新型コロナウイルス感染拡大に伴う巣ごもり需要で、簡単につくれる鍋つゆ市場が大きく伸長した。市場で大きなシェアを占めるストレートタイプはもちろん、汎用性の高い小分け濃縮タイプの需要も高まっている。今年も引き続き、需要拡大が見込まれている。
寄せ鍋や野菜鍋などのみんなで楽しめる定番鍋が人気
KSP-POSデータの鍋つゆの期間通算(2020年8月~21年7月)の金額PIは、4523円で対前年同期比11.9%増。20年はコロナ禍の巣ごもり需要に加え、冬らしい寒さの影響で鍋つゆ市場は大きく売上を拡大した。例年なら需要が減少する春から夏にかけても売上を伸ばしており、8月も同6.9%増となった。簡単につくれて、野菜やお肉をバランスよく摂取できる鍋物は年間を通して需要が高まっているようだ。
9月以降も好調で1月まで2ケタ増が続いている。コロナ特需の裏年となる3月と4月は前年割れとなったが、5月は同10.5%増、6月は同5.6%増と堅調に推移している。7月は猛暑の影響か前年割れとなった。
鍋つゆのタイプ別では、大きなシェアを占めるストレートタイプが市場を牽引。味別の鍋つゆでは、寄せ鍋や野菜鍋、キムチ鍋などの定番のものが人気となっている。鍋物は家族で楽しむことから「失敗したくない」という心理が働き、定番鍋を選択する傾向にあるようだ。メーカー各社では今年もかつおや昆布、あごなどの「だし」にこだわった商品を投入している。また、肉をしっかりと食べたいという傾向があることから、ヤマサ醤油では、鶏・豚・牛と肉種別の「ヤマサ うま鍋つゆ」を発売。1肉1野菜で簡単で肉のうま味を最大限に引き出した鍋つゆを提案している。
昨年から鍋つゆで注目されているのが「もつ鍋」。外食で食べることの多いもつ鍋だが、コロナ禍で外食しづらくなったことから、家庭での喫食シーンが増えている。家飲みも増えていることから、お酒に合う鍋として今年も需要を伸ばしそうだ。
汎用性の高い小分けタイプが好調 とくにしゃぶしゃぶ用が需要増
ストレートタイプに加え、大きく売上を拡大しているのが小分け濃縮タイプ。家族でもひとりでも好きな量だけつくれ、保存にも便利な小分け濃縮タイプは、鍋物はもちろん汎用調味料としても需要を伸ばしている。味の素では、本格的なおでんが家庭で楽しめる「鍋キューブ おでん本舗」〈あごだし醤油〉を新発売。独自技術を活用することで、おでんの人気具材である大根への短時間での味染みを可能にした。
トリゼンフーズでは、鍋物だけでなく、料理をつくるときのだしの素として「うまいのもと」シリーズを発売した。さまざまな料理で使えることを提案し、年間の定番化を図っていく。
また、味別の鍋つゆでここ数年、需要を伸ばしているのが、しゃぶしゃぶ専用鍋つゆだ。つけだれを必要とせず、しゃぶしゃぶするつゆの味わいだけで食べることができる鍋つゆ。千切りキャベツやレタス、豆苗、もやしなどを使うため、他の鍋と比べて煮込む必要がないので、忙しい平日の夕食などにも活用されている。
エバラ食品やヤマサ醤油、ヤマキのほか、Mizkanも新商品「スープも味わうしゃぶしゃぶ」シリーズを投入。本格的な鍋シーズン前や食卓登場頻度が落ちてくる2月などに提案したいところだ。
今年も外食がしづらい傾向は続いているため、おうちでの鍋物需要は高まることが予想される。