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日本酒市場、香り高い・フルーティーなど若年層に訴求する商品が増加傾向

日本酒のマーケットは長年、横ばいから微減傾向にあったが、長引くコロナ禍により巣ごもり消費が拡大したことで堅調に推移。新たな客層を広げるためメーカー各社は香り立ちのよいものやフルーティーな味わいなど、新機軸の商品を打ち出してきている。

前年の反動減はあるものの、コロナ前比較では堅調な推移

 KSP-POSデータによると、2021年7月から22年6月の日本酒カテゴリーの期間通算金額P Iは、前年同期比2.5%減の9994.81円、数量PIは同2.0%減の16.71と、金額数量ともに前年割れとなった【図表】。

新たな客層を広げるためメーカー各社は香り立ちのよいものやフルーティーな味わいなど、新機軸の商品を打ち出してきている。(i-stock/kuppa_rock)

 日本酒の市場は気温が下がり、鍋料理の喫食機会が増える秋口から数字が上がり、歳暮や年始の挨拶など、ギフト需要が高まる12月、1月にピークを迎える。

 20年の春以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響から、居酒屋をはじめとした外食業が営業自粛となったことで、外飲みの機会が大幅に減少。このことから巣ごもり消費が拡大し、家でも日本酒を楽しむ人が増えた。さらに家飲み需要が拡大したことで、これまで居酒屋など料飲店で日本酒を楽しんでいた比較的若い世代も家庭用の日本酒に挑戦し始めている。

 とはいえコロナ禍に入り2年以上が経過し、今期については前年に伸びた分の反動も大きい。月別のPI動向をみると、21年8月、9月、22年2月については前年越えとなったものの、それ以外の月では前年を下回っている。

 日本酒のマーケットは長年、中高年の男性が支えてきたカテゴリーであり、若年層に向けた間口拡大が大きな課題となっている。

 日本酒メーカー各社は、フルーティーなタイプや微発泡タイプ、果汁と合わせた日本酒ベースリキュール、飲みきりサイズのカップ酒など、ふだん日本酒を飲まない入門層をターゲットとした商品を次々と開発。若年層や女性といった新規顧客へのアプローチを強化している。

新規に興味を抱かせる日本酒ならではの魅力を訴求

 コロナ禍に入り2年以上が経過しワクチン接種も進む一方、新たな変異株なども発生しており、感染症対策のための巣ごもり消費は当面続くとみられる。さらに社会情勢の変化に伴う燃油や物価の高騰により、コストパフォーマンスを考えて家飲みを選択するユーザーが今後増えると推測される。

 20年10月の酒税法改正により価格面で手に取りやすくなったこともあって、日本酒は他の酒類カテゴリーからの流入も見受けられる。とくに近年は値ごろ感のあるパック酒カテゴリーの中でも純米大吟醸や山田錦使用、生貯蔵酒などワンランク上の商品を選ぶ傾向がより強まっている。さらに健康意識の高まりから糖質オフやプリン体ゼロといった健康訴求の日本酒を選ぶユーザーも増えてきている。

 今後、日本酒の需要を広げていくためには、季節感のある演出や総菜とのコラボレーションなど、家飲みならではの楽しみ方を訴求することが重要となるだろう。近年の日本酒はフルーティーな香りを楽しめる商品が多く、和食だけでなく、洋食や中華などさまざまなメニューに合わせやすい。新規ユーザーの獲得に向け日本酒の選び方やシーン提案、おすすめ料理など、家庭での日本酒の楽しみ方を訴求することで、日本酒のファンづくりにつなげていきたい。