飲酒人口の減少や他のカテゴリーへの流出を背景にワイン市場は縮小傾向にある。チリワインも同様に厳しい状況だが、品質を求める層が増えたことで、単価が上昇しており、「安旨」から「高品質」へ徐々にイメージが変わりつつある。市場活性化のために新たな飲用機会とエントリーユーザーを獲得することが重要だ。
チリワインが依然高いシェアでトップをキープ
量販市場の輸入スティルワイン(非発泡性ワイン)の2023年7月~24年6月の製造国別販売金額シェア(図1)において、チリは39.9%で前年を0.7ポイント(pt)下回ったが、依然として高いシェアをキープしている。
2位のフランスは21.1%で同0.8pt減、3位のスペインは13.9%で同1.7pt増、イタリアは10.4%で同0.4pt増となった。欧州産ワインの中ではスペインとイタリアが微増で、フランスだけが微減となった。
1位のチリは、欧州産ワインに押され、微減が続いているが、40%近くのシェアをキープ。価格の安さだけでなく品種の多さも魅力のひとつで、ヨーロッパのブドウ品種だけでなく、チリ原産のブドウ品種も栽培されており、さまざまな味わいのワインが楽しめる。
安くて旨い「安旨」ワインとして定着しているチリワインだが、品質を求める層が増えたことで、単価は上昇傾向だ。1000円以上のチリワインフルボトルの販売金額シェア(図2)をみると、23年7月~24年6月のシェアが16.8%で、前年から2.8pt上昇した。20年7月~21年6月と比較すると4.4ptの上昇となる。
この価格帯をリードしているのが「カッシェロ・デル・ディアブロ」。高品質な味わいとインパクトのあるパッケージにより、毎年新規ユーザーを獲得し、ブランドを成長させている。
甘くて飲みやすいワインの投入で、エントリーユーザー獲得を図る
ワイン市場を活性化するためには、新たなワイン飲用層の獲得が重要だ。そこでメルシャンでは今年の春に、好調の「カッシェロ・デル・ディアブロ」ブランドから「デビルズ・カルナバル」を発売した。発売から約3カ月半で年間販売目標を突破するなど、好調な出足となっている。「カルナバル」を購入しているユーザーは、「レセルバ」シリーズよりも若い30~40代の若年層で、ワインのエントリーユーザー獲得に貢献している。
ワインを飲み慣れていないユーザーに向けて、シンプルでわかりやすいコミュニケーションを行ったことがトライアルを獲得し、渋みや酸を抑え、甘くて飲みやすい味わいによりリピート購入につながった。この秋は、世界的にもトレンドとなっている〈レッド・ブレンド〉をラインアップした。
また、世界的にアルコール度数が低めのワインが成長していることを受け、「カッシェロ・デル・ディアブロ」ブランドからアルコール度数が一般のワインよりも低めの8.5%ながら本格的なおいしさの「ビーライト」を発売した。新しいスタイルのワインの投入で、新規ユーザーの獲得とワインの飲用シーン拡大につなげていく。