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数字で紐解く!ニューノーマルにおける東南アジアの小売市場の動向 #4タイ編

ダイヤモンド・リテイルメディアは、東南アジアの小売市場の現状分析と戦略立案をサポートする「ダイヤモンド・リテイルレビュー」(PDFファイル形式)を刊行しています。2020年12月、各国の消費者情報を深掘りするとともに、小売マーケットの最新情報をお伝えする「ショッパー&リテイル」として刷新し、タイ、マレーシア、シンガポールの最新版を発刊いたします。
この連載では「ダイヤモンド・リテイルレビュー」のチーフ・エディター内山宗生が、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた2020年上期の動向など、多様性に満ちた東南アジアの最新の消費者動向と小売市場の“いま”を読み解きます。
今回はタイの消費者動向と小売市場にフォーカスします。

タイ

ショッパーの消費の変化と小売市場

2019年のタイの総人口は6655万8935人で前年から0.2%増加した。世帯数は2187万958世帯で、前年から1.4%増加した。
19年のタイ全国平均の月額世帯収入は2万6018THBとなり、(2年毎に行なわれている前回の調査である)17年より3.4%減少した。一方、月額世帯支出は18年から2.8%減少した。ちなみに、17年比では3.2%の減少である。
19年のタイのGDPは16兆8759億THBで、国民1人当たりのGDPは24万4354THBとなった。GDPは前年より3.1%増、国民1人当たりのGDPは3.2%増となった。15年を100とした消費者物価指数では、19年は102.7となり前年より0.8ポイントの上昇した。

11年8月にインラック政権が発足し、12年は安定した政権運営が行われた事などを反映しGDPは9.3%成長した。しかし13年11月に前首相であるタクシン恩赦法案の成立を機に、バンコク中心市街での路上デモや首相府の占拠といった事態が発生した。14年2月に総選挙が行われたが、憲法裁判所によって選挙が無効化され、5月にはインラック首相が失職。そして、陸軍司令官として戒厳令を発令したプラユット陸軍大将が全統括権を掌握し、首相に就任した。
一連の政治的混乱を反映し、14年のGDPの成長率は2.4%と低い成長にとどまったが、翌15年以降は成長率を上昇させた。16年10月には、70年間国家元首であったブミポン国王が崩御し、1年間の服喪期間が設けられた。16年から18年の間のGDP成長率は6%前後を維持した。

タイの経済成長

2019年3月に8年ぶりとなる下院総選挙が実施され、プラユット(民政)新政権が正式に発足した。政治的な安定を維持しているものの、自動車輸出の減速などを背景に、製造業の不振と干ばつによるコメの生産量が減少したことなどにより、GDPは前年比3.1%増と、14年に次ぐ低成長となった。20年には経済の成長が立ち直らない状況でCOVID-19の感染が拡大した。

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経済成長と世帯収支

タイのショッパーの世帯収支は厳しい状況にある。GDPは過去5年間で22%増加したが、その5年間で世帯収入は3.4%減少、世帯支出は2%減少した。しかし、収入の減少率は支出減少率より高く、家計債務は増加している。(2018年末時点でタイの対GDP比家計債務残高は78.2%と先進国並みの高さにある)

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世帯支出の増減

世帯支出額が減少するなかで、支出が増加したのは「通信」「住宅/光熱費/家具・家財」「非消費関連」の3つのカテゴリーである。携帯電話代の比率が高い「通信費」や「住宅」「保険」「利子の支払」の支出は増えるものの、他のカテゴリーでは「贅沢なもの」「切り詰められるもの」の支出を減らす傾向が明確になっている。

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タイの小売市場

総選挙が憲法裁判所によって無効化され、インラック首相の失職、プラユット陸軍大将による戒厳令が発令された2014年の小売売上は前年比5.8%減少し、翌15年にさらに縮小した。16年にはブミポン国王が崩御 (10月)し、約1年間を服喪期間としたことなどから、小売市場は前年を維持するにとどまった。翌17年から市場拡大に転じ、17年は前年比6.3%増、18年は10.8%の2ケタ増となっている。19年は前年比3.1%増と拡大幅を縮小させた。

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2020年上半期の小売市場

COVID-19による「非常事態令」は2020年3月26日に発令され、タイの小売市場は4月には前年同月比29.4%減、翌5月に28.2%減となった。一般小売チャネル、専門店チャネルとも売上を減少させたが、一般チャネルはより早く回復の兆しをみせている。世界的な金融機関による予測では、タイの2020年通年の経済成長率をマイナス5.5%からマイナス7.7%としている(2020年6月発表数値による)。

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本連載と「ダイヤモンド・リテイルレビュー」について

ダイヤモンド・リテイルレビューASEANはASEANの中核をなす6カ国(タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、ベトナム、フィリピン)のショッパーと小売市場の実態を読み解く有料報告書。ファクトを基盤としたASEAN各国の小売市場の全体像や主要チャネルの現状、ショッパーの支出傾向などを把握することができる
2018年から刊行を開始しており、2020年12月にマレーシア、シンガポール、タイの3カ国の更新版「ショッパー&リテイル2020/21」を刊行。更新版は、2020年上半期の小売市場の状況を特集として扱い、3カ国の小売環境の大きな流れとCOVID禍にある市場の最新情報を提供

   https://drr.diamond-rm.net/

#4 タイ編 特別動画を視聴

シリーズの内容

  1.  マレーシア・タイ・シンガポールの2020年上半期の小売市場の概要
  2.  マレーシアのショッパーの消費と小売市場
  3.  シンガポールのショッパーの消費と小売市場
  4.  タイのショッパーの消費と小売市場