[ニューヨーク 6日 ロイター] – 米国経済の回復が広がる中、売り上げの急拡大に応じて人員を増やそうとしている飲食店が採用に苦慮している。ヤム・ブランズ傘下のファストフードチェーン「タコベル」は6日、1日で少なくとも5000人の従業員を採用する計画を発表。一部のゼネラルマネジャー職については福利厚生も充実させた。
タコベルは今月21日、約2000店舗の駐車場で採用面接を実施する。一部の参加者は車から降りなくても受けられるという。
自社保有店舗のゼネラルマネジャーには4週間の年次休暇、8週間の有給の産休、4週間の「(新しい親と保護者のための)赤ちゃんとの絆形成」期間を付与した。
タコベルはこれまでにもこうした採用イベントを開いたことはあるが、これほど多くの店舗で一斉に開催するのは初めて。タコベルのチーフ・ピープル・オフィサー、ケリー・マッカロック氏は発表文で「(現在の)労働市場が引き締まっていることは隠すまでもないことだ」と指摘した。
「ジョニーロケッツ」や「ファットバーガー」といった飲食店を展開するFATブランズのアンディー・ウィーダーホーン最高経営責任者(CEO)は各フランチャイズ店舗の人員環境について「全くの悪夢」と表現。「最新の刺激策に伴う小切手配布と失業給付が人々の(職探しよりも)在宅を促している」と語る。
6日の連邦政府統計によると、2月最終日の宿泊・飲食サービス産業の求人件数は前月比10万4000件増の76万1000件となった。
ファストフードなどの飲食チェーンは、ドライブスルーやテイクアウト、デリバリーを通じて新型コロナウイルス禍をうまく乗り越えてきた。ここへきて気候が暖かくなってきたことや店内飲食制限措置の緩和などで売り上げが伸びている。5日に発表された米サービス部門の活動を示す指数は過去最高となった。
業界の売り上げ拡大に採用が追い付いておらず、労働統計局のデータによると、3月の飲食業界は前年同月よりも従業員が依然として約120万人不足している。
他業界とも人材獲得競争
マクドナルドのあるフランチャイズ店舗は、刺激策による小切手配布を受けて売り上げが急拡大していると明かす。同店舗によると、一部の飲食スペースは労働者不足により今年下半期まで再開されない可能性があるという。
3月下旬に地元メディアが伝えたところによると、マクドナルドのフランチャイズ加盟店はオハイオ州だけで5000人の従業員を採用する方針だ。
前出のFATブランズのウィーダーホーンCEOによると、飲食店は同業者だけでなく、他の業界とも人材獲得競争を繰り広げており、レイオフされて建設や不動産といった業界で別の仕事を見つけた元ホスピタリティーワーカーの一部は戻ってきていないという。
同CEOは「ウェイターやウェイトレスはカクテルを売るように車をうまく売ることができる」と話した。