栄養豊富な健康食材として家庭に定着している高野豆腐は、安定した需要を続けている。なかでも高野豆腐が最も売れる時期は12月で、おせち料理としてはもちろん、家族が帰省した時のおもてなし料理の1品として登場する機会が多い。そこで旭松食品では、12月に店頭露出の最大化を図り、高野豆腐市場の底上げを図っていく考えだ。
帰省した家族に振る舞いたい料理No.1は「煮物・煮込み料理」
日本の伝統食材である高野豆腐は、含め煮のほかさまざまな料理に活用されるため年間を通して安定した需要はあるが、最大の需要期は12月。図表❶の「凍り豆腐週別販売金額推移」をみると、11月から需要が高まり、12月最終週にピークに達する。おせち料理に使われるのはもちろん、家族の帰省時におもてなし料理の1品としても活用されている。旭松食品が行った「帰省に関する調査」では、「帰省したらしたいこと」では71.2%が「家でご飯を食べること」で(図表❷)家族が帰省した際の食事は「自分または家族の手づくり」が84.8%となった。帰省時は家族みんなで食事することが楽しみのひとつとなっている。
食事のジャンルとしては「和食」が84%と圧倒的に高く(図表❸)、なかでも帰省した家族に振る舞いたい和食の1位は「煮物・煮込み料理」で(図表❹)食べたい和食でも3位となった(図表❺)。豪華で華やかなちらし寿司やすき焼きなどもいいが、帰省した時は「懐かしい味でほっとしたい」という気持ちが働くようだ。
コロナ禍でこれまで帰省できなかった人も新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したことで、行動制限がなくなり、旅行や帰省をする人が増えている。同調査によると、「今年の年末に帰省したいと思う」と答えた人は64.8%で、20~40代に限定すると81%にもなる(図表❻)。今年の年末は帰省する人が増えることを想定し、同社では最需要期の12月に向けて、これまで以上に高野豆腐の店頭露出を図っていく。
テレビCMで購買を促進
高野豆腐市場をリードする旭松食品では、高野豆腐の需要の最大化を図るため、今年は11月から店頭で高野豆腐の仕掛けを行っていく。最需要期の12月はもちろん、その前後の高野豆腐に関する記念日が多い11月、1月、2月と長期に渡って高野豆腐の露出を図る(図表❼)。11月の「高野豆腐の日」や「いいかんぶつの日」「和食の日」では、日本の伝統食材である高野豆腐の栄養価値やおいしさ、食べ方などの啓発活動を行う。
12月の最需要期にはエンド展開など店頭露出を進める。高野豆腐の持つ情緒的価値の「懐かしい味、ほっとする味」を想起させる店頭販促物を用意して購買を促進。また、今年は高野豆腐の最大消費地である関西でテレビCMを集中的に投下※し、需要期の売上最大化を図る。※CMの時期とエリアは予定です
熱湯1分で仕上がる即席タイプの高野豆腐を提案
原料や製法にこだわった「新あさひ豆腐」は、仕上がりがふっくらやわらかく、口あたりがいいと好評だ。同商品は、厚みや大きさなどさまざま形状の商品が揃っており、料理や好みに合わせて使い分けができる。ここ数年は、電子レンジで簡単につくれる「小さな新あさひ豆腐 粉末調味料付」が好調となっている。
そこで今年3月には、熱湯を注いで1分、液体調味料を入れて混ぜるだけの即席タイプの「カップ新あさひ豆腐」を新発売。麺のような細切りの高野豆腐で、お箸で食べやすいのが特徴。これまでも高野豆腐は時代のニーズに合わせて進化を遂げてきたが、加熱調理に制限があった。そこで同社では熱湯を注ぐだけでふっくらやわらかく食べられるように新製法を採用した。これにより忙しい朝やオフィスでのランチなど、新たな食シーンの拡大が図れそうだ。
また、高野豆腐用の高オレイン酸大豆(Non-GMO)を開発し、その大豆を使用した「新あさひ豆腐うす切り」を新発売。オリーブオイルに含まれる注目の成分オレイン酸が通常大豆の約4倍含まれており、酸化に強いオレイン酸により賞味期限1年を実現した。脱酸素剤や特殊包材未使用では業界初となる。短時間調理でもふっくら、やわらかになるため、お味噌汁や野菜炒めなどに最適だ。
近年は食べ方提案にも力を入れており、だしの旨みが堪能できる高野豆腐の含め煮をはじめ、ヘルシーなのにお肉のような食べ応えのある高野豆腐のから揚げも話題となっている。
欧州でも健康機能性が認められ、海外進出を本格化
高野豆腐は栄養豊富な食品で、とくに植物性たんぱく質が半分占めており、そのなかの約3割をレジスタントプロテインが占めているのが特徴。食物繊維に似た働きをするレジスタントプロテインは、血中コレステロール値を減少させる効果や、食後血中中性脂肪の上昇を抑制する効果が報告されている。
同社では、高野豆腐の海外展開を行っており、日本で確認されている健康機能性はヨーロッパ人でも認められることをオランダの大学との共同研究で実証された。こうしたエビデンスを基に今後、海外での展開を広げていく考えだ。