イズミは2025年秋冬商戦において「PB」「地域貢献」「これ旨」の3つの軸で商品展開を強化する。
ディスカウントストアとの価格競争激化など厳しい外部環境が続くなか、2025年上期において、既存店売上が前年比105.5%と回復基調を示している。下期に向けては価格戦略を重視したPB商品強化、地産地消による地域貢献、さまざまな販促企画を軸とした戦略で巻き返しを図る方針だ。
24年後半から回復基調
── 食品本部デイリーフーズ部が扱う商品カテゴリーについて教えてください。
登田 ● 当部は日配商品、冷凍食品、アイスクリームを担当しています。なお、ドライグロサリーについては別部門が担当しています。
── 2025年2月期上期の販売動向の振り返りについて教えてください。
登田 ● 2024年2月に発生したランサムウエアの被害によって、約2カ月間にわたって商品供給が影響を受けましたが、日配部門は24年後半で徐々に回復しました。25年2月期通期の既存店舗の売上は、対前期比1.6%減の着地でした。なお、26年2月期の第1四半期(3~6月)は対前年同期比5.5%増と回復基調です。
一方で、値上げの影響によって1品当たりの単価が上昇しており、顧客の購入点数が前年割れとなる厳しいトレンドが続いています。
── 気候変動や社会情勢などの環境変化の影響について教えてください。
デイリーフーズ部 部長
登田 憲治氏
登田 ● 苦戦したのが残暑対応です。暑さが長引いたことにより、9~10月の秋物商材への移行が、従来のようには進みませんでした。気候変動による季節の変わり目の変化が常態化するなか、棚割りの変更タイミングについても見直しが必要だと考えています。
── 競合環境についてはいかがでしょうか。
登田 ● 当社が事業展開を行っている中国・四国・九州地方では、競合店の出店が加速しています。そのなかでもディスカウントストア(DS)との価格競争が一段と激化しています。喫緊の対抗策として価格戦略が不可欠といえます。
地域貢献を掲げた商品展開
── 今後の商品政策の方針について具体的に教えてください。
登田 ● 「PB」「地域貢献」「これ旨」の3つを軸に展開していきます。1つめのPB商品について、25年9月から日配とドライグロサリーのカテゴリーで新たに投入を予定しています。目的は先述の対DS以外に、気候変動や燃料・原料価格の上昇、商品単価の値上げなどへの対処もあります。とくに日配の優先順位を上げ、コストパフォーマンスに優れた価格設計でお客さまが手に取りやすい商品を展開する予定です。
2つめの軸である「地域貢献」は、当社のパーパスでもあります。地域の食材を扱い、地域の仕入先との協業による地産地消を訴求していきます。実現した商品開発として、九州の製パン企業と協業して福岡県の八女抹茶を活用した「抹茶フィナンシェ」「焼きドーナツ」の2品があります。
3つめの軸は「これ旨」です。25年5〜7月にかけて初めて実施した企画では、タレントの彦摩呂さんを「これ旨実行委員長」に起用し、お客さまからおすすめしたい商品を投票していただきました。
── 取り組んでいる販売施策についてはいかがでしょうか。
登田 ● アプリ販促の強化に取り組んでいます。若年層のお客さまはアプリに対する抵抗感が少ないため、仕入先の協賛を得ながらアプリクーポンによる販促強化を行っています。さらに毎月、「日本一企画」を実施しています。これはNB商品を単品で月間当たり日本一販売することをめざした販売コンペです。アプリ販促も絡めながら、店舗間で競い合い、単品を月間固定でしっかり売り込むことが目的です。
売りたい商品をお客さまへ明確に訴求できる点がメリットであり、仕入先にとっても販売ボリュームを期待できるWin-Winの販促企画となっています。商品の選択については実施時期に最も指数が上がる商品を選択しています。
── 新たな切り口の販売施策について教えてください。
登田 ● 従来の「北海道フェア」や「韓国フェア」などの産地フェアに加え、特定の味や食材をテーマにした新しい切り口のフェア企画を下期から本格展開する予定です。上期に好評だった「あんこフェア」や「レモンフェア」の実績を踏まえ、下期には「芋栗フェア」などを計画しています。
こうした企画では、テーマに沿った商品を集めて展開することでお客さまに楽しさを提供し、売上向上につながる施策として位置づけています。
── 注目している新たな領域があれば教えてください。
登田 ● わが国の人口減少が加速し市場が縮小するなかで、今後喫食率の向上が期待できる領域は朝食ではないでしょうか。厚生労働省の調査資料「朝食の欠食率」によると、朝食の欠食率は男女とも20代で最も高く、男性で34.3%、女性で22.0%といわれています。今後の商品政策と販売促進の新たな切り口として、押し上げ効果が期待できると考えています。
秋冬注目の4つのNB商品
── 秋冬で注目しているNB新商品について教えてください。
登田 ● カテゴリーとしては、アサイー関連商品が好調です。スムージーや冷凍食品、カップ飲料など、まだまだ成長余地があると感じています。販促に対するお客さまの反応もよく、各社も集合展開などによって販売機会の拡大に取り組んでいます。各社からスムージーの新商品が予定されており、注目商品としてはたとえば25年9月に発売予定のカゴメ「野菜生活100 Smoothie アサイー&バナナ」があります。野菜の訴求に長けたカゴメが手がける、必要な栄養素やエネルギーを手軽に摂れる商品特性が特徴です。
ほかにも、 機能性ヨーグルト、乳酸菌の市場に新たな商品が投入され活性化していると感じています。各社さまざまな商品に注力していますが、注目商品は25年8月発売のダノンジャパン「ダノンビオ®脂肪燃焼ヨーグルトドリンク」です。100倍胃酸に強いビフィズス菌BE80菌に、機能性関与成分である希少糖アルロースを配合し、「脂肪の燃焼40%UP」を訴求しています。
── 冷凍食品カテゴリーの注目商品はいかがでしょうか。
登田 ● 有名店の味を自宅で手軽に楽しめるプレミアムな冷凍商品に注目しています。各社の競争が進むなか、とくに品質の本格化が期待できるのが、キンレイが25年8月に発売する「お水がいらないプレミアム 飯田商店醤油らぁ麺」です。神奈川県湯河原町の人気ラーメン店「らぁ麺飯田商店」が監修した商品として、一体化した冷凍スープと麺、具材を鍋に入れるだけで調理でき、調理用の水も不要で手軽に楽しめるのが特徴です。
チルドではパウチ商材が進化し、新たな価値訴求の段階を迎えたのではないでしょうか。共働き家庭が一般化し、「手早く簡単」のニーズが高まり「簡便化」がキーワード化しています。一方で、本格的な味わいを訴求する商品展開が増えています。これまでポテトサラダやごぼうサラダなど副菜は各社コーナー取りで浸透してきましたが、注目されているのが主菜となる商品です。
25年9月にリニューアルされるヤマザキの「北海道男爵のクリームシチュー」と「濃厚仕立てのかぼちゃシチュー」は、調理に手間と時間がかかるシチューを、電子レンジや湯煎で簡単に味わえる商品として注目しています。