ヴィーガンの増加やSDGsの観点から、市場が拡大しているプラントベースフード(PBF)。昨今の健康志向を背景に興味を持つ消費者も多く、定番の植物性ミルクや大豆製品に加え、レトルトカレーや総菜タイプなど、商品ラインアップも充実してきている。
PBFの認知率も上昇、植物性ミルクや大豆ミートが中心
近年、ベジタリアンやヴィーガンの増加、さらに環境への配慮から動物性原材料ではなく、植物由来の原材料を使用した食品を選ぶ消費者が増えている。
とくに大豆由来の商品は、将来的な食肉の供給不足から来るたんぱく質危機回避や、CO²排出量が一般的な食肉より少ないなど、サステナブルな食品としても注目され、動物性以外の食品でたんぱく質を補給したいという消費者に受け入れられている。
マイボイスコムが2023年8月に実施したプラントベースフードに関する調査によると、プラントベースフードの認知率は、「どのようなものか内容を知っている」「聞いたことがある程度」を合わせて29.1%となっており、21年に行った調査と比較し10%以上増加している。
直近1年間にプラントベースフードを飲食した人は全体の42.9%。飲食したプラントベースフードの詳細を見ると、「植物性ミルク」が最も多く、「大豆ミートでつくられた加工食品」、「大豆ミート、グルテンミートなどの代替肉」と続いている。
プラントベースフードの飲食意向者は、「飲食したい」「やや飲食したい」を合わせて3割強。プラントベースフードの魅力については、「健康に良い」が40.4%、「食物繊維を多く摂取できる」が22.4%、「脂質の吸収を抑えられる」「ヘルシーで、ある程度の満足感が得られる」「高たんぱく低カロリー」「良質な植物性タンパク質を摂取できる」が約15%から17%となっている【図表】。
流通企業内でも商品開発やコーナー化が進む
プラントベースフードのメーンユーザーは、健康意識や環境への関心の高い30代から60代の女性だが、植物性たんぱく質がしっかり摂れるという理由から、昨今は健康意識の高い男性ユーザーも増加傾向にある。
こういった市場の変化に伴い、植物性原材料を使った商品開発を行う流通企業も増えてきている。ファミリーマートでは「コンビニエンスウェア ブルーグリーン」プロジェクトから、大豆素材とアーモンドホイップをベースにしたモンブランや植物生まれのチーズを使用したおむすびなどを発売。ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)では、サステナブルプライベートブランド(PB)「GREEN GROWERS Meal」シリーズとして植物由来の代替肉「BEYOND MEAT®」を使用したレトルト食品の販売を昨冬より開始している。
また、商品開発を行うところまではいかないまでも、精肉売場で大豆ミートコーナーを設けたり、豆乳やアーモンドミルクなどの植物性ミルクを集積したり、プラントベースフードの加工食品を集めてコーナー化したりする店舗も増えている。
需要の拡大に伴い、年々商品数も増えているプラントベースフードだが、市場を拡大する上での最大の課題は「知っているけれど食べたことはない」認知未購入者へのトライアル訴求だろう。
店頭ではPOPやボードで商品の特長を紹介するほか、試食販売を通じて消費者に気づきを与え、トライアル購買につなげていきたいところだ。
プラントベースフードの売場事例
顧客の来店価値を高める売場づくり
消費者の健康志向を背景に、売場でも存在感を増しているプラントベースフード。さまざまなカテゴリーで商品が展開されておりコーナー化する動きも出てきている。
豆腐を中心とした大豆商品は、植物性たんぱく質を手軽に摂れる食品として近年再注目されている。マルエツ川口樹モールプラザ店では「畑のお肉大豆の力 日本古来のプラントベース」というボードを掲げ、新たな切り口で大豆商品の魅力を伝えている。
植物性ミルクはプラントベースフードの定番であり、コーナー化を進める企業が多い。イオンフードスタイル横浜西口店では豆乳やアーモンドミルク、オーツミルクなどを「Health&Wellness」のボードを付けて展開。東急ストア三鷹店では洋日配の冷蔵ケース内で植物性ミルクとともに植物由来の原材料を使用したチーズ類やサラダ商材を展開する。
大豆ミートも徐々に浸透してきた食材の1つだ。サミットストア新大塚千川通り店では精肉売場で幅広い大豆ミート商品を品揃え。原信燕店では大豆ミートのほか、レトルト商品やカップ麺を集積する。ライフ勝どきミッド店では食物アレルギー対応コーナーや低糖質・カロリーオフ商品コーナーにプラントベースフードコーナーを隣接させ、幅広い客層に対応している。