メニュー

既存店売上高が6.3%増! サミットのベーカリー部門を伸ばす3つの施策

近年、多くの食品スーパー企業が直営でのベーカリー部門の運営に力を注いでいる。店内で焼成した商品は、競合店のほか、コンビ二やドラッグストアなどの他業態との差別化にもなり、来店動機の創出につながることなどが大きな理由と言える。
そんななかでもベーカリー部門の売上高を伸ばしているチェーンの1つがサミット(東京都/服部哲也社長)だ。2022年度上半期のベーカリー部門の既存店売上高は対前年同期比で6.3%増。もちろん原価高騰による商品値上げの影響もあるのだが、それを鑑みても大きく伸長している。その背景と具体的な施策をレポートする。

2022年11月に開店した「サミットストア踊場駅前店」(神奈川県横浜市)のインストアベーカリー

サミットのベーカリーが
好調な背景

  サミットのベーカリー部門が好調な背景について青果部・鮮魚部・精肉部・総菜部・ベーカリー部を担当する執行役員の千葉周郎氏は次のように説明する。「かつてサミットの一部店舗ではベーカリー専門店『リトルマーメイド』が入っていた。これをここ5年の間で直営のインストアベーカリー『ダン・ブラウン』に統一したことで、ベーカリー全店で、商品政策や販売計画などの方向性を合わせて取り組めるようになったことが大きい」。

 こうした背景のもと最近では、新店や改装店に積極的にインストアベーカリーを導入しており、これも好業績を後押ししているという。
では、実際の売場では、どのような取り組みをしているのか。本稿では最近のサミットの新店から具体的な施策を見ていこう。

売場設計とコーナー展開で
出来たて感を伝える

 22年度上期に大きく伸長したサミットのインストアベーカリー。これを実現するために注力した取り組みについて千葉氏は、①焼きたて感を伝える、②メリハリのある価格設定、③積極的な新商品の投入とリニューアルの大きく3つを挙げている。

 ①の「焼きたて感を伝える」では、来店客に「いつも焼きたての商品がある店」という印象を持ってもらえるように、売場でさまざまな工夫を施している。

 まず売場設計では、大きなガラス窓を採用し、調理場でパンを焼成する様子が売場から見えるようにしている。サミットが近年、開発を推進している都市型小型店においても、限られた売場面積のなか創意工夫によって同様の売場づくりを実践している。

 写真は2022年11月16日に東京都台東区にオープンした「サミットストア御徒町 TAKEYA1 店」のベーカリー売場だ。同店は2層で売場面積は計1080㎡しかない小型店だが、インストアベーカリーはまるで大型店のような売場づくり、品揃えを提供している。

「サミットストア御徒町 TAKEYA1 店」のベーカリー売場。小型店ながら60品目以上の商品を揃える

 次に、売場づくりにおいては、売場中央の目立つ場所に「焼きたてコーナー」を配置し、焼きあがった商品は、同コーナーにまとめて訴求している。結果、いつも焼きたてのおいしい商品がある店という認知につながっているという。

御徒町 TAKEYA1 店の焼きたてコーナー

均一価格と特売品で
メリハリを出す

 ②の「メリハリのある価格設定」では、サミットでは、食パンやフランスパンなどの食事系のパンは同業他社並みの価格設定にする一方、ドーナツの均一販売と、特売品の訴求によって低価格を訴求してメリハリを出し、購入意欲を促しているという。

均一価格で販売するドーナツコーナー(踊場駅前店)

 11月30日に開店した「サミットストア踊場駅前店」(神奈川県横浜市)では開店時、8種類のドーナツを各108円(税抜、以下同)均一で販売。また、「広告の品」として特売品の「ザクふわっ!メロンパン」や「発酵バタークロワッサン」も108円で訴求していた。

適時を意識した
トレンド商品開発

ダン・ブラウンでは毎月新商品を投入するほか、定期的なお楽しみ企画も用意している

 最後に③の「積極的な新商品の投入とリニューアル」については、新商品投入では毎月、5種類の新商品を開発し、WEBや店頭でアピールしている。

 注目したいのは、季節感やトレンドを押さえた商品開発が行われている点だ。10月にはジャック・オー・ランタンの形をしたクッキー「ハロウィンクッキー」を、11月にはシカゴ風ピザを食べやすいサイズにした「ミニシカゴ風ピザパン」などを販売している。

 「繰り返し来店してもらうためには、トレンドを押さえた新しい商品を定期的に提案していくことも重要。幅広い層が来店する食品スーパーの場合、多くの人がすでに認知しているトレンドをメニューに採用するのがポイントだ。昨今のトレンドは浮き沈みのサイクルが短いのでタイミングを十分見極める必要がある」(千葉氏)。

焼きたてピザを
大きくリニューアル

サミットの焼きたてピザコーナー「窯焼PIZZA工房」(踊場駅前店)

 商品のリニューアルでは、看板カテゴリーの1つである焼きたてピザを大きく改良した。サミットの焼きたてピザは、冷凍の玉生地を仕入れて、店舗で伸ばし、専用窯を使って450℃という高温で一気に焼き上げる本格派だ。

 これを、生地を昨今好まれるもちもちした食感をより感じられるものに変更したほか、新しいメニューとして「シーフードアヒージョ」を投入した。
販売方法にもこだわり、専用BOXを採用して商品をいっそう際立たせるとともに、商品の形状を保ったまま持ち帰れるようにした。また、異なる味を楽しんでもらえるように、2種類の味が2分の1枚ずつ入った、ハーフ&ハーフ商品の提供も始めている。これらの結果、焼きたてピザの売上は大きく伸び、好業績を押し上げているという。

焼きたてピザのハーフ&ハーフ商品(写真は東京都杉並区の「西永福店」で撮影したもの)

得意とする個食対応を
ベーカリーでも実践

 そのほか、サミットのベーカリー売場で目にとまったのが個食対応だ。定番の食パンは3分1本、2分の1本、2枚入りを用意するほか、キッシュやアップルパイなどの商品でも、ホールサイズ以外に、4分の1サイズも販売している。

キッシュはホールサイズ(右)だけでなく、4分の1サイズ(左)も販売している

 サミットが商勢圏とする首都圏では単身世帯の割合が高いため、こうした丁寧な個食対応は、購入者を増やすことにつながりそうだ。

 このようにサミットのベーカリーが好調な背景には同社のさまざまな仕掛けが存在する。来店動機創出のうえでインストアベーカリーの重要性が増すなか、多くの学べるヒントがあるはずだ。