2019年までは低価格帯ワインを中心に、間口拡大することで順調に右肩上がりを続けてきたワイン市場だが、コロナ特需の反動により直近は停滞傾向が続いている。同様にチリワインも厳しい状況だが、味わいや品質などのよさで中高価格帯のワインが好調だ。市場活性化のためにも中高価格帯のワインの拡大が求められている。
プレミアム消費の拡大により、中高価格帯ワインが堅調に推移
チリワインは「安くておいしい」というイメージがあり、500円前後のワインを中心に間口拡大を図ってきた。ところが2020年の新型コロナウイルス感染拡大により、生活者の価値観や消費行動が一変。安さ重視から自分の気に入ったものを選ぶ「プレミアム消費」にシフトしているようだ。
グラフ①の新世界フルボトルの価格帯別販売金額推移をみると、20年のコロナ以降は499円までの低価格ワインは対前年比14%減なのに対し、500円から999円は前年並み、1000円以上は同6%増と堅調に推移している。売上拡大のためには伸長する中価格帯の品揃えが求められている。
メルシャンでは、多彩なラインアップで支持されている「フロンテラ」のプレミアムラインを強化。辛口ながら甘みを感じる飲みやすい味わいが人気で、世界的にも好調のレッド・ブレンドを3月に新発売。それに合わせて、「フロンテラ プレミアム」のデザインをリニューアル。スタンダードとの連動性と上質感を向上させることで、トライアルを喚起する。「手の届くプレミアム」として中価格帯の「フロンテラ プレミアム」を訴求して、チリワイン市場を盛り上げる。
1000円以上のチリワインのシェアが年々拡大中
チリワインでは、日常のちょっとした贅沢が味わえる1000円以上のワインが好調だ。グラフ②の「チリスティルワインフルボトル(1000円以上)販売金額シェア」をみると、20年のシェアが12.3%なのに対し、22年は13.2%まで上昇している。コストパフォーマンスのよさだけでなく、チリワインの品質のよさも認められはじめているようだ。
そのなかでも好調をキープしているのが「カッシェロ・デル・ディアブロ」。認知・トライアル率・リピート率ともに拡大しており、21年から2年連続で伸長している。「ディアブロ」の認知を広げているのが、SNSを活用したキャンペーンや「盗み飲みされるほど美味しい」という興味を喚起する首かけPOPなど。店頭での訴求でトライアル促進につながっている。23年も引き続き、効果の高い首かけのほか、興味関心をひく販促物を用意してトライアルを獲得していく。また、「フロンテラ プレミアム」と連携したキャンペーンやブランド横断POPで購買を促進し、チリワインに対するプレミアムのイメージを形成するのがねらいだ。
チリワインはコストパフォーマンスの高さだけでなく、品質でも世界的に評価されている。中価格帯のワインの品揃えを強化し、店頭でその魅力を伝えることで、単価アップが図れ、ワイン市場全体の活性化につながる。輸入スティルワインで最大のシェアを誇るチリワインを盛り上げていくことがワイン市場の再成長につながることは間違いない。