ファミリーマート(東京都/澤田貴司社長)の商品の訴求方法が大きく変わりつつある。同社は19年2月期にマーケティング専門の部署を設置して以降、商品を戦略的に消費者にアピールすることで、総菜シリーズ「お母さん食堂」のヒットなどを実現している。次は夏の看板商品の認知度を向上させるべく動き出している。
「何を売りたいかが伝わる売場」をめざす
フラッペ パピ ポピ ぺ 自分でモミモミ フラッペ ポピ ポピ ぺ ミルクだ ジョー。
この独特の歌詞とリズムに合わせてタレントの香取慎吾さんがダンスを踊るテレビCMを目にした人はいないだろうか。4月22日から1週間全国放映されたもので、ファミリーマートがカウンターで提供するファストフードドリンク「フラッペ」の宣伝だ。
このテレビCM にも見られるように、ファミリーマートの商品の訴求方法が大きく変わりつつある。18年3月、同社は新たに「マーケティング本部」(19年3月には経営企画本部内の『マーケティング部』に組織変更)を設立。それまで別々に行っていた、商品のマーケティング、ブランディング、販売促進、広告業務を一元化し、全過程が一貫した専門性の高いマーケティングができるようにした。
マーケティング本部を設置したきっかけは、16年9月に澤田貴司社長がトップに就任後「ファミリーマートではPDCA(計画・実行・評価・改善)を回すという習慣が根づいていないところに課題を感じたから」だという。「PDCAを基本としたマーケティングを実行し、われわれが何を売りたいのか消費者にしっかり伝わる売場を実現していく」(澤田社長)。
“香取効果”で
30~50代女性が増加
こうしてマーケティングを強化した効果が発揮されたのが、18年2月期から販売する総菜シリーズ「お母さん食堂」の展開だ。
18年9月、同シリーズのイメージキャラクターに、メーンターゲット層である30~40代女性から支持を得ている香取慎吾さんを起用。“お母さん食堂”のおかみさんとして割烹着を着て登場するという、テーマである「毎日の生活にどこか懐かしくあったかい商品」を連想させる演出のテレビCMを投入するとともに、店頭でも連動して販促を強化した。
その結果、「お母さん食堂」シリーズが牽引し19年2月期の総菜の売上高は対前期比20%増と大きく伸長。なかでも30~50代の女性の購入客数が同20%増と拡大したという。
ファミリーマート商品・物流・品質管理本部ファストフーズ部の木内智朗部長は「マーケティング本部ができたことで、店頭、接客、テレビCM、SNSなど、全体を通じてどのように消費者に商品をアピールしていくかを戦略的に考えるようになっている」と話す。
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フラッペで行う、若い世代を取り込むマーケティング施策
独特の歌詞と踊りで
課題を解決する
そんなファミリーマートが次に売り込みをかけるのがフラッペだ。フラッペは、とくに夏場のファストフード商品の売上を牽引する重要アイテムだ。購入者の中心は20~30代で、全体の6割を女性が占める。販売を強化することで若い世代と女性客をさらに取り込みたい考えだ。
戦略を立てるうえで同社が着目したのが、SNS上でフラッペについて「つくり方がわからない」という投稿が多く上がっていたことだ。
そこで投入したのが記事冒頭のテレビCMである。カップ入りのフレーバー氷を、容器ごと揉んでほぐし、コーヒーマシンでミルクを注ぎ、ストローで混ぜて飲む――という、フラッペのつくり方を、独特の歌詞とリズムの「ファミマのフラッペつくり方ダンス」で印象づけられるようにした。
平行して、若い世代に向けたキャンペーンも実施する。このオリジナルダンスを踊り、その動画をSNS「Twitter」または「Instagram」に投稿すると、抽選で10人にオリジナルのポスターがあたるという内容だ。
応募に当たって、澤田社長を含むファミリーマート社員のほか、任意の加盟店や取引先の従業員がダンスを踊る60秒の動画をWEB上で公開し多くの人の参加を促す。応募期間は4月22日から6月30日までで、フラッペの売上が年間で最も高まる夏季までに認知度を高めるねらいだ。
そのほか年間を通じた施策として、20年2月期は定番商品である「カフェ」「チョコレート」「ストロベリー」を大幅刷新するとともに生産数を増やし通年で販売できるようにする。さらに毎月新しいフレーバーを投入して顧客を飽きさせない工夫をする計画だ。これらの施策によりファミリーマートは20年2月期、フラッペ全体で対前期比5%増の4000万食の販売を目標に掲げている。
マーケティング強化により生まれた「お母さん食堂」の成功を、ほかのカテゴリーにも波及させることができるか注目だ。