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家族で楽しめる定番メニュー「カレー」、反動減も新規ユーザーの取り込みや新商品で堅調に伸びる

前年の反動減があったものの、期間通算はプラスで着地

 KSP-POSによると、2020年6月から21年5月のルウカレーカテゴリーの期間通算金額PIは前年同期比0.9%増の4607円、数量PIは同1.0%減の24.12だった【図表❶】。

 月別の対前年実績比の推移をみると、コロナの感染拡大による初の緊急事態宣言明けとなった20年6月は、前月までの家庭内ストックの消費もあったことから微減。一方、7月は2ケタ増の大幅伸長、8月以降も21年1月までプラスで推移した。

 しかし、コロナの流行から1年が経過した21年2月から前年を割る。とくに前年は緊急事態宣言中でまとめ買いが急増した3月・4月については、その反動が大きく2ケタ減となった。しかし5月に入ると数字も落ち着き、微増で着地している。

コロナ禍においては、飲食店の営業自粛により家庭で食事をする機会が増え、年代問わず家族みんなで楽しめるカレーの喫食率は増加している。 i-stock/kazoka30

 カレーは季節の影響を比較的受けづらいカテゴリーだが、気温が高くなる春から夏にかけて数値が上がり、秋口から冬にかけて数値が下がる傾向にある。コロナ禍においては、飲食店の営業自粛により家庭で食事をする機会が増え、年代問わず家族みんなで楽しめるカレーの喫食率は増加している。近年、有職女性および共働き家庭の増加に伴い調理時間のかかる煮込み料理が敬遠されつつあること、世帯人数の減少から数人分のカレーをつくる機会が減ったことなどを背景にルウカレーのマーケットは停滞から微減傾向にあったがしかし、コロナ禍以降、自宅で調理する時間ができたことから、その価値が見直されつつある。

 ルウカレーはハウス食品の「こくまろカレー」や「ジャワカレー」など、ロングセラーブランドが多いカテゴリーだが、近年は定番以外のルウカレー商品が出てきている。

 とくにバターチキンカレーは外食メニューとしても人気であり、昨年秋に発売された「こくまろバターチキンカレー」は、家庭でも手軽に本格的な風味が楽しめると好評を得ている。さらに家庭でカレーをつくるようになったことで注目されているのが「カレーパートナー」をはじめとしたカレー用の煮込み調味料やスパイスだ。時間的な余裕ができたことから、ひと手間かけたカレーをつくる家庭も増えており、プラスアルファの一品として訴求すれば、バスケット単価の向上にもつながるだろう。

集計期間:2020年6月~21年5月 地域:全国 出典:KSP-POS(食品SM)

在宅ランチ需要を取り込み、付加価値型商品も伸長

 一方、レトルトカレーカテゴリーの20年6月から21年5月の金額PIは対前年同期比1.0%増の4298円、数量PIは2.0%減の24.09となった【図表❷】。同カテゴリーは世帯人数の減少の影響を受けたルウカレーからの流入もあり近年は微増傾向にあり、コロナの流行以降、需要がいっそう拡大した。月別の推移をみると20年6月から21年1月までは前年を上回って推移。しかしコロナ流行から1年経過した反動はルウカレー以上に大きく、とくに21年3月・4月は同20%の大幅減となっている。

集計期間:2020年6月~21年5月 地域:全国 出典:KSP-POS(食品SM)

 レトルトカレーは、チキンやビーフの欧風カレーから有名店監修、エスニック風、激辛系、ご当地カレーなどバラエティ感のある品揃えが魅力だ。とくに「選ばれし人気店」シリーズをはじめとした名店シリーズは、在宅ワークでのランチ需要も取り込み好調に推移。若年層や男性など、これまでレトルトカレーを手に取ることがなかった新規ユーザーの取り込みにも成功している。

 また、「プロ クオリティ」をはじめとした複数個入りの商品もローリングストックとして好調に推移。カレーの定番棚のほか、主通路沿いでアウト展開されることも多くなっている。

 さらに、簡便性の向上で注目されるのが電子レンジ調理対応だ。ハウス食品では環境保護と簡便性を考慮し、レトルトカレー製品の包装をレンジ加熱対応パウチへと変更を進めている。今秋はレトルトカレー売上No.1ブランド「咖屋カレー」のパウチ化を実施。同社では22年秋までに家庭用レトルトカレー製品のほぼ全製品を、レンジ加熱に対応したパウチタイプに変更することをめざしている。

 ワクチン接種が始まったものの、コロナの影響は当面続くとみられる。店頭でも生鮮品とカレー専用調味料との関連販売をしかけることで需要を喚起し、家族みんなで楽しめるカレーの価値を改めて伝えていきたいところだ。