パルシステム生活協同組合連合会(東京都/大信政一理事長 以下:パルシステム)は、利用者が注文している商品を、全国に住む家族や友人へ宅配できる新サービス「パルのはこ」を10月からスタートすると発表した。
消費者同士の支え合いによる生活の向上を目的とする「生協」
「パルのはこ」の解説に入る前に「生活協同組合(以下:生協)」について少し触れておこう。生協とは「組合員」と呼ばれる一般市民同士が支え合い、より良い暮らしを実現するのを目的とした非営利の共同組織である。生産者が組合員となる漁協や農協も生協の一種であるが、日本では消費者を組合員とする「市民生協」が多い。生協と聞くとスーパーマーケットや個人宅配をイメージする場合が多いのはこのためだ。
生協は株式会社ではないため株主から資金を集められないが、代わりに組合員の出資金で事業が成り立つ。集めた出資金をもとに組合員の生活を向上するための様々な事業を提供するのが、生協の役割となる。また、株式会社では持株の多い株主ほど経営に対する強い発言権を持つが、生協では出資額の大小にかかわらず「組合員一人につき1票」で平等なため、組合員の声が運営に反映されやすいという特徴がある。
パルシステムの特色を活かした新サービス「パルのはこ」
パルシステムは、首都圏を中心とした地域生協が加盟する連合組織で、食を中心とした商品の供給事業や共済・福祉・電力事業などを展開している。連合会というスタイルを取ることで、規模の小さな生協にとって単独では実現が難しい商品開発に力を入れており、「健康」や「環境」に配慮されたこだわりの独自商品は800種類にのぼる。また今では馴染み深い、「個人宅配」を他の生協に先駆けて始めたのもパルシステムである。
今回開始する「パルのはこ」は、利用者は通常の宅配とかわらない方法で注文ができ、自宅に届くのと同じ配送日(北海道、九州、島しょなど一部の地域を除く)に、指定した配送先へパルシステムのオリジナル商品を送ることが可能なサービス。9月から注文用紙で、10月からインターネットで受け付けを開始する。良質な独自商品と完成された宅配システムという、パルシステムの持つ特色を活かしたサービスとなっている。
離れた家族へ「わが家の食卓」をお届け
「パルのはこ」では冷凍と常温、2つの温度帯の商品を対象として商品を送付できる。対象外となるのは冷蔵品、野菜・果物などの生鮮品、パン、酒、紙おむつ、切り花、種、苗、土類、チケット、数量限定品、賞味期限が15日以下の商品など。
本来、パルシステムの独自商品は対象地域に住んでいなければ味わえないものだが、「パルのはこ」を通じて離れた家族と楽しみを共有できる。お気に入りの商品を共有したり、かつてパルシステムのサービス圏内に暮らしていたが、今は離れている家族などに懐かしい味を届ける使い方も可能だ。「パルのはこ」はコロナ禍で離れ離れになった人々を、食を通して繋ぐプロジェクトだ。
コロナ禍における生協の動向
20年、コロナ禍での外出控えや、混雑するスーパーマーケットでの買物を回避する傾向から、生協をはじめとする食材宅配サービスは飛躍を遂げた。大幅な会員数の増加や買上点数の増加などで大きな恩恵を受けたが、21年に入りその傾向も徐々に落ち着きつつある。コロナ禍で獲得した会員の継続利用を促す施策が求められており、今回の「パルのはこ」も独自性を打ち出したサービスとして期待される。