ジャムやスプレッドは朝食売場の定番となっているカテゴリーだ。これまでフルーツやピーナッツ、チョコなど甘いフレーバーが中心だったが、最近は食事系フレーバーのスプレッドが増えてきたことで選ぶ楽しみも広がっている。

メーンユーザーは子供のいるファミリー層
KSP-POSデータによると、2024年1月から12月のジャムカテゴリー全体の期間通算金額P Iは対前年同期比0.6%増の2091円、数量PIは同2.6%減の9.11となった【図表】。
月別の金額PIの推移を見ると、1月、4・5月、7月を除き前年並み、または前年に対し微増で推移。他のカテゴリー同様、原材料費高騰などによる値上げの影響も大きく、金額ベースでは最終的にプラスの着地となった。
一方、ピーナッツクリームやホイップ、パンに塗ってから焼くペーストなどを含むスプレッドカテゴリーの24年1月から12月の期間通算の金額PIは同2.2%減の1129円、数量PIは同7.2%減の5.03となった。月別の金額PIの推移を見ると、1月、9月を除き前年割れが続いている。
ジャムやスプレッドはパンに塗って食べる用途が主となっていることもあり、食の洋食化が進んだことで市場が拡大してきたカテゴリーだ。メーンユーザーは子供のいるファミリー層で、朝食での利用が最も多くなっている。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い自宅で過ごす時間が増えた20年以降は、ジャムやスプレッドの需要も増加。コロナ禍明け以降はその動きが落ち着いたものの、現在も堅調に推移する。とくにスプレッドはこれまでピーナッツやチョコレートなど甘いフレーバーが中心だったが、最近はカレー味やツナマヨネーズなど食事系のフレーバーが増えてきたことで選ぶ楽しみも広がっている。
チーズやコーヒーなど新たなフレーバーも
ジャムやスプレッドはロングセラーブランドの多いカテゴリーではあるが、直近も新しい商品が登場している。
ソントンでは24年3月、紙カップ入りジャム・クリームのロングセラーブランド「ファミリーカップ」の中味とパッケージデザインを約30年ぶりに刷新。またビン詰タイプのスプレッド「Sun & Table」は今春リニューアルを行い、新フレーバーとして北海道産のクリームチーズを使用した「なめらかチーズクリーム」を投入する。
アヲハタはスプーンを使わず片手でさっと使えるボトル容器入りフルーツスプレッド「アヲハタ Spoon Free」シリーズを展開。昨夏のリニューアルで果実感と使いやすさが向上した。スドージャムではコメダ珈琲店監修による「珈琲スプレッド」「カフェオレスプレッド」を展開する。
ジャムやスプレッドはパンに塗って食べるのが定番だが、今後市場を拡大していくにはヨーグルトに入れる、お菓子づくりに使う、おつまみ訴求など、パンに塗る以外の使用シーンを訴求することも必要だろう。
いちごやブルーベリー、ピーナッツクリームなどの定番フレーバーだけでなく、珍しいフレーバーの紹介や、アレンジレシピなど多彩な提案を行うことで来店客に気付きを与え、ユーザーの拡大および使用頻度の向上につなげたいところだ。
ジャム・スプレッドの売場事例
顧客の来店価値を高める売場づくり
ジャムやスプレッドはブランドごとのラインアップが豊富であり、スーパーマーケットの定番棚ではブランド別や容器・サイズに合わせた陳列が主流となっている。
「イオンスタイル伏見桃山」は駅近マンションの1・2階に位置していることからラインアップが豊富。定番からこだわり品まで揃えており、下段はPBのトップバリュ商品を集積する。
「ヨークベニマルいわき平店」は最上段に食事系スプレッドや個食タイプ、2・3段目に高価格帯や付加価値型、4段目以降に定番品を集積している。
JR大宮駅からほど近い、「マルエツ大宮 サクラスクエア店」はジャムやクリーム類のアイテム数を絞り、はちみつと合わせて棚2本で展開している。
ジャムやスプレッドはコーヒーや紅茶、シリアルなどのカテゴリーに近い加工食品の定番棚で展開することが多いが、パン売場の近くなど別の売場で展開する店舗もある。
「ベイシアFoods Park旭サンモール店」は“食のテーマパーク” として憩いの空間づくりをめざす「Foods Park」17号店。アイテム数は絞っているがパン売場に近いことからついで買いがしやすくなっている。
「ゆめマート五日市」では朝食での利用が多いフルーツ缶詰の横でジャム・スプレッドを展開しており、親和性が高い。
最後にジャムやスプレッドは輸入品やオーガニックのアイテムも多いカテゴリーだ。
カスミの新フォーマット「BRΛNDE」の4号店である「オリナス錦糸町店」ではオーガニック・スーパーマーケット「ビオセボン」をコーナー化。オーガニックのジャム・スプレッド類はオーガニックのケーキミックスと同棚で展開している。
イオンスタイル伏見桃山(京都府京都市)
定番からこだわり品まで幅広い品揃え。下段にはPBトップバリュの商品を展開
ヨークベニマルいわき平店(福島県いわき市)
最上段に食事系スプレッド、2・3段目に付加価値型、4段目以降に定番品を集積
マルエツ大宮サクラスクエア店(埼玉県さいたま市)
ジャムやクリーム類のアイテム数を絞り、はちみつと合わせて展開
ベイシアFoods Park旭サンモール店(千葉県旭市)
アイテム数を絞っているがパン売場に近く関連購買もねらいやすい
ゆめマート五日市(広島県広島市)
ジャム・スプレッド同様、朝食での利用が多いフルーツ缶詰の横に陳列
BRΛNDEオリナス錦糸町店(東京都墨田区)
オーガニックのジャム・スプレッド類を「ビオセボン」コーナーで展開