングオフィサー協会とカタリナの共同調査のケースでは、店頭で購入した人の平均2.5%が売上の80%を構成しているという結果が出ている。ビールのバドワイザーの場合は1.2%、シュガーレスガムのトップブランドのある商品では5.3%という結果だ。つまり1000人中5人がターゲットであり、マーケティング予算もそこに集中することでより効果的になる。しかし、その一方でブランドスイッチが起きる。このシュガーレスガムの場合、10個買う場合の70%がこの商品であっても、翌年にも買い続けている人は3割にも満たないという調査結果が出ている。


 こうした状況の中で今後、マーケティングはどのように変化していくのだろうか。ひとつはクロスメディアである。インターネットやケータイなどオンラインとオフラインをどのように統合していくかが大きな課題だ。ニールセンとカタリナはジョイントベンチャーを作り、この番組は見るけどスポンサーの商品を本当に買っているのか、または買っていないのかというデータサービスを近く開始する。またリアルとバーチャルの競争とともに連携をどのように図っていくかというのも課題になる。ピーター・ドラッカーは著書の中で、「将来を予測する最善の方法は、その将来を作り上げていくことだ」と述べている。まさに未来の流通戦略として重要なポイントがそこにあると考えている。