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専門店の担当者に聞く、価格が高くても「職人に支持される工具」とは!?

工事現場
7maru/i-stock

プロの職人が従来から利用してきた工具などを扱う金物店では、専門性の高い品揃えを追及することで集客を図ってきた。ホームセンター(以下、HC)の売場づくりの参考とするため、今回は関東、中部、関西の金物店やプロショップなどにリサーチを行い、通常品より価格は高いが顧客からの支持が高い工具を紹介する。

長期的な視点で〝価値商品〞を育てる

 プロ需要の取り込みはHCにとっても重要なテーマとなって久しいが、市場環境を見るとプロの職人の数は年々少なくなる傾向にある。そうした中で、どの店でも広く扱われている一般的な商品を揃えるだけでは、売場効率や客単価を上げていく事は困難な状況だ。また、それだけでは顧客が魅力に感じにくい店になり、リピート層の増加につながっていかない。

 いわゆる〝ロイヤルカスタマー〞を増やすには、顧客から支持される本当に良い商品を探して売場を作ることを考える必要がある。プロ層は価格を重視する一方で、商品によって品質や付加価値に強くこだわり、多少の価格差があっても納得のいく商品を求める傾向が強い。

 では価格にとらわれず、職人が支持する工具や用品はどんなものなのだろうか。伝統的にプロ層を主要ターゲットとする金物店からの今回のヒアリングでは、いくつか具体的な商品があげられた。通常品と比べると値の張るものも含まれるが、そうした価値訴求型の商品を揃えることで、店舗自体の信頼性を高めたいという狙いも見えてくる。

 また短期的に販売数を追うだけでなく、顧客が付くまで長期的な視点で商品ラインアップを考えることで、他店との差別化を図るという戦略もあるようだ。売場効率だけを考えて、商品の改廃を行うだけでは、どの店舗も同じような売場となり、結果的に価格競争に陥ってしまう。

 高価にはなるが、顧客=職人から確かな支持を得ている商品群。これを例えば売場構成の2〜3%に加えて、売場の〝味付け〞として考えてみてはどうだろうか。

01=15mプロシリーズ コードリール(ハタヤリミテッド)

 「一般的な30mのコードリールと比べて、15mなのに20%程しか安くありませんからやや割高。でも職人さんの支持率が高い。作業時にコードリールを全部出してから使用しないとコードが熱を持つが、30mは出すのも巻くのも大変。15mほうが使いやすいようだ」「充電工具が大半を占める中で30mも必要ないと考える層が多い」「カラーが良いので、一般のお客さまも多く購入されます。アウトドアに使用されるみたいです」などの声があった。

02=ヘルメット ヴェンティー つや消しヘルメットシリーズ8種類(トーヨーセフティー)

 ワークシーンでよりファッションにこだわる層が増える中で、“カッコよさ”が人気の商品。機械工具や建築資材を扱う株式会社みのりかわPROHANDS(東京都福生市)の代表取締役社長・御法川尚氏は「通常品より2~3割程度高いと思いますが、マット調のカラーの人気が高い。ベンチレーションなど機能面でも優れています。工務店の社長さんなどが、同じヘルメットを社員さんで揃えることもあります」という。

03=オールインワンレーザー墨出器(ムラテックKDS)

 金物と工具の店 山崎(愛知県一宮市)では、三脚が別になった通常品も品揃えしているが、価格差がさほど大きくないこともあり9割ほどがこちらを選ぶという。同店店長の森田和弘氏は「三脚まで入る収納ケース付きは画期的。ケースもアルミ色ではなく、ブラックでカッコイイと評判です。作業がしやすいだけでなく、現場に三脚を忘れることがなくなったという声もあります」と話す。レーザー、三脚、受光器、充電池、乾電池、レーザーゴーグルを全て収納して持ち運びできるのが最大の特徴。

04=収納専用工具箱シリーズ(リングスター)

 「工具箱売場の単価からすると3割高いですが、グラインダーと丸鋸は、一般的にケースが付いていないので、本体購入時にこちらを一緒に購入される方が多い」「~専用というのがお客さまに伝わりやすいです。ミリタリーグリーンやデザートカラーなど、色も職人さんの心に刺さるみたいです」などの声が寄せられた。丸鋸やグラインダーをぴったり収納できる専用工具箱だ。

05=仮枠ハンマー自然塗料柄(カクイ製作所)

 「まわりの職人が持っていないような道具を求めるこだわり層に人気。通常品の2倍程度の価格で決して安い商品ではありませんが、木材の天然色を生かした柄の処理は1本1本違いがあり、仕事をしていても楽しいと思います」と特徴を語る秀久(埼玉県所沢市)の阿部瞭店長。同店は電動工具のオリジナルペイント商品を販売するなど、他にはない商品を取り揃えて固定層をつかんでいる。

06=BPRS兼用脚立シリーズ(アルインコ)

 同じ機能の兼用脚立より、価格が20~25% 程度高いブラック塗装の脚立。店舗の声としては「滑り止めまで付いて安全性にも優れているので、結果的に安いと思います」「色に特徴があり、仲間で持っている人を見て買いに来たお客さんもいました」「脚立といえばアルミ色というイメージでしたが、これが出てから職人さんだけではなく、アパレルや飲食業の方にも購入していただいています。お洒落な空間に色が合うみたいです」など。

07=BXハッカー(MIKI)

 鉄筋を結束線で結ぶ作業に使用される専用道具。「通常のハッカーの価格と比べて5倍から6倍程度。それでも職人さんから指名買いされる商品です」などの声が。高い品質とブランド力が人気の秘密だ。

08=マクトルⅢシリーズ(ツボ万)

 コンクリート下地の塗膜剥がしなどにディスクグラインダーに装着して使用される道具。株式会社村松商店(愛知県名古屋市)の代表取締役・村松潤一郎氏は「価格は通常品と比較して4倍程度と高いですが、お客さまはそれ以上に作業のスピードがアップするということで選ぶケースが多いですね」という。

09=金切鋏 全28種類(盛光)

 「フック式ケース入りになり売場が映えるようになりました。鋏を購入したお客さまは、必ず砥ぎを依頼するので、このケースに入れて出してくれたらという考えで作成したそうです。以前は、刃先が危ないので新聞紙に巻いて砥ぎ屋さんに送っていました。発送するまで店の隅に置いといたらゴミかと間違え、捨てそうになった事がありましたが、もう今ではそんな事ありません」などの声が。

10=刃の黒幕(シャプトン)

 「砥石の中でも、指名買いですね。物によっては、入荷まで少し時間のかかるものも」「鉋刃や鑿を研ぐのはもちろんですが、プロの料理人さんからも問い合わせが多い商品です」などの声が。粗さごとに色分けされており、目的に合わせてさまざまなタイプがラインアップされたロングセラーブランド。

11=フローリング寄せハンマー 床とんとん(キャプテンツール)

 「口コミから売れる事もあるけど、最近若い職人さんがユーチューブで床とんとんを見て買いに来たな、と思うことも」「月に1個か2個しか売れないけど、これは30年くらい前からあるよ。これを一回使った人は、またこれを買いにくるよ。めったな事では壊れないのでずっと使っている人が多いね。特に顧客が良いと言っているのは、フローリングの張り始めと張り終わりが出来るので重宝しているみたいだね」という声が寄せられた。

12=ルータービット(大見工業)

 木材などの穴掘り、溝掘り、切り抜き加工などに使用される。「安い商品も多数あるが、仕上がりにこだわるお客さまにはこれを薦めています」「建具・木工職人に売るならこれが一番。従来品と比較して作業スピードも速く、よい仕事をすると評判が高い」など、品質を評価する声が多かっ