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コロナ禍における購買行動の変化と、求められるMD施策とは!?

MDエディション

新型コロナウイルスの影響を受け消費者の購買行動が大きく変化するなか、商品政策を大きく変える企業が増えている。ニューノーマル時代に求められるMD施策とオンライン商談のメリットは何か。コープデリ生活協同組合連合会の店舗グロサリー商品部グロサリーグループ長、京本健氏に話をきいた。

需要のピークは4・5月備蓄用に買い込む客が急増

―新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の事態により流通業は不規則なMDを強いられました。コロナ禍でのコープデリの販売動向についてお聞かせください。

コープデリ生活協同組合連合会
店舗グロサリー商品部グロサリーグループ長
京本健氏

京本 2月上旬からマスクやハンドソープ、消毒用アルコールなどの住関連が動き始めましたが、本格的に商品が動いたのは、学校休校の報道があった2月27日の午後です。グロサリー部の管轄である菓子、酒類、食品、住関連の4部門は、この日を境に爆発的に商品が動くようになりました。

 3月から11月のグロサリーの供給高は予算比に対して+117%と大幅に伸長しました。ピークは4月で5月も前月に比べ少し落ちたものの引き続き利用額が多かった。ただし、緊急事態宣言明けの6月以降は供給高も落ち着き、とくに9月については前年の消費税増税前の反動のほうが大きくカテゴリーによっては前年を割ったものもありました。

―特に好調だったカテゴリーや商品群があれば教えてください。

京本 コロナ禍で伸びたものというと、多くの方がマスクや除菌アルコールを思い浮かべるのですが、コープデリで最も伸びたのは食品です。実際、最も供給高が高かった4月の予算比増分135%のうち、食品で145%伸長しています。もし、マスクなどの住関連の商材の在庫が潤沢であれば変わったかもしれませんが、3月から5月は物流も滞っており、とにかく食品や菓子など集められる商品をできうる限り集め、店舗で販売を行っていました。

 グロサリー部ではコロナ禍の影響が出始めた現在までを、3期に分けて分析しています。1期は2月27日から5月末、2期は6月1日から8月末、3期は9月1日から11月24日としていますが、1期目はどのカテゴリーも大きく動きました。

 組合員の反応は震災の時に近いかたちで、とにかく備蓄をしたいという志向が強かったように思います。とくにレトルトカレーや水、缶詰といった商品群はよく動きました。

 子供が家にいるというコロナ禍ならではの理由で伸びたのが、ホットケーキミックスやクッキーの粉といった製菓用の粉類です。これに付随して菓子の型なども動きました。

 また在宅勤務が増えたことでレギュラーコーヒーやココアといった嗜好飲料も伸長し、外食から内食への動きが加速したことから、パスタ類なども大きく伸びています。

30・40代の客が増加新たな切り口の棚割りも導入

―1期から3期でMDや販促はどのように変化しましたか?

京本 1期はとにかく商品が足りなくて、定番品が入ってこないためほとんどがスポットでの展開でした。2期も商品が足りない状態は続きましたが、それでもある程度カテゴリーが絞られてきて、たとえばお好み焼き粉、ホットケーキミックス、ドライイースト、パスタに集中して商品確保を行いました。

 8月末から商品入荷が潤沢に回復したので、定番の商品を何とか供給し、エンドでコープ商品の販促を強化しました。オリジナルブランドを組合員にしっかりと打ち出すことで、プライベートブランドとしての価値がワンランク高まったと感じています。

 チラシ販促について、1期の頃は店内の過密を避けるために中止し、2期の途中から少しずつ戻していきました。3期に入ってからは競合のN B商品の価格が下がる傾向にあったので、こちらも調理油などの定番品を中心に価格を下げて対抗するような施策を採っています。

―この状況下で客層も変わったのでしょうか?

京本 そうですね。これまでコープデリはシニアの組合員さんの来店比率が多かったのですが、コロナ禍を機に「近くの生協を利用してみよう」と考える30・40代の若い世代の来店が増え、結果として組合員さんの増加につながっています。

 新型コロナウイルス感染拡大期の分類別売上構成比(図表)を見ていただくとわかるように、30・40代の利用の底上げが全体供給高の底上げに貢献しており、今後はこの若い世代の客層に継続利用してもらえるような商品施策や売場づくりを行うことが重要でしょう。

―新型コロナウイルスの影響によって売場を変更した点はありますか?

京本 たとえば、製菓用の粉類については、これまで重要カテゴリーの扱いではありませんでしたが、今回の消費動向を機に主通路側に近づけるなど、配置やゾーニングを見直す必要があると考えています。またココアやレギュラーコーヒーといった嗜好飲料、アレルギー対応といったカテゴリーについても、旧来から続く枠組みを取り払い、新たに組み直すことが求められています。

 当組合はID-POSを導入し、メーカーさん、ベンダーさんが参加する研究会を行っていますが、各バイヤーはID-POSの年代層別による分析をとくに重視しています。研究会を通じて今までにない括りでのMDを行うことが、他社との差別化にもつながっています。

オンラインのメリットを生かし効率的に実のある商談へ

オンライン商談にメリットを感じている企業も多い。 画像はi-stock/SetsukoN

―商談についてはどのようにすすめていますか?

京本 当社は現状、オンラインでの商談を推進しています。最大の目的は感染防止であり移動も含めた感染リスクの低下につながります。現状、ベンダーさんにはコーディネーターとして来ていただき、メーカーさんのみがオンラインで参加するかたちですが、この先はベンダーさんもオンラインで参加するかたちに変更するように進めています。

―オンライン商談のメリットとデメリットをお聞かせください。

京本 当組合では1社10分という枠の中で商談を進めているのですが、資料のつくり込みがしっかりとしており商談の中身が濃くなった点、余計な雑談をせず、すぐに本題に入るといった点にメリットを感じているバイヤーが多いですね。また、メーカーさんからは移動がない分時間が確保しやすい、要点をまとめて伝えやすいといった意見が多くみられ、人数の制限がないため販促や開発など他部署のスタッフも参加できることをメリットと感じている企業もありました。

 ただ、デメリットもあります。バイヤーからするとオンライン商談は本題にすぐ入るため雑談がなく話がスムーズに進みますが、雑談から生まれるアイデアもあるのでそのあたりはさじ加減が難しい。

 また、コロナ以前より知っている担当者であれば商談もしやすいですが、コロナ禍以降で配属された担当者だと、関係構築ができていないため温度感や空気感がつかみづらいといった悩みを持つ方もいるようです。

 ただ、この悩みについては気持ちの問題という所もあるのではないでしょうか。ウィズコロナ、アフターコロナなどといわれますが、情報共有もしやすいオンラインでのやりとりは、時代に合ったニューノーマルとして、より一般化していくと考えています。

 リアルで会えない代替としてのオンライン商談、とネガティブにとらえているお取引先よりも、オンライン商談の手法を追求するお取引先とのほうがわれわれも前向きに商談に臨めます。今後はメーカーさん、ベンダーさんとともにオンライン商談のデメリットを少しずつつぶし、より効率的で実のある商談の在り方を追求していきたいと考えています。