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力士の声が子供に!?世界最大のグミメーカーが日本初のテレビCMを打つ勝算

世界最大のグミメーカー・ハリボー(HARIBO)のテレビCMが2月下旬から放映されている。同社にとって日本初となるテレビCMは、その世界観が凝縮されたユニークながら完成度の高い内容だ。日本でも根強いファンを持つ同社が、マス広告を打つ先に見据える拡大戦略に勝算はあるのか。同社日本カントリーマネージャーのポール・クラフト氏に聞いた。

 

絶大なインパクトのCMで表現する世界観

2月から公開中のハリボーテレビCM

 休憩中に退屈そうにぼんやりする4人の力士。とその時、一人の力士がハリボーを手に「見て~、ハリボーゴールドベアっ」と満面の笑顔で3人にアピール。巨漢男がみせる、まるで少年のような無邪気な表情だけで十分なインパクトだが、その声はなんと子ども。この超絶ギャップに一気に引き込まれ、その後の畳みかけるような展開に目が釘付けになる――。

 元力士を起用したキャスティング、それがなぜか子供に見えてくる見事な演技力、そこに違和感なくマッチする子供の声、それらを効果的に見せる絶妙なカメラワーク、セリフに散りばめられたハリボー・グミの魅力の訴求。わずか30秒間のCMにハリボーの魅力と世界観が凝縮されたその完成度はお見事だ。

 企画にも携わったというポール氏は「このCMは世界的に大成功している当社のキッズボイスキャンペーンの日本版CM。ニュージーランドではラグビー、アメリカは会社役員をテーマにしています。とてもユニークなので、日本の消費者にも『子どものような幸せ』というHARIBOの価値観と多くの幸せをお届けできると願っています。いまがベストタイミングです」とこのタイミングでの初CMに自信をみせる。

初のCM投下にどれだけの勝算があるのか

ハリボー日本カントリーマネージャーのポール・クラフト氏

 とはいえ、テレビCMはテレビ離れの加速もあり、かつてほどの効果は期待しづらい状況にある。そうした中でのゴールデン帯への思い切ったCM投下。そこに十分な投資対効果を得るだけの勝算はあるのか。なぜいま、マス広告なのか。その裏には同社が30年以上の日本市場での実績の中で紡いできた綿密なマーケティング戦略がある。

 ポール氏は日本市場での手ごたえを感じる一方で、「日本人は知ってくれれば買ってくれるがそこにいくまでが難しい」ともどかしそうに話す。裏を返せば、一度ハリボーのグミを知った人は、根強いファンになってくれるが、存在を知らないがゆえにスルーされてしまうということだ。このジレンマを打破する一手がテレビCMとなる。

 認知によって購入者を新規に開拓できることを裏付ける結果は得ている。昨年展開した、ユニクロやフィアットらの他業種とのコラボレーションで実施したサンプル配布キャンペーンでは、ハリボーを知らない消費者との接点を持つことに成功。結果、しっかりとその魅力を知ってもらい、新規のユーザー増につなげた。

 

販売網拡充と商品力強化で販売体制も整備

 消費増大に対応する販売網の拡充も着々と進めている。プラザ(旧ソニープラザ)や成城石井、カルディなどの専門店に加え、昨今は卸各社と組んで、いわゆる「流通ルート」を徹底強化。コンビニエンスストアやスーパーマーケットでも売場を確保しており、欲しいけど買える場所があまりないというボトルネックも解消しつつある。

 こうした動きに連動し、容量を80gと小さくして価格を178円に抑え、国産品との価格競争力も強化した。さらにパッケージの目立つ部分に、大きめに「合成着色料不使用」のマークをプリント。日本人がナーバスになる部分にもしっかり配慮し、万全を期している。

 

認知拡大が武器になる商品力と企画力

 日本のグミ市場は700億円に迫り、ガムを超える勢いだ。比例するように味や食感の多様化が進み、競争は熾烈になっている。ハリボー製品にはそれでも、日本製品とは一線を画す強みがある。ゴールドベアに代表されるキャラクターや吸血コウモリ、カエルなどの遊び心満載の商品展開だ。こうした企画力・商品力は、見た目ではインスタ映えにつながり、話題性ではツイッターでの拡散力と親和性が高く、昨今同社が注力するSNSでの拡散効果も期待できる。

 ポール氏は日本市場の傾向として、「少し酸味がある商品が好まれる。フルーツ味は定番人気で、男性にはコーラ味がとても人気がある。それから新商品はいつも注目度が高い」と分析。こうした独特の嗜好を十分に踏まえ、テレビCMによる認知拡大をにらみながら、日本向けの新商品を随時投入していく。

 テレビCMの放映は4月まで。その抜群のインパクトで、愛用者の多い職場やSNS上で話題沸騰となることは必至だ。ちょうどその頃、日本では桜が満開シーズンを迎える。日本市場拡大へ向け、着々とタネをまいてきた同社。そこからどんな花が咲き乱れるのか。春以降のグミ市場で黄金のクマがひと暴れしそうな予感が漂う。