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明治×東武ストア「大袋チョコ」セット陳列が価格訴求なしで成果を出せた理由

明治のチョコレート商品
(左から)
●明治ミルクチョコレートビッグパック(152g)
●アーモンドチョコレートビッグパック(151g)
●マカダミアチョコレートビッグパック(115g)
●マカダミアチョコレート抹茶ビッグパック(112g)

明治ではカカオショック以降、価格高騰の影響を大きく受けるチョコレートの大袋パックの活性化に向け、首都圏で食品スーパーを展開する東武ストアの協力の元、定番棚での集合陳列およびバンドル販売による売上効果を検証する実験を行った。

カカオショックで顕在化した、大袋チョコレートの課題

 明治はカカオショック以降のチョコレート市場を取り巻く環境を鑑み、チョコレートカテゴリー最大のサブカテゴリーである「大袋チョコレート」に着目。東京、千葉、埼玉の1都2県で食品スーパーを展開する東武ストアの協力のもと、大袋チョコレートの店頭販促実験を2025年9月に実施した。

 大袋チョコレートはカカオ価格の高騰による製造コストの上昇によって、値上げもしくは減量のいずれかの対応をメーカーは迫られている。

 大袋チョコレートの価値は、家庭内や友人間でのシェアやストック性、食べ過ぎ防止など様々だが、最も重要なのは「お得感」や「ボリューム感」といった価格に見合った量感にある。現在、原材料であるカカオの高騰によりそのバランスが崩れつつあり、価値認識のギャップが生じている可能性がある。今回の実験は売場提案やバンドル販売を通じて、このギャップを埋め、消費者にとって適正な量と価格の関係を再検証し、今後の販売戦略に活かすことが狙いとなっている。

 東武ストアの商品本部 加工食品部課長を務める久保勇氏は、直近のチョコレート売場の概況について、「近年、チョコレートの価格上昇に伴い販売数量は減少傾向にあるが、金額ベースでは一定の売上を維持していた。しかし、夏場を経て8月・9月には金額面でも厳しい状況となり、特に大袋商品が販促に使いづらい価格帯となっている。かつては2個500円などのバンドル販売が可能だったが、現在は利益面での制約が強く、販促施策が打ちづらくなっているため、売上の構築が難しい」と語る。

 東武ストアは電鉄系スーパーという特性上、駅前立地が多く、通勤・通学客や主婦、高齢者など幅広い層が来店。価格訴求よりも新商品の展開に力を入れている。また子育て世代へのアプローチを強化しており、各カテゴリーで施策を展開している。

 直近のチョコレートカテゴリーの棚割りは店舗オペレーションの効率化を重視し、SKU数を大幅に削減。特に大袋商品は整理するなど、無理にSKU数を増やしていた部分を是正し、より合理的な棚割りを実施している。

 今回の実証実験は2025年9月16日~9月30日の15日間で行い、その前週にあたる9月1日~9月15日の15日間のPOSと比較する。対象商品は明治のビッグパックシリーズ「ミルクチョコレート」「アーモンド」「マカダミア」の3種。実験店舗は、東武ストアの「竹ノ塚店」「新船橋店」の2店舗をチョイスした。

 大袋チョコレート6尺7段パターンの竹ノ塚店では明治のビッグパック3品を棚1枚で陳列し、バンドル販売(1個498円/2個980円)を実施。一方、新船橋店ではビッグパック3品を棚1枚で陳列し、売価535円で展開した。

「東武ストア新船橋店」大袋チョコレート売場での店頭展開の様子

 今回の実験はエンドや催事売場での展開ではなく定番棚での展開となる。明治では視認性を高めるための販促ツールとして「楽しみ方いろいろ 大容量 シェア 個包装」と書かれた仕切りPOPを用意した。

バンドル販売で数量・金額ともに大きく貢献

 ここから実証実験の結果を見ていく。9月後半は前半と比べ気温が低く、チョコレート全体の購入率が上がったことを受け、前半・後半の単純な数字比較ではなく、伸長率による評価を行った。まず6尺7段パターンの大袋チョコレートカテゴリーの金額ベースの伸長率は、全店で121.8%、テスト店舗は138.2%の伸長となった。

 その内、ビッグパック3品の金額ベース伸長率は、全店で164.9%、テスト店舗は434.7%の伸長となっており、2店舗の寄与度は16.5%と高い成果を示した【図表❷】。特にバンドル販売を行った「竹ノ塚店」は数量・金額ともに「新船橋店」の数字を大きく上回る結果を出しており、バンドル販売に効果があることが判った。

 テスト実施期間中の大袋チョコレートカテゴリーの単品売上ランキングを見ると、いずれの店舗でも対象商品が20位以内に食い込んでおり、定番棚での展開でも企画次第で大きな成果につながることが判った。

 実証実験の結果について久保氏は、「これまでの大袋チョコレートは価格訴求での販促企画が中心だったが、今回のように集合陳列を行い、販促物を付けることで来店客の目に留まりやすくなり、結果として金額だけでなく数量ベースでも成果が見られた。またバンドル販売によるお得感もあり、普段とは異なる客層の購買につながった可能性がある」と分析している。

㈱東武ストア 商品本部 加工食品部 課長 久保 勇氏

最小限の手間で展開、棚の生産性向上に寄与

 人口減による労働者不足は食品スーパーの現場でも大きな課題となっており、エンドや催事売場での手をかけた販促企画よりもEDLP化が進むなど、店舗オペレーションの省力化が求められている。こうした中、定番棚にPOPを設置するなど最小限の手間で展開でき、販促枠が限られる中、棚の生産性向上に寄与できる同企画は今後の売場づくりのヒントになるだろう。

 今回は定番売場での展開であったが、アウト展開においても同様の結果が得られることは十分考えられる。高単価でも量目の多い大袋チョコシリーズこそ顧客満足につながり、今後もチョコレート市場を活性化していくだろう。

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