中国・東南アジアの小売市場ではコロナ禍を経て、小売チャネルそのものが大きな変化の波を受けている。中国では国内EC市場の成長が安定期に入ったことで、成長を国外に求める動きが活発化。東南アジアでは大手による寡占化が進む一方、伝統的小売業のデジタル化やQコマースなど新たなチャネルの勃興期を迎えている。中国、東南アジアそれぞれの小売市場の動きを解説する。
中国
国内EC市場の成長が鈍化
筆者は前回の本特集においても中国・東南アジアの小売市場について寄稿した(2022年12月1日号「世界の小売業レポート2023 「巨大市場の統合」が進む中国と多方向に発展する東南アジア」)が、そこで中国小売市場のトレンドを「オンラインを起点とした巨大市場の統合」だと述べた。
実際に図表❶のとおり、ECを含めた中国小売市場では、トップ3のプレーヤー、つまりアリババ(Alibaba)、京東(JD.com)、拼多多(Pinduoduo)の占めるシェアがこの10年で4%から27%にまで高まっている。その間、中国のEC化率も上昇しており、22年には30%を超えるに至った(図表❷)。
量的な観点では、中国小売市場はトッププレーヤーによってシェアが寡占化されている。だが市場の成熟によって、質的な観点では、実は「多様化」の方向を見せている。まさに岐路を迎えているといっていい中国小売市場において、ここからはその多様化の方向性について論じたい。
「越境EC」の強化で進むECの“地理的拡大”
まず重要なキーワードとして挙げたいのが、「ECプラットフォームの
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