平和堂(滋賀県/平松正嗣社長)は、2022年春夏商戦に向け、独自商品や健康志向の商品を充実する。近年、激化する競争環境のなか、価格訴求によって集客力を強化する一方、「健康・子育て・高齢者」にとって楽しく、買物しやすい売場、品揃えにより差異化を図る方針だ。
本拠の滋賀県でDgSが急増
─ 22年2月期の購買動向、また加工食品や日配品の売上高推移を教えてください。
辻本 ● 21年2月期は、コロナ禍の影響で売上高が大きく伸長したカテゴリーが多くありました。家庭で過ごす時間が増え、調味料のほかホットケーキミックスなど、おもに素材から料理するための商品の需要が拡大。また外出を控える風潮のなか、乾麺やパスタなど「備蓄系」商品もよく動きました。
これらが前年実績にあったため、22年2月期は苦戦、対前期比90%前後の水準で推移する商品は少なくありませんでした。とはいえコロナ禍の影響を受ける以前の、20年2月期実績との比較ではクリアしている商品が多く、食品への需要は堅調だと認識しています。1月までの累計実績は、加工食品が対前年度比0.6%減に対し、20年2月期との比較では5.4%増、日配は対前年度比0.9%減、20年2月期比6.2%増でした。
── 加工食品や日配は価格が比較されやすい分野です。商勢圏の競争環境を教えてください。
辻本 ● 年々、厳しさが増しているのが現状です。当社は関西、東海、北陸エリアで事業展開していますが、とくに多くの店舗がある滋賀県では、県外からの参入が相次いでいます。さらに食品に力を入れるDgS、またディスカウントストアなど異業態の存在感が増しています。DgS は過去5 年間で50店が増加、21年末時点で227店舗となりました。滋賀県は人口増加率が上位で、小売各社には有望マーケットとして映っているようです。
── そのなか、22年の春夏商戦に向け、貴社はどのような商品政策で臨みますか。
辻本 ● 購買頻度の高いアイテムは価格訴求、さらにEDLP(エブリデー・ロープライス)で提供して集客力を強めます。一方、プライベートブランド(PB)や「健康」志向、「時短」などが特徴の独自商品や付加価値型商品を拡充して競合店との差異化を図ります。
当社は現在、「平和堂は『地域密着ライフスタイル総合(創造)企業』を目指す」をテーマに掲げた中長期計画を推進しています。そのなかで成長するターゲットとして「健康・子育て・高齢者」を設定し、それぞれにとって楽しく、買物しやすい売場、品揃えなどにより競合店との差異化を図る考えです。
付加価値型PBの人気商品
─ 春夏商戦に向けた政策を説明してください。
辻本 ● まず価格政策について話をすると、競争激化、値上げ基調のなか、EDLPで提供する商品を拡充します。購買頻度の高い商品は価格訴求すると同時に、販売促進策として会員カードを活用した魅力的なポイント企画を工夫。子育て中のお客さまを含む、地域の方々への貢献をめざします。
─ 商品政策はいかがでしょうか。
辻本 ● 拡大する方針のPB には2 種類あります。具体的には加盟する日本流通産業(大阪府/大桑弘嗣社長)の価格訴求型の「くらしモア」と、当社が開発した付加価値型の「E-WA!(イーワ)」です。今期、前者の売上高構成比を11%(対前期比2.9 ポイント増)、後者は4%(同2ポイント増)の合計15%( 同4.9 ポイント増)にまで引き上げます。
そのうち「E-WA!」は毎年、新商品を積極的に発売、売れ行き好調なアイテムは少なくありません。21年度は、チョコ比率を従来品の300%に上げた「濃厚チョコの2 層シュークリーム」、平和堂オリジナルブランド牛を具材にしたレトルトカレー「E-WA!あじわい牛ビーフカレー」などがよく動きました。同様に、22年度春夏商戦に向けても新商品を拡大します。
─ 成長が見込めるターゲット「健康・子育て・高齢者」に向けた施策を詳しく説明してください。
辻本 ● まず「健康」についてですが、お客さまの健康志向は年々強まっており、「減塩」や「オーガニック」などが特徴の商品を強化します。売場では商品分類をより細分化、お客さまが選びやすいよう陳列を工夫します。前年度までは「糖質オフ」「減塩生活」「低カロリー」など5 分類でしたが、今期からは「低脂質」「高たんぱく」「大豆食品」「トランス脂肪酸フリー」など9 分類を加えた全14 分類とし、POPに専用のマークをつけて目立たせます。精肉では、毎日の栄養バランスを考える人のために、新しく栄養成分値を品名ラベルに追加表示し始めました。
─ 「子育て」や「高齢者」についてはどうですか。
辻本 ● 子育て中の方には、前述した価格や商品政策により「価格的な支援」を、「簡便」商材の充実により「時間的な支援」を行います。「高齢者」に対しては、少量商品や味にこだわった商品を拡大、支持獲得をめざします。
AI導入で発注時間を削減
─ 春夏商戦で注目する新商品はありますか。
辻本 ●「 健康」志向の商品では、カゴメの植物性ミルク「畑うまれのやさしいミルク」や植物素材を使用した「大豆ミートのタコライス用ソース」「彩り野菜と大豆ミートのガパオ用ソース」。動物性原材料を使っていないため、常々、健康を意識している方との相性はよいと思われます。環境への負荷軽減などにも貢献する商品として注目しています。
このほか、イートアンドフーズの「大阪王将 羽根つきタン塩餃子」や味の素冷凍食品の「黒胡椒にんにく餃子」など、ラインアップ拡大が進む冷凍餃子にも注目しています。また冷凍食品では、ニチレイフーズの「冷やし中華」も従来にはない新商品で期待しています。電子レンジと氷を使って“冷たい麺”をつくる「簡便」商材。これまでにはなかった新しい発想がユニークだと感じました。
─ PB の方はいかがでしょう。
辻本 ● E-WA!では「豆力納豆」。大豆は「滋賀県産コトユタカ」中粒を100%使用した「地域密着」商品でリピート率も高い。他には、「滋賀県産みずかがみ」を100% 使ったおかゆなどが好調。
チーズなど、値上げが続く分類では、大容量などの品揃えを強化。ユニット売価を抑え訴求力UP を図ります。
─ 競争が激化するなか、これら独自の商品政策によって消費者からの支持獲得をめざす方針ですね。
辻本 ● その通りです。一方、今後は加工食品や日配分野では、部門の効率運営にも取り組みます。昨年10月から、日配品でAIを活用した需要予測システムを導入しています。定番商品の発注時間を90%削減するのがねらいです。近年は人手不足が続くほか、コロナ禍で需要予測が難しくなっており、新システムにより解決を図ります。
今回お話しした商品政策、さらに部門の効率運営などにより、現在、テーマに掲げる「平和堂は『地域密着ライフスタイル総合(創造)企業』を目指す」を実現できるよう、努力します。