メニュー

ヴィンクス RTJ2024で小売向けDXコンセプト製品を出展 クローズドイベントも盛況

VINX ブース全体

流通小売業向けDXコンセプト製品を多数展示

 312日より4日間、東京ビッグサイトで開催されたリテールテックJAPAN2024で、ヴィンクスは多くの流通小売業向けDXコンセプト製品(参考出品)を出展した。従来の枠組み・制約を破る近未来のPOSアーキテクチャを採用した「マルチプラットフォームPOS」をはじめ、POS自体に組み込まれたChatGPTによる店舗支援システム、リアルタイムで高度な分析を可能にする生成AI搭載クラウドPOSデータ分析といった近い将来の店舗DXコンセプト製品群だ。

 ヴィンクスは数年先の近未来コンセプトだけではなく、すぐにでも店舗で活用可能なDX製品も出展している。手のひらを使った生体認証決済を搭載したPOSやカート搭載型POS「SkipCart®」、海外出店を支援するグローバルPOS・OMOソリューション製品、多くの小売業への導入実績を誇るRPA導入サービスなどだ。

数年先の店舗DXを提案するコンセプト展示製品群

 従来のPOSは、Windowsをはじめとして予め決められたOSでしか動かない。しかし、最近の店舗のDX化や顧客接点の多様化など小売業のデジタル化の進展に伴い、マルチなデバイスの利用へのニーズが高まっている。「マルチプラットフォームPOS」は、3つのフリー(①デバイスフリー×②OSフリー×③クラウドフリー)を特徴とし、①デバイスフリー=POSの形態(セルフ、スマホ、タブレット、カート型、通常レジ)を選ばず、②OSフリー=多様なOSで稼働し、③クラウドフリー=POSの後方システムとして様々なクラウドを自由に選択できる近未来のPOSだ。

 流通小売業の決済の現場では、顧客体験の向上や従業員の業務効率化を目的として、セルフレジやスマホレジ、カート搭載型のPOSなど様々な形態のレジが登場している。POSデータの利用は単に売上集計だけではなく、商品発注、在庫管理、マーケティング分析といったシステムと連携し、クラウドサービスとの連携も普及してきた。市場によっては、タブレットやスマホといったモバイル端末を使用するPOSの台頭で、OSAndroidが用いられたりChrome POSが発表されたりなど、POSプラットフォームにも多様化が進んでいる。そうした状況を背景に、ヴィンクスではマルチプラットフォームに対応したPOSを提案している。

 「マルチプラットフォームPOS」は従来の制約に縛らず、自由にハードウェアを選択できることで調達コストを低減でき、新店やイベント出店などでも容易にPOS設置が可能となり、店舗スタッフは普段から使いなれているスマホライクな操作で利用できることができるといったメリットがある。消費者側のスマホにアプリをインストールしたBYODさえも視野に入れることができるだろう。

デバイス、OS、クラウドを自由に選べる「マルチプラットフォームPOS」

 OSフリーなので、決まったOSに統一する必要もない。多店舗展開する企業の場合、更新の際には一斉に入れ替えることが必要になりデバイスの数の手当てや更新作業など投資も大きくなる。「マルチプラットフォームPOS」は、異なるOSでも使用可能なので、更新時期のずれや投資計画などに基づいて段階的に入れ替えることも可能になる。

 会場ではさまざまクラウドサービスに対応した購買分析について、「マルチプラットフォームPOS」によるデモンストレーションが行われていた。マルチクラウド上の購買分析では生成AIを導入しているのがポイントで、データをグラフなどで表示しながら自然な言葉で質問することが可能だ。単純に「売れているものは何?売れていないものは何?」といった質問に対して、日別の購買データなどから即座にAIがダッシュボードの中のデータを抜き出して回答し表示する。直感的な購買分析をスピーディに行うことが可能というわけだ。

生成AIを活用したPOSデータ分析のデモ

店舗業務、バックオフィス業務のデジタル化を多方面から支援

 一昨年から話題となったChatGPT。企業での利用も増えつつあるが、ヴィンクスはDMS(Document Management System)として出展した。ChatGPTはインターネット上に公開されている情報を学習し、質問に回答する。企業内の情報も取り入れて活用するにはセキュリティ面で問題がある。DMSはこの課題を解決すべく、通常のChatGPTでは対応できない企業内ドキュメントを学習・回答するデジタルアシスタントサービスで、社内規定やシステム運用に関するQ&Aやマニュアル作成、ドキュメントや提案書、レポートの作成などを自動化することで効率化を図り正確性を高めている。

 事前に読み込ませたデータから、対応する回答を提示するので学習させるデータが増えて行けば、それだけ内容が正確になる。すでに2社で実験導入されており、総務人事では社内規定などへの問い合わせ回答や情報システム関連へのQ&Aで活用されている。今後、情報系ではPOS更新などの際のマニュアル作成や、営業では企画書作成などにも応用が可能だ。

 東南アジア市場などに進出する日系流通業などをターゲットに、提携関係にあるターンクラウドのPOSソリューションを活用したグローバルPOSも展示されていた。海外で実績のあるOMOソリューションを活用し、東南アジアに展開する現地子会社から支援することで、ヴィンクスは日系企業の海外出店を支援している。

 ヴィンクスの主力POS商品が「ANY-CUBE®」。ハードウェアフリー、直観・直感コンセプトで導入が容易などの特徴から現在までに162000台の導入実績がある。様々な機能を追加していく中で、日立グループの生体認証デバイスとの連携デモを展示していた。実際の導入に向けて現状は運用方法など検討段階だが、クレジットカードや電子マネーに紐づいて個人を登録しておくことで手のひらをかざすだけで決済まで完了できる仕組みを構築して行く計画だ。

生成AIを活用したデジタルアシスタントサービス(左)、OMOソリューションを提供するグローバルPOS(中)、生体認証によるANY-CUBE®デモ(右)

 カート搭載型のPOSは、すでに実店舗での利用も始まっている。ヴィンクスはこうしたカートの販売やクラウドシステムの提供を「SkipCart®」サービスで支援している。POSと連動していることで、購入する商品の情報や商品の販促にも活用できる仕組みを提供できる。実際の使用では、スキャンをし忘れたりすることも起こりえる。その際には、カートに設置してあるセンサーで感知し、端末のディスプレーにポップアップが表示されて注意を促す。「SkipCart®」は店舗内で常にデータ送受信を行っている。そのためのサーバーなどの安定性や堅牢性に加えてプロジェクト推進力がヴィンクスの強みとなっている。

 展示会では省力化や業務効率アップに貢献するRPA導入支援サービスをアピールしていた。流通小売業向けIT専業というヴィンクスの強みを活かし多くの導入実績を誇る。単にシステム導入の支援だけでなく、流通小売業に精通するヴィンクスがロボットの開発までサポートできる点がユーザー企業にとっては大きなメリットだろう。ブースの一角では大型のディスプレーを設置し、AIによる動画自動生成体験デモを実施し、企業としてAIなどの先端IT技術への取組みを訴求していた。

カート搭載型POSSkip Cart®」(左)、RPA導入支援実績(中)、AIによる動画生成体験デモ()

注目の小売業が登壇する「VINXニューリテールデイズ」を開催

 ヴィンクスはリテールテックJAPAN2024と並行して、クローズドイベント「VINXニューリテールデイズ」(以下、NRD2024)を東京ビッグサイト近隣の有明セントラルタワーホール&カンファレンスで開催した。クローズドイベントは昨年よりリテールテックJAPANと並行して開催しており、今回で2度目の開催となる。今年から「ニューリテールデイズ」と名付けられ、昨年よりその規模・内容を拡大し実施された。

 取材日はNRD2024のユーザー会開催日ということで、注目を集める小売業3社、ヴィンクス側から2件の講演が行われ、講演会後にはユーザー同士の交流会も設定されており、多くの流通小売業出席者で賑わっていた。NRD2024は招待制で実施されており、クローズドイベントと呼ぶように一般にはその開催も公表されていない。講演内容は参加者以外非公開とされており、資料も非配布で運営されている。参加者が本当に聞きたいことを得られる貴重な機会として、講演企業側にも配慮しているようだ。ユーザー会実施日以外は展示会となっており、リテールテックJAPAN会場では展示しきれなかった製品・サービスの次世代コンセプトなどを展示、同社のパートナー企業も出展してヴィンクス製品・サービスとのコラボ展開を訴求していた。

「VINXニューリテールデイズ」ユーザ会の様子

講演会は以下のプログラムで実施された。

1.「食品SM 基幹システム統合に関する取り組み」
株式会社エイチ・ツー・オー
食品グループ IT・デジタル推進部グループ長
森田 元庸 氏

2.「POSシステム刷新~店舗DXに向けて~」
株式会社ツルハホールディングス
執行役員 経営戦略本部長 兼 情報システム本部長
小橋 義浩 氏

3.「Green Beans運営におけるイオンネクストの取り組み」
イオンネクスト株式会社
IT部長
駒場 光徳 氏

 

 非公開イベントということで各社の講演内容の詳細は避けるが、流通小売業のITでそれぞれ中核となるMDシステムとPOSシステム、全く新しいアプローチで挑戦する次世代ネットスーパーという3テーマで、高名な3社が自社事例を時に生々しく、時に本音を交えながら講演・紹介していた。日頃は互いにライバル視する流通小売業各社がひしめくなか、各社の取組みを各社の視点で互いに共有すること、NRD2024が盛況となる理由の一端をうかがい知ることができる内容であった。講演会後のユーザー交流も盛況であったことを追記しておきたい。

4.「大規模言語モデルが変えたアプリケーションの未来」
株式会社ヴィンクス
営業本部プロモーション推進部 エンベデッドスペシャリスト
能登  一樹 氏

5.「OMO実現へのEC刷新~システムベンダーから見た失敗しないためのポイント~」
株式会社Ui2
ビジネス戦略推進本部 セールス&マーケティンググループ
川嶋 英之 氏

 ヴィンクスからはエンベデッドスペシャリストの能登氏が、AIとくにChatGPTに代表される大規模言語モデルの活用、これを小売業向けにブラッシュアップしたDMSDocument Management System)について講演した。ヴィンクスではChatGPTを使ったDMSを現在2社に実験導入している。DMSを導入することで、マニュアルの作成や問合せへの返答を効率化したり、スマホ決済アプリに組み込むことで、セルフスキャン時にその商品を使ったレシピをレコメンドしたりする機能を搭載できる。また、高度な知識を必要とするBIツールの活用も、必要なことを入力するだけで目的とするデータが表示されるという機能も実現できると言う。

 ヴィンクスグループの株式会社Ui2川嶋氏は、OMO実現に向けたシステム構築成功のポイントを、EC構築を主事業とするベンダーである同社の視点で具体的な事例をもとに講演した。OMOというバズワードにいたずらに踊らされるのではなく、段階的にチャレンジすることがポイントで、お客様にもたいへん好評をいただいたと言う。

機会があれば参加したいニューリテールデイズ

 リテールテックJAPANの期間中に、ヴィンクスは毎回クローズドセミナーを開催している。流通小売業自身の視点で話されるDXへの取り組みなど、ここでしか聞けない事例も盛りだくさんなイベントだ。次回も更に充実した内容で開催するとのことなので、是非会場へ足を運び、流通小売業のデジタル活用のトレンドを把握してもらいたい。ヴィンクスでは、消費者の購買行動の変化や慢性的な人手不足、現場の業務効率化など、流通小売業界が抱える課題の解決を図る先進ソリューションの提供に今後も力を入れていく方針だ。

※SkipCartは株式会社Retail AI、ANY-CUBEは株式会社ヴィンクスの登録商標です