コロナ禍で家庭用冷凍食品が絶好調だが、最も大きく伸びているカテゴリーが冷凍麺である。消費カテゴリートップに躍り出て、その勢いは止まらない。昨年は安定供給に汗したメーカー各社も、今年はさまざまな新提案商品を打ち出している。
20億食突破、冷凍食品の最大消費カテゴリー
冷凍麺の年間生産食数は、2020年に20億食を突破した(日本冷凍めん協会発表)。コロナ禍の1年、家庭用の需要増が業務用の落ち込みをカバーして、20億900万食、前年より1億5000万食増加、率にして108.5%である。家庭用では、主力品目がいずれも2割~3割伸びて、前年比127.6%だった。驚異的な伸長と言ってよいだろう。
冷凍麺の商品トレンドを記す前に、まずは、冷凍食品全体における冷凍麺のポジションについて明らかにしておきたい。日本冷凍食品協会は、会員企業の国内生産量、冷凍野菜の輸入量、会員企業の調理冷凍食品輸入量の合計を冷凍食品国内消費量としている。では、20年消費量の上位品目は何かという一覧を作成してみると、上位10品目の中に2位「うどん」、8位「スパゲッティ」、10位「ラーメン」と麺類3品目が入る。かつ麺類合計生産量は38万8000トンで、第1位の「ポテト(輸入)」を初めて上回り、最大カテゴリーとなった。
冷凍めんは1974年に“カトキチさぬきうどん”が誕生して以来、右肩上がりで成長を続け、ついに冷凍食品トップの位置に到達したのである。
玉うどん伸長、新規ユーザーが増える
具付きうどんも、対前年比25%アップで年間1億食を突破した。鍋で解凍するだけのキンレイ『お水がいらない』シリーズ「鍋焼うどん」の好調が続いている。テーブルマークのトレー付きぶっかけタイプ『お皿がいらない』シリーズも伸びている。パッケージそのままでレンジ調理ができ、お皿付きの機能が高く評価されている。
ランチの王者、1食完結パスタはバラエティ化
前述の2シリーズのような『1食完結型』の元祖はパスタである。パスタもコロナ禍にあって、在宅ワークのランチ需要をつかみ、さらに需要を伸ばした格好だ。
大手3社がしのぎを削る市場だが、コロナ禍を背景にした需給ひっ迫が一段落した秋以降は、各社各様に新たな商品を積極的に提案している。ニップンは高品質『REGALO』ブランドのショートパスタメニューを投入して話題に。また、独自の形態であるパスタと料理のセット商品『よくばりプレート』も新生産ライン稼働により、開発を強化している。
日清フーズは、外食機会が減少した生活者に向け、『青の洞窟』ブランドのハイエンドライン「GRAZIA」をトップシールの皿いらずタイプにして新提案した。今春は『大盛り』シリーズも強化、縦ピローへの全品統一も思い切った施策だ。また、『ル・ベトナミーズ』を立ち上げ「フォー」を発売。カップ容器に水を入れレンジ加熱調理する新発想が注目できる。
中華麺が台風の目、日本そば、高級路線も有望
日清食品冷凍は、『もちっと生パスタ』で独走態勢、「汁なし担々麺大盛り」とともにテレビCMを今春投入した。また、汁なし中華麺では、「台湾まぜそば」が本場名古屋のみならず関東圏でも人気急上昇。自宅で卵黄をトッピングするという『まぜ麺亭』のシリーズ化に注目したい。中華では、ラーメンもコロナ禍の影響で急伸した。人気トップを走り続けるニッスイ・ちゃんぽん、マルハニチロ・横浜あんかけラーメンはもちろん、キンレイの「お水がいらない 横浜家系ラーメン」がブレイク、それに続くラーメン系新商品も秀逸である。
冷凍麺ユーザーの間口が広がったことで、日本そばの有望性、高級路線の商品にも着目したい。テーブルマークはシニアをターゲットに玉麺の世界を広げる「石臼挽き信州そば」を新発売した。
外食をバックボーンにした新規参入組の中では、ピエトロの高価格帯パスタが好調だ。同社では、1食1000円前後の「シェフの休日」シリーズに加え、昨年3月、780円の『洋麺屋ピエトロ』シリーズを発売、1年経過して販売は倍増ペースとなり、一般量販店にも売場が広がっている。フランス発の専門店「ピカール」でも、個食パスタに加え、具がゴージャスな900g袋の3人前パスタがブレイクしそうである。
冷食で高価格帯は空白地帯、ブルーオーシャンだとささやかれてきた。価格帯の天井突破は、絶好調の麺カテゴリーが先鞭を切っていきそうだ。