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ヤオコー、西友、ビッグ・エー… 進化するP B、 売場や売り方を変え、業務改善にも貢献

新型コロナウイルス(コロナ)禍で多くの生活者に所得の減少や雇用不安が広がっていくと、いっそうの価格競争は避けられない・・・。ほとんどの食品スーパー経営者が、2021年をそのように展望します。そうなると重要性が増してくるのがプライベートブランド(PB)でしょう。価格を抑えられて、粗利益高を確保できて、競合にはない独自商品でもある。ただ、PBの重要性はそういったことだけにあるのではないようです。PBだから可能な売場づくりや販売方法というものがあり、パッケージのデザインを変えることが業務改善につながるケースも。単品勝負のナショナルブランド(NB)とは違う、PBならではの強みや魅力があります。

大規模なカテゴリー横断もPBのくくりなら可能(西友 三軒茶屋店)

PBで売場を作り、彩る

 西友は、最近の売場づくりでPBの集合陳列コーナーを展開します。グロサリー中心ですが、それでも飲料から菓子、シリアル、レトルト、調味料、インスタント食品など幅広くカテゴリーを横断するものです。これらが1カ所に集まる理由は、西友のPB「みなさまのお墨付き」ブランドであるという1点だけです。NB商品を同じように集合させるくくりは、ちょっと考えづらいでしょう。それだけ幅広く揃えたうえで、西友でしか買えない商品群としてアピールできるのです。

 複数のカテゴリーにまたがっても、PBは1つのブランドとして展開することが多く、パッケージデザインには統一感があるのが一般的です。だからこそ、私などはPBの売場は写真栄えがすると感じるのですが、人によっては「どれも似たり寄ったりでつまらない」という印象になることもあるようです。

商品個々でカラーを変えつつ、カテゴリーとしての一体感も作り出す(ヤオコー所沢北原店)

 しかし最近リニューアルしたヤオコーのPBナッツ類は、カテゴリー単位で統一感を持たせつつ、個々の商品パッケージにも特徴があります。ナッツの種類やアソートメントの内容、素煎りか塩使用かといった違いでパッケージのカラーが1品ごとに異なるのです。それでもデザインの基本設計が揃っているため、フック陳列で並んだ様子にはパッチワークのような調和があります。売場内で1つのカテゴリーとして際立つうえに、個々の商品を区別するのも容易です。

パッケージの究極は外袋をなくすこと?
MUJIの量り売り

外袋をなくしてバラ売りを可能に(無印良品 東京有明)

 統一コンセプトによるデザインで食品売場に一体感をもたらす手法といえば、スーパーではありませんが、その最たるものは無印良品(企業名:良品計画)の売場でしょう。商品パッケージのデザインはもちろん、什器や陳列のしかたによっても、MUJIらしさを漂わせます。

 その無印良品が新たに始めたのが、個包装された菓子の量り売りです。最新の旗艦店「東京有明」(東京都江東区)ではパスタやコーヒーなどと一緒に量り売りコーナーを構築していますが、菓子の量り売りは元売場でも実施しています。1g・4円で20g以上から購入できるというもので、菓子を選んで紙袋に入れ、はかりで計測すると出力されるラベルを貼付、最後にレジで会計という流れです。この販売方法、商品個々の外袋を取っ払い、g単価でアソートメントの楽しさを提供するという点に、PBならではの飛躍を感じます。

 NB商品の場合、外袋には売場で目立つための舞台衣装のような役割があります。手にとってもらうために自己主張しなければなりません。PBの場合、その自己主張がさほど重要ではないので統一感のあるデザインになるわけですが、いっそパッケージもなくしてバラ売りにしてしまえば、アソートする新しい楽しみを提供できるという斬新さです。

 もちろん、プラスチック使用量の削減や、適量を購入することで食品ロスを抑制するといった意図もあります。商品の外袋をなくしてしまうという発想は、PBだからこそ可能な、パッケージデザインを突き詰めていった1つのかたちなのかもしれません。

バーコードの視認性を最優先
ビッグ・エーは効率重視

バーコードを探す手間を省くためのパッケージデザイン(ビッグ・エー葛飾西亀有店)

 PBのパッケージデザインを突き詰める、その方向性もいろいろです。これまで挙げてきたような売場の見せ方・売り方に関わるものだけではありません。業務効率を突き詰めるためのデザインという方向性もあります。ビッグ・エーのPBです。

 業務の効率化を徹底するディスカウンターでは、会計時に商品をスキャンする際もコンマ何秒のスピードを追求します。作業効率を徹底して高めることが、売価を下げる原資になると考えるからです。バーコードを探す手間で発生する時間のロスを削りたいと考え、オリジナル商品のパッケージではバーコードを際立たせるデザインを増やしています。

 これは19年から始まった「トリプルS(スマート・スキャン・システム)」と呼ぶ取り組みで、20年12月時点で120SKUになっています。保存用ラップフィルムの四角いパッケージや粉チーズのような筒型パッケージにはバーコードを1周させたり、パッケージの表裏両面に印字したり、とにかく大書したものや、デザインバーコード風のアイキャッチにして目立つ位置に配置したものなど、バリエーションはいろいろです。

 レジ係がバーコードを見つけやすいことを優先したデザインというのも、ディスカウントストアならではの振り切った発想ではないでしょうか。その意図を理解したうえでパッケージを眺めていると、デザインの大胆さ、割り切りの潔さ、だんだんクセになるというか、ある種の世界観を感じてきます。

 PB商品は、価格やおいしさも重要ですが、それだけでなくチェーンの個性や価値観を現したものだと言えそうです。だからこそ重要な商品群なのだと思います。