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生産者、小売と直接つながり急成長する青果市場

過去30年ほどで約4割も規模が縮小している青果卸売市場。市場システムが、生産者のニーズ、小売業など買い手のニーズにうまく対応できなかったためだ。そうした中、まったく独自の青果流通システムを構築し、生産者と小売業などの買い手と直接つながり、急成長を遂げる青果卸売市場がある。丸勘山形青果市場(山形県/井上周士社長)だ。

さくらんぼの夜間販売が象徴する斬新な仕組み

 山形市北部、山形北インターチェンジから車で2分の距離にある卸売市場会社の丸勘山形青果市場(以下、丸勘山形)。この広大な敷地の一画には、午後6時半ごろになると県内外から仲卸や小売業関係者が続々と集まってくる。青果市場では珍しい「さくらんぼの夜間販売」に参加するためだ。

 夜に販売を行う理由は、当日収穫されたさくらんぼをその日のうちに出荷し、翌朝に小売の店頭に届けるためだ。流通工程を省き、鮮度のよい状態で提供する丸勘山形の青果流通システムを象徴するものだ。

午後7時前、丸勘山形の卸売場には仲卸や小売業関係者などが集まっている。この日の目当ては「さくらんぼ」だが異例の不作により集荷は少なかった。午後10時ごろには各地に向けて配送トラックが出発する

 青果卸売市場を取り巻く環境は厳しい。日本の市場(いちば)は元々、無数の小規模生産者と無数の小規模仲卸、小売事業者とを効率的に結びつけるためにつくられたシステムだ。それゆえ小売の企業規模拡大と、大規模な農業経営体が増えている今、「市場と小売事業者」「市場と生産者」のニーズのアンマッチが起こっている。それが市場外流通の増加という結果を招き、青果の卸売市場経由率は、1993年の79.5%から2020年には52.2%まで落ち込んでいる(農林水産省令和4年度卸売市場データ集)。

 青果卸売市場の市場規模はこの間、約5兆円から約3兆円規模まで激減しており、それに合わせて卸売市場の業者数も半減している。

 こうした市場を取り巻く環境が激変する中、取扱高を伸ばし続けている地方卸売市場業者が丸勘山形だ。

 同社の取扱高は、98年は50億円と山形県内でも中堅規模の卸売市場業者に過ぎなかったが、以降急成長を遂げる。2010年には取扱高100億円を突破、直近の23年には対前年比6.9%増となる173億円を上げ、今や全国地方卸売市場でトップ10の取扱高を誇る(出典:農経新聞調査)。

県内最大級の売場面積を持つ丸勘山形。卸売場は8239㎡、冷蔵庫は486㎡、管理棟は881㎡ある

農協「敵」に回し構築した独自の流通構造

 図表をみてほしい。

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