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コロナが引き金 小売の主流になるデジタル販促の最前線をRetailAI永田洋幸社長が語る

トライアルホールディングス(福岡県/亀田晃一社長:以下、トライアル)傘下でAI開発を手掛けるRetailA(I 東京都/永田洋幸社長)。トライアルが近年出店を進める、AIカメラやスマートショッピングカートといった最新ツールを導入し買物体験の向上を図る「スマートストア」の屋台骨を支える企業だ。小売ビジネスのデジタル化の先頭を走る同社の永田社長に、これからのマーケティング・販促の在り方、そしてリアル店舗が持つべき価値について聞いた。

蓄積してきた過去のデータだけでは不十分な時代に

──新型コロナウイルス(以下、コロナ)によって消費者の購買行動はどのように変化していると感じますか。

ながた・ひろゆき●1982年福岡県生まれ。米コロラド州立大学を経て、2009年中国・北京にてリテール企業向けコンサルティング会社、11年米シリコンバレーにてビッグデータ分析会社を起業。15年トライアルグループのCVCに従事し、シード投資や経営支援を実施。18年より現職。国立大学法人九州大学工学部非常勤講師。

永田 コロナ禍での「ニューノーマル」が広く定着し、それに伴い消費行動も大きく変化しているのは事実でしょう。買物頻度を減らしてまとめ買いする傾向が強まる一方、店舗での滞在時間を最低限にとどめようと、むしろ買物頻度を増やし、生活必需品をこまめに買い足すお客さまも一定数いるようです。

 トライアルの店舗で言えば、他人との接触回避や買物時間短縮へのニーズが高まるなか、セルフレジ機能付きショッピングカート「スマートショッピングカート」の利用が明らかに増えています。導入店舗での利用率は、コロナ前でも一番高い店で40%を超える水準でしたが、コロナ禍では全店でおよそ5ポイント程度上昇しています。

 購買データを見てみると、売れ筋も若干変化しているようです。たとえば酒類の売上が伸びていて、これはコロナ禍での外食控えによって家飲みの機会が増えたことが一因だと見ています。また、健康志向の高まりからか、ビールでも「糖質オフ」を打ち出した商品の売れ行きが好調です。

──そうした購買行動の変化は、マーケティングや販促活動にどのような影響を与えていますか。

永田 不確実性のもとで日常生活を送るというニューノーマルの世界での事象に対応するには、コロナ前に蓄積されたデータは材料として不十分です。日々のデータをすばやく収集し、直近1~2週間程度の小さなデータセットをもとに仮説を組み立てることが重要です。そのうえで現場を巻き込みながらPDCAサイクルを迅速に回すことを繰り返す、よりアジャイル(俊敏)な事業運営が求められると思います。

 また、感染拡大防止の観点から、チラシ特売を実施しづらい状況にあります。お客さまと商品をより高い精度でマッチングさせ、売上増加につなげるためには、チラシ特売に代わる販促手段が必要でしょう。

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