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「冷総菜の顔」のポテトサラダは継続して総力をあげた育成を

サラダの定番メニューであるポテトサラダは、多くの食品スーパー(SM)が冷総菜の中でとくに注力している商品のひとつだ。そこで今回、首都圏の有力SM8社が販売している17品のポテトサラダを試食し、そこから見えてきたこと、さらなる可能性について解説する。

消費者がポテトサラダに求めるもの

 ポテトサラダは子供から大人まで、幅広い世代から人気があり、食卓に上る回数も多い。一方で、家庭で一から手づくりするとなると、ジャガイモを茹でる、皮をむく、つぶす、他の材料を切ってあえる、など工数が多く、ざっと45分以上はかかってしまう。副菜の位置づけでこれだけの手間と時間をかけるのはなかなか大変なことであり、だからこそSMの総菜売場でおいしいポテトサラダを調達したいのだ。実際に日本惣菜協会「2022年版惣菜白書」を見てみると、「最近半年間での購入頻度 上位品目」で、ポテトサラダは10位にランクインしている。ゆえにSM側からすると、購入頻度が高く粗利益率も高い「冷総菜の顔」といえる商品となる。

首都圏の有力SM8社が販売している17品のポテトサラダを試食し、そこから見えてきたこと、さらなる可能性について解説する。(i-stock/KPS)

 このような位置づけの商品であるからこそ、基本のポテトサラダは、子供から大人まで誰が食べても「おいしい」と思える商品設計を心掛けたい。それは、ジャガイモ自体のホクホク感、うまみが前面に出ていること、さらにほかの材料が彩りよく入り、マヨネーズがそれらすべての味を調えることで生まれる、絶妙なおいしさだ。

主力商品ゆえ定期的に見直しを

 このように年間を通じて売れ続ける商品というのは、そのクオリティを維持することが難しい。とくにポテトサラダは消費者が頻繁に食べるメニューだからこそ、ちょっとした味のブレなどが敏感に感じ取られる可能性が高い。さらに、気温により消費者の味の感じ方も微妙に異なってくる。

 また、青果物主体の商品設計であるため、季節により原料の状態も変わる。なかでも主力材料であるジャガイモの保管方法には気を配りたい。1年程度原料保管するケースもあるジャガイモは、0℃以下の冬眠状態を維持しつつ、製造するタイミングに合わせて、適した状態で使用することが肝要だ。この管理を怠ると、ジャガイモ本来のうまみが出ず、甘みや食感も変わってしまう。最低でも季節ごとの見直しは必要と思われる。

 さて、昨今の総菜開発担当がおかれている環境はなかなか大変な状況であるといえる。まずあらゆる原料が値上がりする中、あらゆる商品の規格変更、値上げが連続し、その改廃業務に忙殺されている。かつ、ポテトサラダは自社プロセスセンターによる内製化が進んでいる商品でもあるため、従来のアウトパック品では専門メーカーの目利きによって担保されていたクオリティの維持を、バイヤーがすべて担わなければならない。しかしながら、目の前の業務に忙殺されると、気がつかないうちに徐々にブレが発生し品位が低下する、ということも起きやすい商品であることをぜひ理解してほしい。

バリエーションがさらに客層を拡大する

 今回は17品のポテトサラダについて、基本のポテトサラダと、各社こだわりのポテトサラダの2種に分けて試食を行った。どの商品も、原料の価格高騰をカバーするため生産効率を上げ、そのなかで味を維持しようとする姿勢が強く伝わった。また、基本商品にプラスアルファしてのバリエーションの広げ方、1人前から多人数までのSKUの持ち方などから、さらに多くの消費者ニーズに応えたい、という意欲が感じられた。

 基本のポテトサラダの中で秀逸だと感じたのは、マルエツの「北海道産男爵のポテトサラダ」(写真❶:本体価格198円)である。男爵いものほっくりとした食感やいも自体のうまみをうまく生かしていた。少し甘めの味わいも、子供から大人まで喜ばれるだろう。マミープラスの「男爵芋のゴロ旨ポテトサラダ」(写真❿:同198円)とサミットの「北海道男爵ごろっとポテトサラダ」(写真❾:同198円)も同様に丁寧につくり込んでいることがうかがえた。ジャガイモ以外の材料もきちんと加熱加工されており、いものホクホク感があり、マヨネーズの加減も程よく、味のなじみもよかった。

 こだわり商品で興味深いのはベルクの季節商品「春旬ポテトサラダ」(写真❷:同299円)だ。ポテトサラダにおいては扱いの難しい、水分の多い新ジャガイモを使っているにもかかわらず、野菜のうまみが感じられる一品に仕立てている。また、サミットの「だし香る!オニオンスライスポテトサラダ」(写真❽:同198円)も秀逸だ。かつお節のふわっとした食感が残っており、玉ねぎの水分はしっかりと切られ、シャキッと仕上がっていた。各社のこだわり商品にはどれもこうした工夫が見られた。

※価格は全て本体価格
❶マルエツ「北海道産男爵のポテトサラダ」(198円)
❷ベルク「春旬ポテトサラダ」(299円)
❸ベルク「芋の国から’ 22 S」(137円)
❹マルエツ「勝手にしやがれ!ポテトサラダ」(298円)
❺マルエツ「7種国産野菜のポテトサラダ」(298円)
❻西友「野菜のうま味が深いポテトサラダ 中」(198円)
❼サミット「8種の野菜を食べるポテトサラダ」(198円)
❽サミット「だし香る!オニオンスライスポテトサラダ」(198円)
❾サミット「北海道男爵ごろっとポテトサラダ」(198円)
※価格は全て本体価格
➓マミープラス「(大)男爵芋のゴロ旨ポテトサラダ」(198円)
⓫マミープラス「(小)玉子ポテマカサラダ」(158円)
⓬ヤオコー「厚切りベーコンと黒胡椒のポテトサラダS」(198円)
⓭ヤオコー「自社工場発王道ポテトサラダM」(198円)
⓮オーケー「ポテトサラダ」(179円)
⓯ライフ「生ハムとナッツのチーズポテトサラダ」(398円)
⓰ライフ「北海道産じゃが芋のポテトサラダ」(198円)
⓱ライフ「8種野菜のポテトサラダ(大)」(298円)

 一方で、実際に想定している仕上がりとブレがあるのではないか、と感じられる商品があったことも触れておきたい。シンプルな味わいで喫食機会が多い商品だからこそ、少しの変化にも気づきやすい商品であることをぜひ心に留めてほしい。

たかがポテトサラダされどポテトサラダ

 以上に述べたとおり、ポテトサラダは食卓の上では登場頻度の高い副菜であり、SMにとっては「冷総菜の顔」である。まずは基本のポテトサラダについて、社内で定期的に試食や改廃を重ねながらブレのない高いクオリティを保っていくことが大切だ。基本のポテトサラダのクオリティが保たれるからこそ、おつまみ系や旬を生かしたポテトサラダなど、アッパーな商品にも消費者は期待を寄せ、手を伸ばす。

 ポテトサラダのような主力商品の内製化が進むと、日々のプロセスセンターにおける品位の管理、バイヤーの定期的な商品改廃の取り組みがますます重要になってくる。ぜひ、商品部、販売部が一体となり、常に商品に目を向け、品位を維持、進化させる体制をとることで、ポテトサラダのみならずSM総菜全体の拡販、成長に期待したい。