[ニューヨーク 22日 ロイター] – 今年は非常に目覚ましかった米企業利益の伸びが、来年は鈍化する見通しだ。物価上昇と新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」の感染急拡大により、先行き不透明感が強まっている。
S&P総合500種は年間で約24%上昇する基調にあり、株価収益率(PER)は長期平均を大きく上回っているため、米国株が買われ過ぎではないかとの懸念が浮上しつつある。
リフィニティブのIBESデータに基づけば、S&P総合500種企業は今年、パンデミックに伴う景気後退とロックダウン(都市封鎖)の痛手から見事に立ち直り、増益率は50%に達するとみられる。だが、来年は8%前後の増益にとどまりそうだ。
ここ数週間でオミクロン株があっという間に広がるとともに、株価は下落してきた。それでも今のところ、来年の企業利益に関するウォール街のコンセンサスには、ほとんど変化がない。
パー・スターリング・キャピタル・マネジメントのディレクター、ロバート・フィップス氏は「われわれが目にしそうな光景が、企業価値の評価倍率の増大から縮小に切り替わる局面に入ろうとしている」と述べ、企業利益は増えても株価がそれに追随せず、投資家が得られるリターンが乏しくなるとの見方を示した。
リフィニティブ・データストリームによると、S&P総合500種企業の予想利益に基づくPERは現在21.5倍、長期平均は15.5倍だ。
これまで米国株のバリュエーションを支えてきた重要な要因の1つは超低金利だが、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ懸念を理由によりタカ派姿勢に転じている今、情勢は変化する公算が大きい、とフィップス氏は話す。
金利が上がれば企業と消費者の借り入れコストが増え、特にハイテクなどの成長株の株価が圧迫される。FRBは先週、労働市場の引き締まりと経済活動の強まりを理由に、債券買い入れ縮小(テーパリング)の終了を来年3月に早め、来年中に3回の利上げに動く布石を打った。FRBの来年の物価上昇率見通しは9月時点の2.2%から2.6%に切り上がっている。
同時に各企業はまだ、パンデミックに起因する供給網の混乱との悪戦苦闘を続けており、オミクロン株の世界的な拡大によってこの闘いはむしろ新しく、より厳しい局面に突入したようだ。
年末年始を控え、一部の国では感染拡大が加速してさまざまな規制措置が復活する可能性が大きくなってきた。ロイターの集計では、米国の新型コロナウイルス新規感染者数も今月初め以降で50%増加した。
ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズの米国株戦略責任者、クリストファー・ハーベイ氏は「この先、悪化し得る要素が多い」と語る。同社は来年夏までに米国株が10%前後下落する可能性が増してきたとみている。
米企業が今年、利益率の改善基調を維持できたのは経費を節減するとともに、販売価格引き上げで顧客にコストを転嫁できたからだった。だが、足元の幾つかのリスクが来年の米企業利益見通しや実績にどれだけ影響を及ぼすかは、まだよく分からない。
リフィニティブのデータを見ると、S&P総合500種企業の来年の増益率見通しは今月初めが8.0%、17日時点が8.3%だった。
ジ・アーニングズ・スカウトのニック・レイチ最高経営責任者(CEO)は「12月になって利益見通しは上振れている。つまりオミクロン株は、今の段階で見通しに織り込まれてさえいない」と指摘した。