23年2月、英国で「サラダ危機」が発生した。トマト、キュウリ、パプリカといったサラダ材料になる農産物が供給不足に陥ったのだ。スーパーマーケット(SM)の商品棚からそうした野菜が姿を消すこともあり、SNSで空になった棚の画像が拡散され、消費者の渇望感をいっそう煽った。いずれのSMも販売個数を制限する対策をとった。しかし、供給量が少し回復すると、すぐに制限が緩和され、再び供給不足が発生するといった状況が翌月も続いた。
当然、小売価格は上昇した。3月の生鮮食品と日配品の価格は前年同月比で17.0%増加した。これは同カテゴリーの過去最高の上昇率であった。
「サラダ危機」の直接の原因は、スペインとモロッコの天候不順によって、これら農作物の生産量が大幅に減少したことだ。英国は野菜の50%、果物の85%を輸入に頼っている。トマトに関しては、消費量のうち国内生産は5分の1にすぎず、3分の1はモロッコから輸入している。
もっとも、それは表面的な原因にすぎないというのが英国の生産者団体や食料問題の研究者たちの意見だ。英国での供給不足は深刻だったが、EU諸国では英国ほどの危機的状況は見られなかった。したがって、真の問題はもっと根深いところにあると彼らは主張する。「サラダ危機」の事態が回復しつつある今、真の解決に向け議論が始まっている。
EU離脱の余波が野菜の仕入れに影響
発生要因は、複層的かつ入り組んでいる。
まず、
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