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チーズ市場、コロナ禍で家庭内消費が拡大!調理用途チーズを中心に需要増

カテゴリーフォーカス

チーズ市場は、新型コロナウイルス感染拡大による内食化の動きを追い風に、家庭内の消費量を大きく伸ばした。在宅勤務がある程度定着したことで、今後も需要は高止まりで推移していくことが予想されている。

国内総消費量は5年連続で過去最高を更新

 農林水産省の「チーズの需給表」によると、2019年度のチーズの国内総消費量は35万8229トンで対前年度比1.5%増と5年連続で過去最高を更新した。カテゴリー別では、プロセスチーズの消費量が14万511トンで同1.5%減、ナチュラルチーズが21万7718トンで同3.5%増となった。

i-stock/istetiana

 KSP-POSのプロセスチーズの期間通算(2019年10月~20年9月)金額PIは、8597円で対前年同期比6.2%増。2月まで前年割れが続いていたが、3月からプラスに転じ、4月から8月まで2ケタ増となっている。

 ここ数年は家飲みや内食志向による需要に支えられ、家庭用チーズは堅調に推移しており、新型コロナウイルス感染拡大でさらに需要が拡大した。外出自粛で最初に売れ行きが好調となったのが、調理用途のチーズで、シュレッドチーズやパルメザンチーズ、スライスチーズなど。とくにパスタやグラタンにかけることの多いパルメザンチーズは大きく伸長した。

 自粛期間が長引くなか、5月頃から伸びはじめたのが、おやつやおつまみとして食べられている直食系のベビーチーズやさけるチーズ、6Pチーズ、カマンベールチーズなど。また、お菓子づくりに使われるクリームチーズも好調だ。

 一方、低糖質のスイーツとして女性から支持されているスイーツ系チーズは、ここ数年、市場は停滞ぎみだったが、今年3月に森永乳業が「クラフト もちもちきなこ6P 黒みつ仕立て」を発売。もち粉、きなこ、黒みつという和の要素を組み合わせたデザートチーズが話題となり、売場を盛り上げた。

 この秋は、雪印メグミルクからデザートチーズのおいしさに栄養をプラスした商品を発売。カルシウムを強化した「毎日骨太」ブランドと、鉄分強化の「プルーンFe」ブランドでチーズケーキを投入することで、新たなファンを取り込むねらいだ。

ナチュラルチーズは4月がピーク金額PIは対前年比14.7%増

 ナチュラルチーズのKSP-POSの期間通算(2019年10月~20年9月)金額PIは、7121円で対前年同期比14%増となった。プロセスチーズ同様に3月から金額PIは高まりはじめ、4月は同37.7%増、5月は同42.7%増と大きく伸長した。

 家飲みでのおつまみなどの食シーンの拡大で需要を伸ばしているカマンベールチーズ。明治では、ラインアップを広げるほか、新たな食シーン提案を継続的に続けている。

 一方、もっちりとした食感が特徴のモッツァレラは、カプレーゼが定番の食べ方だが、森永乳業では昨年、加熱するとよくのびるという特性を生かした食べ方を提案し、需要を伸ばした。この秋には明治が、「明治北海道十勝」ブランドで初のフレッシュモッツァレラ市場に参入。シンプルにモッツァレラのおいしさを楽しんでもらうために、「ちぎりモッツァレラ」を提案している。日常的な食べ方提案で、モッツァレラ市場はさらに活性化することは間違いなさそうだ。

宝幸:スモーク飾り切り提案やフォンデュでファミリー層を取り込む施策を強化

宝幸では常温タイプのスモークチーズ新商品発売に加え、基幹商品の「ロルフ スモークチーズ」による飾り切り提案を実施。また、秋冬期に人気の高いチーズフォンデュのリニューアルを行うことで、ファミリー層に訴求する。

内食需要の拡大でスモークチーズも伸長

 1946年創業の宝幸は、乳製品をはじめ、冷凍食品や缶詰、レトルト食品、フリーズドライ製品の製造・加工および販売を行う総合メーカーだ。同社の中核である乳製品事業は「ロルフ」ブランドの名で知られ、ベビーチーズ、スモークチーズ、シュレッドチーズを軸に、さまざまなタイプのチーズ製品を展開している。

 2020年3月以降、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、学校休校やリモートワークの推進など、生活スタイルが激変。それまでと比べ時間に余裕ができたことで、手をかけた料理をつくったり、子供と一緒に調理するといったトレンドが生まれた。また、緊急事態宣言中は外食業の多くが休業や時短営業となったことから、家飲み需要が加速。家で酒類とともにおつまみを用意し楽しむ人も増え、料理用のシュレッドからおつまみタイプまで、チーズの市場も好調に推移した。

 宝幸のロルフブランドが最も力を入れているのが、スモークチーズカテゴリーだ。スモークチーズのマーケットは、近年、横ばい傾向にあったが、ほかのチーズカテゴリー同様、3月以降に需要が一気に拡大した。

 スモークチーズの需要期は、ビール類の売上が伸びる夏場とボジョレー解禁からクリスマス・年末年始にかけてだが、今期は春先から一気に数字が伸び、緊急事態宣言解除後も伸長。20年7月~9月のスモークチーズ売上数は前年対比17%増と好調に推移した。

 宝幸の「ロルフ スモークチーズ」はチェダーチーズを100%使用したロングセラー商品だ。120g、160gの2種をラインアップし、チェダーチーズならではのコクと、桜のチップでじっくりと燻製した豊かな薫りが楽しめる、同カテゴリーを代表するブランドとなっている。

 宝幸では今期、スモークチーズの飾り切りを提案。「ロルフ スモークチーズ」はウインナーに似た形状をしているため、動物の形に切るといったアイデアも出やすい。同社ではスモークチーズを用いた犬のつくり方を紹介するPOPなども用意し、ファミリー層に向けて訴求する。

チーズフォンデュを使ったアレンジレシピも紹介

 今期は常温タイプのスモークチーズ「ロルフ 燻製チーズ」を発売。チェダーチーズを使用し、常温ながらしっかりとした味わいに仕上げた。黒を基調とした高級感のあるパッケージは、ビールのアイコンも入れたことでおつまみとして想起しやすい。常温商品のためアウト展開もしやすく、酒類売場で一緒に陳列するなどクロスMDにも適した商品となっている。

 もう一方で、力を入れていくのが、チーズフォンデュの提案だ。「4種のチーズを楽しむチーズフォンデュ」は今秋、商品をリニューアル。今年はゴーダ、チェダー、パルメザン、そして、昨年までのエメンタールから近年人気の高いラクレットへと変更した。また、パッケージもスイスの山々と草原をイメージしたデザインとなっており、洋日配バイヤーからも好評だという。

 「4種のチーズを楽しむチーズフォンデュ」は、これまで50代以上のユーザーが中心だったが、近年のチーズダッカルビやパネチキンの流行によりチーズ料理を自宅で食べるようになった30、40代も新たなターゲットとして取り入れたいという。チーズフォンデュは基本的に具材をつけて食べるスタイルだが、ソース代わりに野菜や魚、肉類などにかけて使うこともできる。

 外出自粛に伴うまとめ買いにより、生活者の家庭内在庫をどう回転させるかが食品スーパーの近々の悩みとなっているが、チーズフォンデュは汎用性が高く、同社のウェブサイトでは「4種のチーズを楽しむチーズフォンデュ」を使ったオリジナルレシピも紹介されている。宝幸ではスモークチーズの食べ方提案やハレの日の食卓にもピッタリのフォンデュ提案で、新規顧客の獲得に努めていきたいとしている。

明治:伸長が期待できるフレッシュモッツァレラ市場に「明治北海道十勝」ブランドで新参入

今年の上期はナチュラルチーズを中心に好調だった明治。下期に向けては「明治北海道十勝」ブランド初のフレッシュモッツァレラを新投入。間口と奥行きを広げ、市場の活性化を図っていく。

「スマートチーズ」ファンを広げる「スマチー部」を開設

 コロナ禍における巣ごもり需要で、ナチュラルチーズを中心に好調に推移しており、シュレッドチーズやパルメザンチーズ、カマンベールチーズなどが大きく伸長した。カマンベールチーズに関しては、軽度認知障害の高齢者においてカマンベールチーズの摂取が認知機能との関連報告されているBDNF(脳由来神経栄養因子)を上昇されることを確認。エビデンスを得ることができたことから、昨年11月にセミナーおよびプレスリリースにて発信。さらに6月には新聞広告を投下。9月にも地方紙にも広げて新聞広告を投下した。カマンベールチーズの機能訴求で市場全体の活性化につなげている。

 また「明治北海道十勝 スマートチーズ」ではロイヤルユーザーを広げていくために、アンバサダープログラム「スマチー部」を開設。おいしい食べ方やこだわりのレシピなどを広めてくれる人を応援するプログラム。キャンペーンやイベントなどでコミュニケーションを図っていく。

 この秋は、十勝産ナチュラルチーズをスティック状に切り出した「明治北海道十勝ボーノ切り出し生チーズ」を2本入りにリニューアル。生チーズのおいしさや開封しやすい帽子切りタイプのフィルム包装はそのままに、より手に取りやすい容量と価格に変更した。家飲み需要が高まり、ナチュラルチーズのトライアルが進むなか、本格的な風味や値頃感を訴求することで、「ボーノ」ファンをさらに拡大していくのが目的だ。

簡単でおいしい!「ちぎりモッツァレラ」を提案

 手軽に家庭でチーズを楽しむ人が増えていることで、フレッシュモッツァレラ市場は順調に右肩上がりを続けている。ただ、まだまだ間口・奥行きともに狭く、拡大する余地があることから、明治では9月28日に「明治北海道十勝生モッツァレラ」を北海道・関東(甲信越含む)・関西エリアで発売。北海道産の生乳のおいしさを最大限に引き出す製造方法でミルク感にこだわった。保存液にホエイを入れることでミルク風味がアップ。さらに鮮度を保つために、遮光性に優れたアルミ蒸着フィルムを採用した。

 モッツァレラチーズといえば「カプレーゼ」が定番だが、同社ではもっと日常的に食べてもらうための新しい食べ方「ちぎりモッツァレラ」を提案。手でちぎることによって、不揃いになる繊維にオリーブオイルやドレッシングが絡み、モッツァレラの食感と風味が引き立つ。

 店頭では「生うま!」をキーワードに、生だからこそのおいしさや食べ方をPOPなどで訴求する。また、お笑い芸人のアンガールズを起用したWEB動画を配信。生のおいしさや鮮度を保持するパッケージの特長、食べ方など、商品理解が深まるWEB動画となっている。また、11月にはローカル番組で60秒のインフォマーシャルを予定。WEBメディアを活用したコミュニケーションで認知拡大を図っていく。来春以降順次展開エリアを拡大していく予定だ。

森永乳業:主力の調理系チーズが好調で上期は市場以上の伸び

今年の上期は巣ごもり需要により、チーズは拡大したが、とくに調理系のチーズが好調で、調理系チーズを多くラインアップする森永乳業では市場以上の伸びとなった。下期に向けても継続して調理で使用を促進するプロモーションを展開する。

春の新商品は計画以上の伸びで推移

 森永乳業では、この春にクリームチーズとチェダーチーズがマーブル状に混ざり合う「フィラデルフィア The Double 6P(クリームチーズ&チェダーチーズ)」を新発売。クリームチーズ特有の滑らかな食感と、チェダーチーズの芳醇でコクのある香りが楽しめる。ほかにはない商品として計画以上の売上となった。

 また、「和」を感じる新食感チーズデザートの「クラフト もちもちきなこ6P -黒みつ仕立て-」を3月に新発売。クリームチーズにもち粉を加え、弾力のあるもちもち食感を実現。さらにきなこと黒みつを使用することで、「和」を感じられるチーズデザートに仕上げた。チーズ売場に「和」をうたったものが少なかったため、同商品の投入で、新たなユーザーをチーズ売場に誘引することができたと流通からも好評となっている。

 また、この春は、パスタ需要が拡大したことから、パスタのトッピングとして使われることの多いパルメザンチーズが好調に推移した。同社では、カルシウムを効率よく摂れるパルメザンチーズで「お手軽カル足しレシピ」を提案。パスタだけではなく、サラダやトースト、カレー、味噌汁など、いつもの食事にパルメザンチーズをかけることで、不足しがちなカルシウムを補うことを推奨している。パルメザンチーズ専用什器を用意して、さまざまな売場でアウト展開し、露出を図っている。

簡単でおいしいモッツァレラレシピを提案

 外出自粛やテレワークの普及により、家庭での調理機会が増えており、とくにすべての年代の男性と20~40代の女性の調理機会が増えているようだ。今回改めて料理を始めた人に継続して料理してもらうため、下期に向けては手づくり需要を高める提案を行う。

 ひとつは、モッツァレラチーズを使った料理提案。モッツァレラは加熱するとのびるという特徴があり、昨年は鍋にモッツァレラを入れて、想像以上に伸びることを訴求したが、今年はそれに加え、家族でおいしく楽しむことを主眼においた提案を行う。豪華でおいしそうなのに簡単につくれるレシピを提案する。10月下旬からテレビCMを投下していく。

 店頭では、昨年好評だったカゴメとコラボした「のび~るモッツァレラのトマト鍋」を10月末から提案。トマトのうま味とモッツァレラのミルク感がよく合う洋風鍋で、POPなどの販促物を用意して、購買を促進する。

 さらに、巣ごもり生活において、手づくりでお菓子をつくる人が多かったことから、ハロウィン、クリスマス、バレンタインのイベント前に「チーズケーキをつくってみた」というテーマでWEB動画を配信。クリームチーズを使って簡単にチーズケーキがつくれることを主婦目線で、タレントのギャル曽根さんを起用して動画を配信する。日常使いに加え、ハレの日のレシピ提案で、引き続き、チーズ需要の拡大を図っていく。

雪印メグミルク:発売66周年を記念して「幸せのハート6P」プロモーションを展開

今年で発売66周年を迎えた雪印メグミルクの「6Pチーズ」は、長年、多くの人から愛されているブランドだ。この秋は発売66周年を記念した「幸せのハート6P」プロモーションを投入、Twitterでのキャンペーンを行い、話題の最大化を図る。

昨年好評の「とろッピ~」提案CMやデジタル施策で露出をアップ

 1954年発売の雪印メグミルクの「6Pチーズ」。おやつ・おつまみなどの直食のみならず、幅広い食べ方が広がっている。ここ数年は「6Pチーズ」を使った「つくロッピー」や「焼きロッピー」などの新しい食べ方を提案。

 とくに電子レンジで10秒チンするだけでとろっととける、新しい食感の「とろッピ~」のつくり方を訴求したテレビCMは好評で、2019年11月前期の作品別CM好感度No.1*に選ばれた。10秒のカウントダウンと音楽に合わせて、電子レンジの中でおいしそうにとろけていく様子と、完成を待ちきれない子供の不思議なダンスが女性層から支持された。

 この秋も、同テレビCMを10月末から投下していくほか、発売66周年を記念して「幸せのハート6P」ラベルを数量限定で生産。開けて初めて気づく、小さな変化をゲーム性として仕掛けて、思わず探したくなる気持ちを醸成させて購買意欲を高める。

 さらに11月11日のチーズの日から、「幸せのハート6P」ラベルを活用したTwitterキャンペーンを実施。ハート6Pラベルを撮影してTwitterに投稿してもらうもので、昨年大好評だった大きめの「とろッピ~」クッションを66名にプレゼントする。昨年のキャンペーンは過去10年で最も応募数が多く、大好評だったことから今年もテレビCMやデジタル広告で告知することで、露出を高め、話題の最大化を図る。

おいしさと栄養を強化したデザートチーズ2品を新発売

 この春はおつまみ需要に対応した2品を新発売。桜チップでじっくり燻製することで、スモークの香り高く仕立てた「なめらかスモークチーズ」と、醤油を焦がすことで香ばしい香りが引き立つ「焦がし醤油 ベビーチーズ」を発売した。コロナ禍で内食化、家飲みが活発だったことから全体的に好調だったが、とくに和風テイストの「焦がし醤油 ベビーチーズ」は反響が大きかった。

 この秋は、デザートチーズのおいしさに加え、栄養をプラスした「毎日骨太 2 個で1日分のカルシウム チーズケーキ ヨーグルト味」と「プルーンFe 2個で1日分の鉄分 チーズケーキ」を発売した。デザートチーズは市場が成熟化しており、味や価格で差別化が難しくなっている。そこで同社では、カルシウムを強化した「毎日骨太」ブランドと、鉄分強化で女性を中心に人気の「プルーンFe」ブランドを冠したデザートチーズの投入で差別化を図り、新たなファンを取り込んでいく。

 また昨年の春に、スモークの香りが手軽に楽しめる「スモーク香る スライス」を使った、おつまみレシピをTwitterに投稿するキャンペーンを実施。数多くのレシピが寄せられ、そのなかから優秀な4レシピをパッケージで紹介。サバの缶詰や焼きおにぎりに載せるなど、どれもスモークの香りを生かしたマネしたくなるレシピとなっている。テレビCMやSNSを活用したキャンペーンでユーザーとの接点を増やし、ファンの育成を図っている。

*CM総合研究所調べ。調査期間2019年10月20日〜11月4日