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米の高騰で「ご飯」が減少、ヨーグルトなど「洋風」へシフト

2024年夏頃から米の価格が高騰し、一時は店頭から米が消えるなど食卓に大きな影響を与えた。備蓄米の大量放出により現在は落ち着きをみせているが、依然として生活者動向に注目する必要がありそうだ。

そこで今回は、食MAP®データを活用し、米の価格高騰による朝食市場への影響を探る。

食MAP®とは、株式会社ライフスケープマーケティングが提供するマーケティング情報システム。1998年10月から首都圏30km圏内在住の主婦世帯を対象に、食品の購買、調理、消費までをパネル形式で調査したもの。

ご飯メニューの減少に伴い、献立自体も和風から洋風へのシフトが起きていることが推測できる(demaerre/i-stock)

朝食の「ご飯メニュー」米の高騰に伴い減少

 総務省統計局の小売物価統計調査によると、米5 ㎏の小売価格(1 都3県平均)は2024年8月以降に大きく値上がりし、2025 年4月以降は前年と比べ約2 倍の価格で推移し2025 年6 月時点では高止まり傾向となる。

 一方で、食卓におけるご飯メニューの1000 人1 日あたりの出現回数を見ると、米の値上がりに伴い2024 年8 月以降は前年割れが継続しており、「米離れ」が顕著となっている【図表1】

 とくに、朝食におけるご飯メニューの減少率が大きく、2025 年4~7月期(2025年は7 月30 日まで※以下同様)の1000人1日あたりの出現回数は243 となり2024 年4 ~ 7 月期の265と比べ92%となる。また、減少ボリューム自体も他食シーンと比べ大きく、朝食のご飯メニューの減少率・減少ボリュームが、ご飯メニュー全体の減少を牽引していることが読み取れる【図表2】

 いざ、ご飯メニューを減らすとなった時、消費者の心理にはまだまだ「夕食=ご飯」という意識が根強く残っていることから、まずは朝食、昼食から他メニューへシフトを始めるのかもしれない。

朝食は「洋風」へシフト、ヨーグルト需要が増加

 2024年4月1日~2025年7月30日の通期在籍メンバを対象に、4~7月期の朝食におけるご飯メニュー1000人1日あたりの出現回数の前年同期比較から、①減少・②わずかに減少・③わずかに増加・④増加の4区分に分け構成比を見ると、①減少メンバの割合が40%と最も大きく、②わずかに減少メンバと合わせると52%と過半数となる。

 ご飯メニューの減少の背景には単純な出現回数の減少だけではなく、間口となるユーザー構成の影響もあることがわかる【図表3】

 ここからは、朝食におけるご飯メニュー減少メンバ(4~7月期前年同期比90%未満※以下同様)に注目して傾向を探る。ご飯メニュー減少メンバにおける、4~7月期の朝食メニューの1000人1日あたりの出現回数を見ると、最も増加が大きいメニューは「食パン・トースト」で前年差プラス81.7ポイントとなり、次いで「ヨーグルト」が前年差プラス23.2ポイントとなる。

 そのほかにも、「バナナ」が前年差プラス15.4ポイント、「シリアル」が前年差プラス13.4ポイントと増加しているほか、「牛乳」や「果汁飲料」、「乳飲料」などの各種飲料も増加しており、ご飯メニューのシフト先はパン類や麺類などの主食だけでなく、カテゴリを跨いだシフトが起きているようだ【図表4】

 実際に食MAPデータからカテゴリ別の出現を見てみると、ご飯メニューの出現が前年差マイナス142ポイントであるのに対して、パン類・麺類合計で前年差プラス110ポイントとなり、ご飯メニューの減少分をパン類・麺類だけでは補えておらず、果物や軽食スナック菓子・デザート、飲料などが前年と比べ増加していることもわかっている。

 一方で、ご飯メニューの減少に伴い、「味噌汁」や「納豆」、「卵焼き」、「日本茶」などの和風メニューの減少が目立ち、献立自体も和風から洋風へのシフトが起きていることが推測できる。また、主菜・副菜などのおかず類の出現の減少傾向も見られ、洋風化とあわせて品数を減らすなど手軽な朝食へとシフトしていることも考えられそうだ。

ヨーグルトは食べ方に変化、トッピングが増加

 ごはんメニュー減少メンバの献立が「洋風」へシフトする中、増加傾向のヨーグルトは食べ方にも変化が見られる。とくにトッピング需要が高まり、4~7月期はヨーグルトへの生の果物類の使用率が23.9%と前年差プラス4.5ポイント、シリアルの使用率が4.4%と前年差プラス1.6ポイントとなり、手軽な洋風食卓の中でも満足度を高めるための工夫が見られる【図表5】

 また、シリアルメニューにおいてもヨーグルトの使用率が増加し、4~7月期は6.9%となり前年差プラス1.3%という結果が食MAPデータからわかっており、「ヨーグルト」と「シリアル」における親和性の高さが窺える。

 とくに、9月は子供達の夏休みが終わり新学期開始時期となり、朝食需要が喚起されるタイミングとなるため、慌ただしい朝食シーンにおける手軽な栄養摂取という側面からも、ヨーグルトのトッピング訴求は効果的と言えそうだ。また、朝食は他食シーンと比べ、主食のシフトが起きやすいことからも、積極的な市場開拓がチャンスとなるかもしれない。

※食MAP®データにつきまして無断転載は禁止とさせていただきます。
株式会社ライフスケープマーケティング
TEL:03-3515-7088
https://www.lifescape-m.co.jp/

文=倉田悠(株式会社ライフスケープマーケティング カスタマーサクセス部)

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