ダイヤモンド・リテイルメディアは、東南アジアの小売市場の現状分析と戦略立案をサポートする「ダイヤモンド・リテイルレビュー」(PDFファイル形式)を刊行しています。2020年12月、各国の消費者情報を深掘りするとともに、小売マーケットの最新情報をお伝えする「ショッパー&リテイル」として刷新し、タイ、マレーシア、シンガポールの最新版を発刊いたします。
この連載では「ダイヤモンド・リテイルレビュー」のチーフ・エディター内山宗生が、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた2020年上期の動向など、多様性に満ちた東南アジアの最新の消費者動向と小売市場の“いま”を読み解きます。
今回はマレーシアの消費者動向と小売市場にフォーカスします。
マレーシア
ショッパーの消費の変化と小売市場
2020年6月時点でのマレーシアの人口は3265万7300人で、前年同月比で0.4%増加した。ASEAN6の中では5番目の人口である。
マレーシア政府のCENSUS調査による19年の世帯数は727万6700世帯で、前回の調査が行なわれた2016年から4.7%増加した。世帯内人数は3.9人で16年から4.9%の減少となった。世帯内就業者数は1.8人で16年から増減はない。
19年のマレーシアのGDPは、前年よりも4.4%増加し、1兆5207億MYR(38兆円:1MYR=25円で換算)となった。ASEAN6の中ではインドネシア、タイ、シンガポールに次ぐ大きさである。2000年以降、マレーシアの経済は堅実な成長を示しているが、ITバブル崩壊のあった2001年と、いわゆるリーマンショックの影響を受けた09年のGDPはマイナスとなった。翌10年には、前年比15.2%と高い成長率をみせたが、それをピークに徐々に成長率は低下する傾向にある。ちなみに15年4月にGST(物品サービス税、日本では消費税に相当する)が導入された。しかし、18年の総選挙において野党連合が勝利したことで、選挙公約のひとつであったGSTが廃止され、SST(売上税・サービス税)が再導入されている。国民一人当りのGDPは前年から3.9%の上昇となり、消費者物価指数0.7%の上昇となっている。
マレーシアの家計支出
GDPの伸び率を下回ってはいるものの、マレーシアの家計収入と家計支出は順調に増加している。すべての支出科目で増加しているが、中でも家具・家財・住居維持といった住宅関連の支出や外食や宿泊の支出の伸びが顕著である。食料品支出も堅調な伸びを示している。
マレーシアの小売市場の推移
2015年に導入されたGSTは2018年に廃止され、同時にSSTが再導入されるという目まぐるしい環境の中でも、世帯支出の伸びに支えられたマレーシアの小売市場は拡大を続けている。14年から19年の間に、一般小売チャネルは年平均12.1%の伸⻑率、専門店チャネルは9.9%の伸⻑率となった。
マレーシアのチャネル動向
順調に拡大しているマレーシアの小売市場の中で、近接する小型店舗チャネルの伸びが大きい。特にミニマーケットとトラディッショナル・トレードといわれる食料品雑貨店の伸びが顕著である。「大きな店舗でのワンストップショッピング」というショッパーのニーズよりも、近接する店舗での日常の買い物のニーズが明らかに高まってきており、以前より小さなスペースにてアソートメントを最大化する戦略が急務とされている。
2020年上半期の小売市場
COVID-19のインパクトは専門店チャネルの売上に影響を与えている。一般チャネルは3 月18日に発令され、その後2度延⻑された「活動制限令(MCO)」により、4月は前年同月比9.3%減となったが、翌5月は3.2%減、6月は1.2%減と 減少幅を縮小させている。「活動制限令」により、小型・近接チャネルのショッパーの傾斜が進み、衛生管理や高栄養価の商品への関心も高まっている。
首都圏でのプレミアムスーパーマーケット
2014年から19年にかけて年平均10.1%の成長を遂げたスーパーマーケットは首都圏においてプレミアム化の動きが盛んになっており、その動きを外国系の投資ファンドが支えている。小売業に関するマレーシア政府による外国資本の規制は、小型店舗チャネル、大型店舗チャネルとも緩和されているが、大型店舗を展開する外国小売業の経営状態の苦戦は続いている。
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次回はシンガポールの具体的なショッパーと小売市場について要点をご紹介していきたい。
本連載と「ダイヤモンド・リテイルレビュー」について
ダイヤモンド・リテイルレビューASEANはASEANの中核をなす6カ国(タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、ベトナム、フィリピン)のショッパーと小売市場の実態を読み解く有料報告書。ファクトを基盤としたASEAN各国の小売市場の全体像や主要チャネルの現状、ショッパーの支出傾向などを把握することができる
2018年から刊行を開始しており、2020年12月にマレーシア、シンガポール、タイの3カ国の更新版「ショッパー&リテイル2020/21」を刊行。更新版は、2020年上半期の小売市場の状況を特集として扱い、3カ国の小売環境の大きな流れとCOVID禍にある市場の最新情報を提供
- ダイヤモンド・リテイルレビューASEANの詳細については、下記URLを参照していただきたい。また、インドネシア、ベトナム、フィリピンに関しては、海外往来制限が自由になった後に発刊を行う予定。
- DCSオンラインでは、更新された3カ国の報告書の要点を4回のシリーズにてご紹介する。また、登録をいただいた方には、オンデマンドでプレゼンテーション動画を配信しており、そちらもあわせてご利用いただきたい。