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「地場強化」で各地のニーズに応える コロナ禍で消費者の購買行動が変化

MDエディション

マックスバリュ西日本(広島県/平尾健一社長)は、地域密着型の品揃えを充実している。「地場強化」を掲げ、各地で異なるニーズに応えることで集客、また競合店との差別化を図る。一方、コロナ禍が続くなか、今後も料理に関心を持つ人が増えると予測しており、見た目においしさを訴求する商品も積極的に取り入れる方針だ。

健康系油の売上高が減少

─2021年2月期の上期を振り返ってください。

マックスバリュ西日本グロサリー・リカー・ノンフーズ商品部グロサリー・リカーグループ 調味調材担当 バイヤー 武岡秀和氏

武岡 今期に入ってすぐ新型コロナウイルスの感染が拡大したのに伴い、商品の動きは例年とはまったく異なった傾向になりました。グロサリー・リカー・ノンフーズ商品部の売上高は対前期比2ケタ増の水準で推移、総じて好調だったのですが、カテゴリーによっては急に鈍化、反対に加速するなど予想外の動き方をするものもあり戸惑いました。

 とくに消費動向が大きく変化したのは、緊急事態宣言や休校期間中です。

 たとえばリカーは近年、アルコール離れが進んでおりダウントレンドでしたが、家で飲まれるシーンが増えたことで需要が拡大。ここ数年、横ばいが続いていた菓子は、子供が家にいることでよく売れました。私が担当する調味料も同様で、料理する人が急増したことで実績を大きく伸ばしました。

─近年の消費者ニーズは「簡便」「時短」「健康」といったキーワードが主流でしたが、それらは変化したのでしょうか。

コロナ禍のなか、以前はよく売れたアマニ油、えごま油の動きが鈍化。反面キャノーラ油とごま油が好調に推移する

武岡 お客さまの購買行動が大きく変わったという印象です。これまで「簡便」「時短」は外せない切り口でしたが、余裕ができたことで、ゆっくり時間をかけ、食べたいものを自分で料理する人が増えました。

 「健康」も従来とは違う傾向が見られます。数年来、食用油のうちアマニ油、えごま油など健康系油はよく売れ、一時は品切れするほどの人気でした。しかしコロナ禍の中では鈍化、さらに売上高も減少しています。反面、好調だったのはキャノーラ油とごま油で、直近実績でも対前期比50%増とカテゴリーをけん引。生活に必要なものから優先して買い物する傾向が強いように思います。

─ ではコロナ禍のもと、消費者ニーズを象徴するキーワードとは。

感染拡大が始まった当初、レトルトカレーが売れたがすぐに鈍化。自分で料理したほうが安いため、コストパフォーマンスの高いカレールーが売れ始めた

武岡 ひとつは「コストパフォーマンス」。感染が拡大し始めた時、レトルトカレーが売れましたが、しばらくすると売れなくなりました。自分でつくったほうが安上がりであるため、カレーのルーのほうが動き始めたというのはひとつの例です。

 「つくる」もトレンドを表すキーワードです。自分、また家族のため時間をかけ料理する人は今後も増えるのではないかと見ています。

 

「地場強化」を推進

─今期の秋冬商戦に向けては、いかなる戦略で臨みますか。

「地場強化」をテーマに各地で異なるニーズに応える。しょうゆや味噌など調味料は市町村単位で異なる品揃えをめざす

武岡 現在、全社的に「地場強化」をテーマに掲げた商品政策を徹底しており、下期でも引き続き、取り組みます。当社は中国、四国、関西と幅広いエリアで事業展開しています。そのなか各地で異なる味、商品へのニーズにきめ細かく応えて、お客さまの満足度の向上、また競合店との差別化も図っていきたいです。

 各県で支持される商品を取り入れるなか、各エリアをさらに細かく分けた品揃えもしていきます。たとえばしょうゆや味噌、ソースといった調味料は、市町村単位で異なるニーズに応えます。

─地場強化は上期からの方針とのことですが、現状、どういった取り組みがありますか。

武岡 菓子では、兵庫県のかりんとうが一例。地域で人気のある特定メーカーの商品を集めてゴンドラ1本を使って展開しました。山口県にある店舗でも同様に、ある練り物メーカーの商品を充実した売場をつくったところ好評です。下期に向け、さらに各地のニーズやお客さまの声に耳を傾け、さらに喜んでいただける品揃えを実現します。

─一方、コロナ禍で変化した消費者ニーズに向けての施策も教えてください。

武岡 前述の「つくる」というキーワードは重視してます。今後も料理を始めたいという方は多いと予想しています。これに対し、料理の初心者の方にも興味を持って見てもらえるような商品を増やしていきます。

 たとえばパッケージにできあがりの料理がおいしそうに表現された商品のほか、有名店の味を再現した商品も扱います。これから料理を始めようとする人は、失敗したくないという気持ちがあるはず。そんな方が商品を選びやすい品揃えを工夫します。

─もうひとつのキーワードは「コストパフォーマンス」です。

武岡 コロナ禍のもとではチラシを見て来店するお客さまは減っています。そのためE D L P(エブリデー・ロープライス)により、低価格を訴求する手法を強めます。価格志向型のディスカウントストア、またドラッグストアもますます脅威になるでしょう。

商談の様子も様変わり

─下期、注目している新商品はありますか。

武岡 まず日清食品のインスタント麺「日清これ絶対うまいやつ!」。縮小カテゴリーだった袋麺ですがコロナ禍の影響で大きく伸びました。世帯人数が減少するなか、従来の5食ではなく、3食とした点もおもしろい。味は「背脂醤油」「濃厚味噌」「豚骨醤油」の3種類があり、若者層をねらった濃い目の味もよいと感じました。

 調味料では、ミツカンの「だしまろぽん」。醤油を控えめにして、かつお・昆布・ほたてのだしを使ったまろやかなポン酢。あらゆる年代にも好まれる味で、だし入りポン酢というカテゴリーを確立できるのではと見ています。

─ほかにもありますか。

武岡 キリンビールの「麹レモンサワー」もユニークで、レモンサワーブームが続くなかでの新商品とあり関心を持ちました。麹をレモンと混ぜ合わすことで果実の旨みが引き立っていると感じました。

 菓子ではグリコの「スモーキープリッツ燻製ベーコン味」と「スモーキープリッツ燻製チーズ味」。家で飲むシーンが増えるなか、燻製という新しい風味が斬新だと思います。─さてコロナ禍にあっては商談のスタイルも様変わりしているのでしょうか。武岡 4月からはすべてオンラインを通じて行っています。実は、当社では昨年あたりから社内でリモートによる会議や情報交換を取り入れており、今回も大きな問題もなく比較的スムーズに移行することができました。画面を見て、同じ資料を共有することもでき、直接、会って話をするよりわかりやすくなっています。

 また棚割りを決めるのも、10社程度の担当者が同時に話し合うことも可能で、今後はこの手法が定着しそうです。

─今年は流通業にとって、大きな変わり目の年といえそうです。

武岡 さらに今後は競争も激化すると見られます。そのなか当社では、今後も地域、お客さまの要望に応えられる品揃え、売場づくりを通じ、支持いただけるよう努力を続ける考えです。