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IoT・AI時代のデジタルイノベーション
データから洞察と価値を生み出す小売業のアナリティクス経営
ビッグデータ活用を企業競争力向上につなげるために

 オーバーストアと呼ばれる時代に合って、チェーン店全体の経営戦略と個店ごとの経営戦略が継続的な事業運営のために重要性を増している。その戦略立案のベースになるのがビッグデータを活用した分析とそのチューニングだ。ビッグデータを活用することで、精度の高い需要予測や、それも基づいた在庫最適化を図ることは生産性向上には不可欠。仕組みが変われば、働き方も変化する。それとともに人手不足の中で、人材の有効活用にもつながってくるだろう。

 ダイヤモンド・リテイルメディアとSAS Institute Japanは、2016年12月14日に都内で「ダイヤモンド・リテイルメディア・カンファレンス2016」を開催。最新のデジタル活用事例などを紹介した。

  

【講演】

デジタルイノベーションにおけるAI活用へのチャレンジ

アスクル株式会社
BtoB事業企画本部 EC&データマーケティング 統括部長
金子 隆洋 氏

 


【講演】

需要予測をベースとした戦略的マーチャンダイジングの実現
~ Demand-Driven Merchandising ~

SAS Institute Japan株式会社
ソリューションコンサルティング本部 マネージャー
近藤 誠司 氏

 


【講演】

マーケットイン時代のセルフサービス・リソースをフロントに集中せよ!

株式会社FOUR-SEEDS
代表取締役社長
岡村 洋次 氏

 


【講演】

ローソンの「デジタルシフト」と「次世代業務改革」
~次世代コンビニエンスモデルの実現を目指して~

株式会社ローソン
次世代CVS推進本部 本部長補佐 兼 次世代CVS統括部 部長
秦野 芳宏 氏

 


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AI技術を融合した需要予測・在庫最適化のための統合ソリューション
「SAS® for Demand-Driven Planning and Optimization」


 

デジタルイノベーションにおけるAI活用へのチャレンジ

アスクル株式会社 金子 隆洋氏

AI活用のレコメンドで月1400万円の購入増に

 

ビッグデータ分析で“定説の発見”も


アスクル株式会社 BtoB事業企画本部 EC&データマーケティング 統括部長 金子 隆洋氏

 アスクルは、法人向けカタログ通販メインの時はアイテム数がカタログに掲載できる数に限られていた。しかしECが8割を占めるまでになり、加えて一般消費者向けサイトへの展開でアイテム数が急増。これに対して金子氏は「もはや属人的なプロモーションや需要予測が難しい状況。そこでAIを活用しECの強化と業務効率化に取り組んでいる」と話す。

 

 AIにはアンサンブル学習を取り入れた。顧客のオンライン行動と商品情報をもとに125種類以上のストラテジー=レコメンデーション・タイプから最もパフォーマンスの高いロジックを自動採用する。この効果を検証したところ「上位顧客層では件数も売上金額も上昇を示した。一連のAI活用施策により月間で売上1400万円増の効果につながった」と金子氏は語る。

 

 さらに「AIを活用し累計2兆円のビッグデータ分析により購買パターンにおける“定説の発見”ができる」ことを示唆。顧客の環境変化による購買動向の推定などにも応用できると今後のAI活用について明らかにした。

 

需要予測をベースとした戦略的マーチャンダイジングの実現
~ Demand-Driven Merchandising ~

SAS Institute Japan株式会社 近藤 誠司氏

すべての基本は高精度な需要予測から
世界大手でDDPOの導入が拡大

 

 発注や適正在庫など、これまで当たり前に属人的な「経験とカン」に頼ってきた。しかし市場競争の激化や人手不足、取扱商品点数の増加など従来通りの方法ではすでに限界に達していると考える流通企業は多い。適正なタイミングでの発注やチャンスロスを起こさず過剰在庫にもならない適正な在庫をシステムでカバーするために重要になるのが、高精度な需要予測である。SASのソリューション「Demand- Driven Planning and Optimization(DDPO)」は世界の大手企業がこぞって導入している。

既存商品に加え新商品の需要予測に対する相談が増加

SAS Institute Japan株式会社 ソリューションコンサルティング本部 マネージャー 近藤 誠司氏


 日本が目指すべき社会として16年1月に「超スマート社会(Society5.0)」が第5期科学技術基本計画として提起された。この超スマート社会とは、「必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会」とされ、人々に豊かさをもたらすことが期待されている。

 

 このための超スマート社会を構成するサービスプラットフォームにはエネルギーバリューチェーンや高度道路交通システム、新たなモノづくりシステムなど数多くの要素があるが、それらバラバラに存在する要素を有機的につなげていくことが重要になる。

 

 最近、製造業や流通小売りのお客様から需要予測に関する精度についての課題やこれから発売する新商品の需要予測に関する相談が数多く寄せられている。「必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し…」というのは、まさにスマート社会を実現しようとする時代の要請といえる。

商品数の増大や市場競争激化にAIで対応

 1店舗1万アイテムの商品を扱っていて100店舗あれば予測対象の商品数は全体で100万アイテムとなる。本来は店舗毎X商品毎に100万個の需要予測モデルを適用するべきであるが、人手での対応では限界があることから妥協して1つのモデルで複数の店舗/商品の予測を作成している現場もある。また本部や店舗などそれぞれの部門担当者が異なる予測値をそれぞれ作成しており組織としての予測値が複数存在するケースもある。そうした問題に対して曜日、天候やイベント等の外的要因を考慮した商品毎×商品毎の粒度の細かい高精度の需要予測モデル、本部担当/エリア担当/店舗担当など各階層間の補正も含めたワンナンバーの需要予測、新製品需要予測を含んだ精度の高い予測をクイックに展開できるシステムが必要となる。

需要予測から在庫最適化までカバーするDDPO

 SASはこうしたニーズに対して「Demand -Driven Planning and Optimization(DDPO)」というソリューションを提供している。これは需給計画業務に必要なすべての機能すなわち「既存商品/新商品の需要予測」、「関係部署でコンセンサスをとりながらの需要予測に対するビジネス面での意思入れ」、「在庫最適化のための補充計画作成」を単一プラットフォーム上で提供する統合基盤である。

 

 需要予測だけが注目されることがあるが需要予測はそれだけでは業務改善には繋がらないため需要予測の結果をいかに業務に反映するか、需要予測結果を元にどのように在庫最適化を実現するかが重要となる。DDPOは需要予測結果に加えて、目標とするサービス率、調達リードタイム等の発注に関するさまざまな制約条件を踏まえたうえで、発注点(在庫がいくつ以下になったら発注するか)、補充点(在庫がいくつになるように発注するか)、安全在庫数などの発注基準を拠点(配送センターや店舗)X商品毎に最適化し、日別の発注数量の推奨値を作成する。

店舗X商品毎への多様な予測手法の適用

通常のBIツールや、DBMSとの組み合わせで実現できる移動平均法などの単純な計算方式に比べ、SASは多様な予測手法を使用することで様々な需要に対して高精度の予測をすることが可能です。また予測モデル構築においては、特別な統計知識を必要とせず自動でモデル構築・評価を行い、最適な予測手法を自動選択して予測値を算出します。

新製品予測モデルの作成プロセス

マーケットイン時代のセルフ・サービスリソースをフロントに集中せよ!

FOUR-SEEDS 代表取締役社長 岡村 洋次氏

自動発注の効果は発注の手間の削減ではない
在庫を削減したことで人手をフロントに回せる

 

 オーバーストアの状況に加えECとの競合など流通小売にとって、新たなアイデアとITをフルに活用した店舗改革の重要さが増している。流通の競争の現場は売場だ。売場を活性化するために、バックルームでの仕事をいかに減らしフロントに人手をかけられるかがカギとなる。店舗作業時間の8割はバックルーム作業に割かれ、店頭での仕事は2割程度しかないといわれる。人手不足や人件費上昇の中でむやみに店舗人員を増やすことはできない。そこでITを活用してバックルーム作業を減らすことが第一歩となる。

大量生産から大量消費まで10年間のギャップ


株式会社FOUR-SEEDS 代表取締役社長 
岡村 洋次 氏

 1960年以降の大量生産つまりマスプロダクション時代と70年以降の大量消費の時代には10年のズレがある。60年代の大量生産時代はお金がなくてモノが買えなかったということではなく、中間流通というボトルネックがあったからモノが売れずに、むしろ海外に商品が流れていた。GMSやSMが台頭し、「流通革命」と称してこのボトルネックの解消に乗り出し、購買利便性を高めたことで「大量販売」が可能となった。

 

 大量生産の時代が“プロダクトアウトの時代”ならば、大量販売が可能になり大量消費が始まった時代は“マーケットインの時代”が始まったということができるだろう。何でも買える時代になり、顕在化した需要が満たされれば、より良くなりたいという心理=ウオンツが肥大化する。同じ商品をリピートで飼うのではなく、より良い商品が欲しくなる。より専門性を求めるようになるわけだ。生活者が何に満足し何に不満を持っているか、小売がそれを解析し仮説立案することで、生活者に寄り添うようになった。つまり「流通革命」とは、単にボトルネックに穴を開けただけということもできる。

マーケットインの時代のセルフサービスは高コスト

 プロダクトアウトの時代、需要が顕在化していた時のセルフサービス売場は、ローコストオペレーションのためにサービスを“セーブ”することと考えられていた。例えばネクタイ1本しか持たない人が、季節に合った新しいネクタイを買おうとすると、そのひとは季節商品の売り場ではなくネクタイ売り場に向かうことが当たり前とされていた。つまり製品別の分類で、カテゴリーから単品に行きつく経路を作ることが時代に合っていたということだ。この方法では売り場が固定化され人手をかけなくても済んだ。販売管理費を低減できたわけだ。

 

 マーケットインの時代、需要が潜在化している時のセルフサービス売場は真逆となる。売場には人的資源が必要とされ、人件費がかかり販売管理費は上昇する。モノがあふれ何が欲しいかが漠然としている時は、「きっかけ」を作ることが大事になる。例えば産地も変わり、売価も安くなった白菜があれば、それを切って中身を見せて並べて置く。その白菜がトリガーになって夕食は鍋料理にしようと決め、必要な材料を買いまわる、という状況が出現する。色で気づいたり、季節感で気づいたり、低価格で気づくということもあるだろう。そうした仕掛けが買物を活気づかせることが重要だ。導線を作り、アイキャッチャーを作り、分類を変えたり接客対応を高めたりといった施策を講じることは、すなわち売場に人手をかけなければできない。かつてのセルフサービスがコスト削減ならば、オーバーストア状態の今、必要なセルフサービスは売上をどのように拡大するかということになる。

“新たな敵は顧客”という発想

 プロモーションも変化する。プロダクトアウトの時代はどこに買い物に行くかは、チラシに掲載されたNB商品の値下げなどが動機付けに有効だった。値入率を下げても、他に買物に行かなければ販売数量が増えて粗利を稼げるという図式だ。敵は競合店であり、そこに勝つためには価格競争が有効だった。


買い上げ点数をあげる

買い上げ1点単価を上げる

 しかしマーケットインの時代には価格訴求力はかつてほど威力を持たない。しかも競合店が増え、ECサイトとの競合など完全なオーバーストア時代に価格だけで勝負するのは、自分の首を絞めるようなものだ。だからこそ来店客の購買数を伸ばし、客単価を引き上げることが必要になる。もはや敵は競合店ではなく“新たな敵は顧客”ということだ。顧客とせめぎあうプロモーションの目的は店舗での滞留時間を長くし買い上げ点数を上げることと買い上げ単価を上げること。

 

 専業主婦の1回の買い物時間は15分といわれ、そのうち大部分は生鮮食品売場に費やされる。その15分を伸ばすために“マグネット”を用意しその効果で買い回る機会を作る。買い上げ単価の向上にはカテゴリーをどのように作るかが重要になる。売価がメインのコモディティアイテム、それよりもベターなベターアイテム、ベターアイテムに目を向かせるためにさらにグレードの高いプレミアムアイテムがある。それぞれのカテゴリーで、信頼性を確保するための品揃えに加えて、季節性やトレンド、バラエティなど需要との親和性の高い品揃えを作る必要があるだろう。

バックルームのスチール棚も撤去

 フロントにリソースを集中するために必要なことは、バックルームの作業を減らすことだ。すべき仕事はフロントにあり、バックルームにはほとんどない。自動発注もその手段の一つだ。

 

 自動発注を導入する前は、付帯作業が散布されてしかも長時間化していた。また効率が悪いため発注時間が来ているのに補充にかかっているという現象も起きていた。自動発注導入後は開店前に品出しが完了している、ミーティング時間も作れるようになった。ただこれは発注の手間が減ったからではなく、余計な在庫がなくなったから実現したこと。属人的な発注はどうしても過剰に発注してしまう。結果的に商品を戻したり保管したりといったバックルームでの作業が増える。人は多能工である。発注だけが仕事ではない、発注は専門で行うコンピューターに任せて、その分フロントに出て現場作業にあたるほうが余程効率的で売上アップにつながる。

 

 かつてイトーヨーカドーに在籍していた頃、自動発注を導入した。この時はセルワン・バイワン方式ではなく発注提案方式を採用したが、自動発注システムの方が正しいことがわかり徐々にシステムが行う発注に任せるようになった。まず9月に21店舗でテスト導入したが、3か月後には未導入の店舗よりも売上を伸ばすようになった。

 

 在庫についても基準在庫方式を採用し、バックルームには在庫を置かないようにスチール棚も撤去した。かつては品切れを起こさないために“安心在庫”と称して過剰に発注していたが、今は“最低陳列量”を基準として発注しているので、余計な商品はなくなりバックルームに商品があふれているということもない。

 

 社会環境の変化やオーバーストアの市場環境の中で、ITの活用は非常に重要な位置を占めている。IT導入はコストという考えは根強いが、ITがなければフロントにリソースを集中し売上拡大を図るという施策も講じられないのが実情だ。

 

ローソンの「デジタルシフト」と「次世代業務改革」
~次世代コンビニエンスモデルの実現を目指して~

株式会社ローソン 秦野 芳宏氏

“デジタルとアナログの融合”で働き方が変わる
製造から店舗運営まで技術革新と事業改革を連動

デジタル化で働く人のモチベーションアップ図る


株式会社ローソン 次世代CVS推進本部 本部長補佐 兼 次世代CVS統括部 部長 秦野 芳宏氏

 ローソンの秦野氏は、デジタル化の進展について「ビッグデータ利用、AI・自動化による“第4次産業革命”という段階にきて、“働き方”が変わる段階に来ている」と見ている。

 

 同社では15年に半自動発注システムを導入したが「店舗スタッフから、発注のことを考えずに済む休みは初めてという答えが返ってきた」と、秦野氏は語る。デジタル化は生産性向上だけでなく働く人のモチベーション向上にもつながってくる。

 

 「働き方改革」のポイントとして、「仕事の進め方はアナログ的に人が変えていくことが大切」と秦野氏は話す。それでも「最新のITを導入することは、オペレーションを見直し良い売場作りや働き甲斐のある職場作りにつながる」とベースのITは重要だ。「ローソンの考える“次世代業務改革”では、製造から物流、店舗経営までITを積極的に導入することで事業構造も収益構造も変わってくる」。そうした仕組みの変化が「働き方改革」にも好影響を及ぼすことを強調していた。

 

 


 

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