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内食化で食パンは好調!雑穀系、プレミアム系が市場を底上げ

2020年は外出や外食が制限されるなか、食パンの需要は高まったが、調理パンは厳しい状況となった。また菓子パンは大袋が好調で前年並みで推移した。メーカー各社ではユーザーニーズに合わせた取り組みを強化している。

健康意識の高まりでライ麦や全粒粉、もち麦入りの雑穀系食パンが伸長している。 carlosgaw/i-stock

4、5月は食パンに需要が集まり 2ケタ増を記録

 KSP-POSの食パンの期間通算(2020年2月~21年1月)の金額PIは、2万379円で対前年同期比6.8%増。月別金額PIをみると、1回目の緊急事態宣言が発出された4月と5月は2ケタ増となった。休校や外出自粛により、食パンに需要が集まった。5月25日に全国で緊急事態宣言が解除され、外出が増えたことで前年並みに戻り、その後堅調に推移している。

 またパンは猛暑になると販売が落ち込む傾向にあるが、昨年7月は長梅雨で気温の低い日が多かったことから、パンにとっては追い風となった。

 食パンは高級食パンブームの影響で生食の需要が広がっており、原料や製法にこだわったプレミアム食パンの投入が目立っている。神戸屋では長年培ってきた技術である「湯種製法」と「多加水製法」により、高級食パン専門店のようなしっとり感、もちもち感を実現した「匠水(たくみ)」を発売している。

 また第一屋製パンでは、石臼挽き全粒粉と湯種製法で、そのまま食べてしっとり、みみまでおいしく食べられる「emin(i エミニ)」を発売した。毎日食べる食パンでちょっと高級なものを求める人から支持されている。

 健康意識の高まりで伸長しているのが、ライ麦や全粒粉、もち麦入りの雑穀系食パン。食物繊維などが豊富で、独特の食感がやみつきになる人も多い。山崎製パンでは、今年、「ダブルソフト全粒粉入り」「やわらか十二穀ブレッド」「超芳醇 塩分50%カット」などを次々に発売した。自家製発酵種ルヴァン使用によりやわらかく仕上げているのが特長だ。なかでも塩分をカットした食パンは少なく、流通からも注目を集めている。神戸屋では、同社の技術やノウハウを活用し、穀物本来のおいしさが味わえる「美味雑穀」シリーズを展開している。

おうち時間が増え バラエティパックが好調

菓子パンは堅調で、期間通算の金額PIは、2万1635円で同4.8%増。 gyro/i-stock

 外出機会が減った影響で苦戦を強いられたのが調理パン。KSP-POSデータによると、調理パンの期間通算の金額PIは7552円で対前年同期比2%増だったものの、月別金額PIは2月から6月まで前年割れとなった。調理パンはランチなどの需要が高く、在宅勤務が増えたことで、都市部のコンビニエンスストアでの需要が激減したことが予想される。緊急事態宣言が解除され、外出が増えはじめた7月以降は前年並みにまで回復した。

 一方、菓子パンは堅調で、期間通算の金額PIは、2万1635円で同4.8%増。菓子パンは暑い時期には需要は少し落ちるものの、年間を通して安定している。菓子パンでとくに好調だったのが、大袋のバラエティパック。家族が自宅にいる時間が長いため、いつでも手軽に食べられるバラエティパックが好まれたようだ。

 新型コロナウイルスの影響で生活が一変し、主食のひとつであるパンも影響を受けており、今後どのような動きをするのか予想が難しい状況だ。

神戸屋 多加水製法でもちもち・しっとり感!食べ飽きない味わいの「匠水」が好調

マーケティング部 企画部 部長 山路忠義 氏

 小麦粉に極限まで水をたっぷり含ませた食パンの「匠水(たくみ)」が好調だ。神戸屋が長年培ってきた技術である「湯種製法」と「多加水製法」により、高級食パン専門店のようなしっとり感、もちもち感を実現した。ソフトで口どけがよいため、お子様からお年寄りまで年齢を問わず食べやすいのが特徴。クセがない味わいなので毎日食べても食べ飽きない。既存品に比べ価格は高めになるが、一度食べると継続する傾向にあるため、同社では店頭で積極的にアピールしている。

 そのほか多加水生地を使用した商品を次々に発売しており、なかでも昨年大ヒット商品となったのが「しあわせ届ける」シリーズ。しっとりやわらかな口どけのよい生地とクリームの一体感が味わえる菓子パンで、クリームパン、チョコクリーム、練乳クリームパンなどをラインアップしている。

 健康志向を背景に注目を集めているのがもち麦や全粒粉などを使った雑穀系食パン。雑穀系食パン市場は、2020年と13年を比較して2.5倍以上の伸びだ。同社が展開する「美味雑穀」シリーズも好調に推移。神戸屋の技術やノウハウを活用し、穀物本来のおいしさが味わえるシリーズとなっている。ラインアップは、米麹発酵種でほのかな甘みの「米粉入りもっちり食パン」、もち麦のぷちぷち食感が楽しめる「もち麦入りぷちっと食パン」、全粒粉・小麦ふすまを配合した「全粒粉入りブラン食パン」。雑穀食パンとはいえ、しっとりやわらかな口あたりに仕上げているので雑穀初心者でも食べやすいと好評だ。同社ではトライアルしやすいように3枚入のハーフパックを展開している。食物繊維などの栄養素を補える雑穀食パンを食事に取り入れていくことを訴求していく。

敷島製パン、Pasco「超熟」コミュニケーション強化 LINE友だち登録50万人を突破

開発本部 営業DX推進部 部長 高橋 知博氏

 2020年に創業100周年を迎えた敷島製パン。同社のPasco「超熟」は食パンカテゴリーのNo.1ブランドとして幅広い年代に支持されている。同社では100周年記念として国産小麦商品の発売やテレビCMによるプロモーションに注力。またLINE公式アカウントを開設し、21年2月現在、友だち登録数は50万人を突破している。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、食パンやロールパンといった食事パンが伸長するなか、「超熟」ブランドも好調に推移しており、とくに山型の食パンは前年比2ケタ増と大幅な伸びを見せている。

 「超熟」ブランドの21年のマーケティング施策は、女優・杉咲花さんを起用したテレビCMを軸に、Web媒体やSNSの活用によるファンづくりに力を入れる。新CM放映に加えて、「シャープ ヘルシオ ホットクック」や「BRUNO crassy+スチーム&ベイクトースター」などが当たるキャンペーンを実施。また、友だち追加&アンケート回答で、リサとガスパールのPascoオリジナルLINEスタンプがもれなくもらえる企画も同時期に行っている。

 今期の注力商品でもある「超熟フォカッチャ」は「朝フォカッチャ・夜フォカッチャ」をテーマに、デジタルサイネージを使った食べ方提案等を実施。敷島製パンではさまざまな切り口によるプロモーションを通じて、「超熟」のファンを醸成していく考えだ。

第一屋製パン 子供やシニア層から支持される みみまでおいしい「emini」

営業本部 営業企画部 副部長 本田太氏

 1999年に発売した食べやすいサイズの総菜パン「ひとくちつつみソーセージ」。今までになかったミニサイズのソーセージパンは発売から好調に推移しており、昨年は巣ごもり生活によりさらに伸長した。さまざまな年齢層に支持されている主力の「同ソーセージ」に加え、「同ハムマヨネーズ」もラインアップ。引き続き、好調に推移している大袋タイプの強化を図る。

 また、同社ではキャラクターパンにも力を入れており、お楽しみシール付きのポケモンパンとプリキュアパンは低年齢層から支持され、主力商品になっている。今年2月には「映画ドラえもんパン」を発売した。さらに今年は3本目の柱となるキャラクターパンを投入する予定だ。

 食パンでは「子供に笑顔で食べてもらいたい」という思いを込めて開発した「emin(i エミニ)」を展開。石臼挽き全粒粉と湯種製法で、そのまま食べてしっとり、みみまでおいしく食べられるのが特徴だ。発売当初、量販店で1枚入のサンプリングを展開し、口どけのよさから子供はもちろん、シニア層まで支持され、リピーター育成につながっている。

 昨年からは、インスタグラムを使ったユーザーとのコミュニケーションも行っている。なかでも好評なのが、「emini」を使って具材で顔をつくる「顔パン」をインスタグラムに投稿してもらう「顔パン部」の取り組みだ。また、パンを通して食べることを伝える食育プロジェクトを実施。食育の情報や実践方法を発信するコラムなど、パンを通して食の大切さを伝える活動を行っている。

山崎製パン ひと手間でおいしく仕上がる「リベイク」で既存品を底上げ

営業統括本部 マーケティング部長 早川史朗氏

 コロナ禍の巣ごもり需要で食パンが好調に推移している。山崎製パンの主力ブランド「ロイヤルブレッド」も好調を継続しており、今年1月も対前年比20%増を記録した。バターの風味とコクのあるしっとりした食感が支持され、新たなファン獲得につながっている。

 今年は健康志向を背景に注目が集まっている雑穀パンのラインアップを強化。1月には、「ダブルソフト全粒粉入り」をしっとりやわらかな食感を高めてリニューアル。2月には、12種類の穀物をバランスよくブレンドした「やわらか十二穀ブレッド」と、大豆粉を配合し、糖質を抑えた「糖質ひかえめブレッド」を発売した。4月には、食塩の使用量を5割にした「超芳醇 塩分50%カット」を新発売。塩分控えめの食パンのニーズは高く、流通からも注目を集めている。これらの商品には自家製発酵種ルヴァンを使用し、しっとり感を高めるとともに風味やコクのある旨みを引き出した。

 同社ではパンをよりおいしく楽しんでもらうためのレシピサイト「ヤマザキッチン」を展開しており、2020年のユーザー数が200万人を超える人気サイトとなっている。また、同社では既存の商品を、ご家庭でオーブントースターで軽く焼いてよりおいしく楽しんでもらう「リベイク」を提案。昨年九州地区で大好評だったのが、「北海道チーズ蒸しケーキ」をオーブントースターで温めて、バターとメイプルシロップをかける食べ方。この春から商品に「リベイク」シールを貼り、ひと手間でおいしく仕上がることを訴求し、既存品の底上げを図っていく。買いおきに適した複数個入りの菓子パン「ベイクワンシリーズ」にも注力。さらに毎年人気の「春のパンまつり」を実施し、売場を盛り上げていく。