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日本酒市場、食とのクロスMDを強化し日本酒とのタッチポイント増やす

コロナ禍での家飲み需要の拡大により微増傾向にあった日本酒のカテゴリーだが、コロナ禍が落ちついたことや物価上昇の影響もあり、今期は微減が続いている。今後市場を盛り上げていくには、新たなユーザーを獲得するための施策が重要となる。

純米吟醸酒や発泡性清酒は比較的好調に推移

 KSP-POSデータによると、2023年7月から24年6月の日本酒カテゴリーの期間通算金額PIは、対前年同期比2.5%減の9592.43円、数量PIは同4.4%減の15.09と、金額・数量ともに微減となった【図表】

 月別の金額PIの動向をみると、23年7月、11月、24年3月を除いた9カ月で前年割れとなっており、長引く物価上昇から嗜好品である日本酒の買い控えが起きていると推察される。

コロナ禍での家飲み需要の拡大により微増傾向にあった日本酒のカテゴリーだが、コロナ禍が落ちついたことや物価上昇の影響もあり、今期は微減が続いている。(写真はイメージ、kuppa_rock/iStock)

 新型コロナウイルスが5類に移行したことで、外飲みを含めた消費者のライフスタイルはコロナ以前に戻りつつあるものの、昨今の物価高の影響もありコストパフォーマンスを考えて、家飲みを選択する消費者も一定数いる。

 日本酒カテゴリーは吟醸酒や本醸造、純米酒、にごり酒など、さまざまなサブカテゴリーに分かれるが、近年は純米大吟醸や山田錦使用など付加価値型商品の動きがよく、金額PIベースで見ても純米吟醸酒は前期比103.5%と前年を上回っている。

 また、発泡性清酒やその他清酒、料理酒についても金額PIが前年を上回っており、こういった日本酒のサブカテゴリーをうまく訴求しトライアルを促すことが市場回復の糸口になりそうだ。

食とのマリアージュや、飲みたくなるシーン訴求を

 日本酒は気温が下がる秋口から売上が伸び、歳暮や年始の挨拶など、ギフト需要が高まる12月、1月にピークを迎えることから、各社は需要期に向け新商品の投入や既存品のリニューアルを実施している。

 大関では独自新酵母を採用しフルーティーさを向上させた「大関大吟醸」をはじめ、「上撰ワンカップコンパクト」や「大関甘酒」に新容器を採用し、幅広い客層に向けて訴求。菊正宗は「しぼりたてギンブルー」や「大吟醸ネオカップ」を新発売した。白鶴酒造は白ワインのような純米酒「Hakutsuru Blanc」に小容量の300ml瓶を加え、トライアル獲得をめざす。

 オエノングループの合同酒精では“ワイングラスで香りを楽しむ”がコンセプトの「シャトー大雪乃蔵大吟醸彗星40」「シャトー大雪乃蔵純米大吟醸きたしずく50」の拡販に力を入れる。

 日本盛は定番の「晩酌」シリーズを大規模リニューアル。辰馬本家酒造では発売15周年を迎えた「黒松白鹿純米パック」のパッケージをリニューアル、併せてキャンペーンを実施する。沢の鶴は低アルコールの純米酒「SHUSHU Light」やワンランク上のパック酒「特別純米酒山田錦」の販促を強化する。

 今後、日本酒の市場を広げていくには、若年層や女性など、今まで日本酒を手に取ってこなかった客層のトライアルが必要不可欠だ。コロナ禍以降広がった家飲みの習慣から、30~50代など比較的若い世代も日本酒に挑戦し始めており、自分事としてとらえられるような施策でトライアルにつなげることが、マーケットの拡大につながるだろう。

 定番売場で日本酒の特徴を紹介するだけでなく、食材とのマリアージュやシーン提案、総菜とのクロスMDなど、アウト展開も仕掛けることで日本酒とのタッチポイントを増やし、カテゴリーを盛り上げていきたい。