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睡眠の質を意識する生活者が増加 良質な睡眠を促す「快眠プロモーション」を

キザシ発掘ラボ®健康志向を背景にコロナ禍以降、質の高い睡眠へのニーズが高まっている。食分野での提案が増加する中、3月18日の「春の睡眠の日」に合わせて「快眠サポート」を切り口とした売場づくりを考えてみよう。

非食品から食品への広がりで
急拡大する快眠サポート市場

 2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛やテレワークの推進などにより、生活者のライフスタイルが一変。在宅勤務やハイブリッドワークによる生活リズムの乱れから、ストレス緩和や質の高い睡眠へのニーズが高まっている。

 日本人の睡眠時間はコロナ禍以降、増加傾向にあるが、「寝ても疲れが取れない」「眠りが浅い」「夜中に何度も目が覚める」など9割以上の生活者が睡眠の質に不満を感じている。このことを受け、睡眠に関する投資額は年々増加傾向にあり、ここちよい睡眠をサポートするためのマーケットも活気を帯びている。

 これまでの快眠サポート市場は、寝具やパジャマ、アイマスク、アロマなど非食品の分野が中心だったが、コロナ禍以降、睡眠の質を高める機能性表示食品をはじめ、食の分野でも「深い眠り」や「すっきりした目覚め」など快眠を訴求する提案が増加。WEBや雑誌、書籍でも快眠をサポートする食材やメニューが取り上げられている。

 ほかにも、ぐっすりと眠るために就寝前に毎日行う「ナイトルーティーン」提案や、寝ている間に肌や頭髪、ボディラインをメンテナンスする「睡眠美活」、毎日の睡眠状態を記録し体調管理につなげる「睡眠アプリ」など、さまざまなカテゴリーで快眠をサポートする商品・サービスが登場している。

コロナ禍を機に躍進
睡眠訴求の機能性表示食品

 快眠サポート市場の伸長を牽引しているのが、機能性表示食品の存在だ。富士経済によると、2015年に機能性表示食品制度が開始されたことでストレス緩和や睡眠改善といったヘルスクレームが可能となり、機能性表示食品の新商品発売が相次ぎ、市場も拡大。とくに20年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛の長期化によって需要が高まり、ストレス緩和や睡眠サポートを訴求する保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)の市場は前年比34.2%増の大幅伸長となった。

 また、睡眠カテゴリーにおける機能性表示食品の受理件数は2015年はわずか8件だったが、20年度には累計で200品目を突破。コロナ禍以降はさらに拡大し21年度の届出数は148件と、一層盛り上がりを見せている【図1】。

 とくに話題となったのが、ヤクルト本社の機能性表示食品「Y1000」だろう。同品は、同社史上最高密度となる1ml当たり10億個の乳酸菌シロタ株を含む乳製品乳酸菌飲料。乳酸菌シロタ株(L.カゼイYIT 9029)には、一時的な精神的ストレスがかかる状況でのストレスをやわらげる機能や睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)を高める機能があることが報告されている。元々、「ヤクルト1000」は宅配商品だったが、21年10月に店頭販売向けの「Y1000」が登場。TVの情報番組などで取り上げられたことで一気に知名度を上げ、店頭でも品薄の状態が続いた。

 また、江崎グリコの「メンタルバランスチョコレート GABA フォースリープ」は睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)を高める機能が報告されているγ-アミノ酪酸 (GABA)を配合した機能性表示食品のチョコレート。19年の発売以来好調に推移する同品は、22年2月に甘さ控えめの「同<甘さひかえめビター>」をラインアップに加えている。

 ハウスウェルネスフーズの機能性表示食品「ネルノダ」は発売から1年たたずに累計出荷数500万個を突破。手軽なドリンクタイプのほか、粒タイプのサプリメントも展開し、幅広い客層を取り込んでいる。

 KSP-POSによると商品名称に「快眠」を謳う商品群は前年に対し大幅増で推移。健康食品の構成比が大きいが22年3月以降はデザート類も出現。健康食品も拡大し、全体的に売上を伸ばしている【図2】。

性年代問わず高まる快眠ニーズ
コーナー化で新たな気付きを

 ここから、具体的な睡眠サポート関連の商品群を見てみよう。森永乳業では昨秋、睡眠サポートドリンク「睡眠改善」を発売。L-テアニンを関与成分として、睡眠の質を改善(起床時の疲労感を軽減)することを表示した機能性表示食品だ。日清ヨークの「ピルクル ミラクルケア」は、腸内環境を改善する機能だけでなく、睡眠の質改善による日常生活の疲労感を軽減する機能を持つ機能性表示食品。1日の摂取目安量は65mlと手軽なことも奏功し、好調に推移している。

 また、手軽に続けやすいドリンクタイプの機能性表示食品として、アサヒ飲料は「届く強さの乳酸菌W(ダブル)」、Endianは「CHILL OUT スリープショット」を展開。アリナミン製薬からは、寝ている間に疲労を回復する栄養ドリンク「アリナミン ナイトリカバー」(指定医薬部外品)が発売されている。

 非食品分野で好調なのが、P&Gジャパンの「レノア オードリュクス スリープ」。同品はジャスミンローズ、カモミール、スイートオレンジの香りが特長のプレミアムリラックスアロマを配合。寝具やパジャマなどに使用することにより質の高い睡眠環境をサポートし、実際に使用者の85%が「睡眠環境をサポートしてくれた」と実感している。

 小林製薬の「ナイトミン 耳ほぐタイム」は、発熱体が耳を温めることで寝る前にやすらぎを与えてくれるイヤーピース(耳せん)。自律神経が集まる耳の温め+遮音効果という新しいアプローチにより、安眠を促す耳せんとして現在も好調に推移する。

 また、注目成分としてCBDが挙げられる。CBDとは麻(大麻草)の茎や種子から抽出されるカンナビノイドのひとつであるカンナビジオールの略称。CBDは幻覚作用や依存性がなく不眠や不安状態の緩和に一定の効果があるとされており、安全性についてもWHO(世界保健機関)で認められている。これまでは化粧品や雑貨などに用いられてきたが、先行する海外ではチョコレートなどのスイーツにも用いられ、日本国内でも新たな健康食材として期待されている。

株式会社電通tempo
マーケティングプランナー キザシ発掘Lab 主任研究員 永野 薫氏(右)
コミュニケーションプランナー キザシ発掘Lab 研究員 杉田 智恵氏(左)

 ストレス社会といわれる現代において、性年代を問わず質の高い睡眠へのニーズは今後も広がっていくことが予想される。とくに3月18日の「春の睡眠の日」前後は新生活に向け、生活リズムが大きく変化するタイミングでもある。店頭でもカテゴリーの枠組みを超え、「快眠サポート」コーナーを展開することで来店者への気付きにつなげていきたいところだ。

※㈱フジ医療器「第9回 睡眠に関する調査」より