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「パンテーン」「h&s」を軸に P&Gジャパンが提案するヘアケア市場成長のシナリオ

 P&Gジャパン(以下、P&G)では「パンテーン」と「h&s」の2ブランドを軸としたきめ細やかなマーケティング施策によりヘアケア市場を牽引している。同カテゴリーを成長させるためのキーワードについて、執行役員ヘアケア事業代表の小林洋貴氏にきいた。

P&Gジャパン合同会社 執行役員 ヘアケア事業代表 兼 ブランドマネジメント 小林 洋貴氏
P&Gジャパン合同会社 執行役員 ヘアケア事業代表 小林 洋貴氏

ベースラインの拡大が次の成長のフックに

―昨今のヘアケアカテゴリーの市場環境をどのように見ておられますか?
小林:
ヘアケアの市場は過去数年のトレンドに引き続き、新規参入するプレイヤーが多く、発売されるブランドも多岐にわたっており、堅調に推移しています。
 ただし、スタートアップをはじめとした新興メーカーが参入することで市場が拡大していくという動きは一旦落ち着き、大手メーカーによる反転攻勢の時代に入ってきているように感じます。

―それはどういったところに要因があるのでしょうか?
小林:
これは昨今の日本の経済状況が大きく影響しています。ヘアケア市場についてはここ数年、新興メーカーによる1400円以上のプレミアム帯の商品群が市場拡大に貢献してきましたが、直近はその勢いが緩やかになっているように感じます。
 日本社会はようやくデフレの期間を抜けて、他の先進国と同様の景気に戻りつつありますが、物価上昇の影響もあり、今後はマス向けのベースライン及び、ベースラインとプレミアムラインの間にある中価格帯の拡大もかなり重要になってくると感じています。
 またプレミアムラインについてはこれまでZ世代をはじめとした若い消費者に支持をいただくことで伸長してきましたが、当社では30・40代を中心とする大人世代をターゲットとした商品開発にも力を入れています。こうしたZ世代以外の年代の方に対して、いかにより良い製品をご提供できるかが成長のポイントになってくると考えています。

―こうした市場環境の中で、御社はどのような戦略を採られていますか?
小林:
イノベーションにより製品の機能を向上させるという点はもちろんですが、優れたコミュニケーションによって、より良いものをより良くお伝えする、という点が重要なキーワードになってくるのではないかと。
 当社はダメージ&リペアに特化した「パンテーン」、頭皮ケアに着目した「h&s」という機能に特化したブランドを展開していますが、いずれもマス、プレミアムの各セグメントの製品を有しており、その点では競合に対し大きな優位性があると考えています。

「パンテーン ミラクルズ うねりリペア」も発売
新セレブリティーにはタレントの二宮和也さんを起用

―続いて今期のマーケティング戦略についてお聞かせください。
小林:今期も引き続き「パンテーン」と「h&s」の2大ブランドに注力し、幅広いニーズにお応えする商品展開で市場をリードしていきます。

―でははじめに「パンテーン」のブランド戦略についてお聞かせください。
小林:まずプレミアムラインの「パンテーン ミラクルズ」については、2024年11月に「うねりコントロール&リペア」シリーズを新発売しました。同品は長年の蓄積ダメージによる『オトナうねり』に着目したシリーズです。
 「パンテーン」のプロビタミン*1 成分とボンドリペア成分が、髪内部の奥深くまで浸透することで、うねりの原因であるヘアボンドを補修するほか、「うるおいユースセラム処方」で、うねりリペア効果が長く続き、過度な水分・湿気から髪を保護します。
 「うねりコントロール&リペア」シリーズは発売以降、メインターゲットとしている大人世代のユーザーからの評価が高く、口コミサイトでも発売以降数カ月にわたってトップ5に入るなど、好調に推移しています。

―24年に行ったベーシックラインのフルリニューアルに関して、手応えはいかがですか?
小林:おかげさまで消費者の方からも高評価をいただいております。中でも洗い流さないトリートメントの「インテンシブヴィタミルク」については容量を125mlにサイズアップした他、ボトルのノズルを改良することで、適切な量が1プッシュで簡単に出せるポンプ設計となっており、ユーザーから満足できる仕上がりを実感できると好評です。
 またインバスのトリートメントのパフォーマンスを実感して頂くため、トリートメント単体での広告も展開しています。こちらはサロンにいらっしゃったお客様に「パンテーン」のトリートメントとはお知らせせずに使用し、仕上がりに満足された後に、「パンテーン」を使っていたことをお伝えし、効果を実感して頂くという、同品のパフォーマンスの高さを訴求する内容になっています。
 トリートメントは、シャンプー、コンディショナーの付属品として考える方もいらっしゃるようですが、実際は仕上がりについて“ポジティブな驚き“を感じて頂ける剤型と認識しています。当社では今後もトリートメントの便益が消費者にしっかりと伝わるようなコミュニケーションを強化していきます。 

―ブランド全体のコミュニケーション施策についてはいかがですか?
小林:25年6月より、「パンテーン」ブランド全体のコミュニケーションの新セレブリティーとして、二宮和也さんを起用しました。同ブランドのセレブリティーとして男性を起用するのは日本市場において初の試みとなります。
 世界的に認められた実力派俳優である二宮さんに「パンテーン・スタイリスト」という形で係わって頂くことにより、「パンテーン」ならではの品質感や世界観を広く発信していきたいと考えています。

パンテーン ミラクルズ2品
長年の蓄積ダメージによる”オトナうねり”に特化した新シリーズ「パンテーン ミラクルズ うねりコントロール&リペア」シリーズ
ベーシックライン 4品
好調に推移する「パンテーン」ベーシックライン。中でもトリートメントはパフォーマンスの高さを訴求している

頭皮の悩みに応える「h&s」
プロモーションを強化

―続いて「h&s」のブランド戦略をお聞かせください。
小林:「h&s」は頭皮トラブルの根本的な原因を解決するために研究を重ねてきた「頭皮のエキスパート」であり、シャンプーカテゴリーにおける世界売上No.1ブランド*2 です。日本市場においても売上は堅調に推移しており、シャンプーカテゴリーの市場拡大に貢献しています。
 また、幅広い世代に人気のTravis Japan松田元太さんを起用した新TVCMでは、松田さんが大量の泡を頭にのせた「DJシャンプー」に扮し、ラジオ番組の中でリスナーの頭皮悩みに答えるというストーリーを展開しています。

―「h&s」は近年、ストーリー仕立てのCMを展開していますが、その意図はどこにありますか?
小林:頭皮の悩みというのは人に相談しづらく、多くの人が抱え込んでしまう傾向にあります。松田さんが扮する「DJシャンプー」というユニークなキャラクターを通じこの問題を取り上げることで、頭皮の悩みについて前向きに考えるきっかけにして頂けたらと思っています。

―24年2月に発売した「h&s 5in1」シリーズの反応を教えてください。
小林:「h&s 5in1」は独自の薬用有効成分が頭皮トラブルの根本原因に直接働きかけることで、フケ・かゆみ・乾燥・ニオイ・べたつきなどにアプローチする医薬部外品のヘアケアシリーズです。メンソール配合*3 の「クールクレンズシャンプー」、弱酸性の優しい泡が特長の「マイルドモイスチャーシャンプー」、頭皮にもみ込むことでトラブルへアプローチする「コンディショナー」の3品をラインアップしていますが、中でも「クールクレンズシャンプー」は夏場の頭皮がべたつきやすい時期もスッキリ洗い上がると好評です。
 また、男性向けの「h&s フォーメン ボリュームアップ シャンプー」やリンス不要の「h&s ゴールド2イン1 リンスのいらない 薬用シャンプー」も好調に推移しており、「h&s」ブランド全体で今後もプロモーションを強化していきます。

―プレミアムラインの「深ヘッドスパ」についてはいかがですか?
小林:頭皮トラブルから毛先までトータルアプローチしヘッドスパ帰りのような仕上がりを提供する「深ヘッドスパ」は、25年4月下旬に新商品「h&s 深ヘッドスパ アドバンスド エイジング ケア*4」シリーズを発売しました。
同品は頭皮のサビ*5 と髪に着目し、頭皮環境を整えフケやかゆみを防ぐほか、髪にも潤い・ハリコシを与える画期的な新ラインです。

「h&s」 定番
「h&s」は定番の「h&s モイスチャーシャンプー」のほか、頭皮トラブルに1本でアプローチする「h&s 5in1」、「h&s ゴールド2イン1 リンスのいらない 薬用シャンプー」とニーズに合わせ幅広いラインアップをそろえる
深ヘッドスパ
頭皮環境を整えフケやかゆみを防ぎ、髪にも潤い・ハリコシを与える「h&s 深ヘッドスパ アドバンスド エイジング ケア*4」シリーズ

幅広いラインアップを持つ
メガブランドを有することの意義

―へアケアはアイテム数が非常に多いカテゴリーですが、店頭施策についてどのようにお考えですか?
小林:おっしゃるように、ヘアケアはプレイヤー数が多く新商品の投入も非常に多いことから、現状のヘアケア売場は消費者にとって、けして買いやすい売場とはいえないでしょう。
 私自身、様々なカテゴリーを担当してきましたが、ヘアケアは衣料用洗剤のようにひとつのメーカーが大きなシェアを取ることは将来的にも難しいと思っています。そのような状況で市場の成長を活性化していくには、メーカーサイド、流通サイド、双方での役割分担が重要となってくるでしょう。
 当社についてはダメージ&リペアの「パンテーン」、頭皮ケアの「h&s」というブランドを通じて消費者のお悩みを解決し、ヘアケアカテゴリーをリードすることを軸にビジネスを展開していきます。また、いわゆるプレミアムラインの一本足打法ではなく、一つのブランドの中でもニーズに合わせた幅広いラインアップを有している点が当社の最大の特徴です。ヘアケアのカテゴリーユーザーの半数以上がマス価格帯の製品を購入しているという市場環境の中で、どれだけ高付加価値の製品をご提供できるか、これが我々の役割だと考えています。

―今後もこのヘアケアカテゴリーは成長を続けると思いますか?
小林:はい、伸びていくと思います。当社の調査によると髪のコンディションについて満足している日数は、男女ともに1年の内3分の1程度で、満足している方が非常に少ないんですね。
 そういう意味では、もっとユーザーの満足度を上げることで市場拡大のチャンスがある。たとえばトリートメントについても過去一年全く使っていないという方が半数以上いらっしゃいますし、こうした方にトリートメントを使って頂くことで満足度の向上と市場の拡大が見込めます。
 現状、ユーザー数、消費量、価格、どの軸でみても、満足度が上限までいっているとは言い難く、深掘りできるポイントがまだまだ沢山あると思っています。

―最後に流通バイヤーへのメッセージをお聞かせください。
小林:繰り返しになりますが当社は「パンテーン」「h&s」という2ブランドを通じ幅広いニーズに応えるラインアップで、消費者の方にご満足いただき、得意先様である流通業の皆様へ価値ある貢献をさせていただきたいと考えています。今後も流通業の皆様との協働を通じ、カテゴリーの成長に繋げていきたいです。

*1 パンテノール、パンテニルエチル(浸透性保湿成分)

*2 2023年7月から2024年6月までのニールセン売り上げデータに基づく。

*3 香料の成分として配合

*4 エイジングケアとは年齢に応じたお手入れのこと

*5 酸化ダメージのこと

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