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コスト増続くも経済正常化で業績好調? 中間決算前におさらいする主要小売業の1Q決算

電気代をはじめとしたコスト上昇の問題に直面するものの、人流回復に伴う経済の正常化、インバウンド消費の復活、リベンジ消費と明るいニュースもいくつか見られた小売業界。社会全体がアフターコロナの様相となる中、小売各社の足元業績はどう推移したのか。本稿では食品スーパー、総合スーパー(GMS)を中心に、主要小売業の第1四半期決算の結果を見ていこう。

通期過去最高益も視野に?イオンの1Q決算

 イオンの2024年2月期 第1四半期決算は、売上高に相当する営業収益が前年同期に対し5.5 %増、額にして1215億円増の2兆3247億円、営業利益が17.2%増、同75億円増の514億円と、増収・営業増益での着地となった。第1四 半期ベースでの営業収益は3期連続の増収で、過去最高を更新した。四半期純利益は前年同期に対し16億円減の177億円だったが、これは前年同期に株式売却益が生じていたことによる特殊要因だ。

 イオングループは日本を代表する流通コングロマリットであり、GMSではイオンリテール(千葉県)、食品スーパーではユナイテッド・スーパーマーケットホールディングス(東京都)、ドラッグストアではウエルシアホールディングス(東京都)と各領域でトップクラスの売上を誇る会社を傘下に抱えている。これらの企業の好調が各セグメントの増収に寄与したかたちだ。国際事業も同8.9%増の増収となっているものの、売上全体に占める比率は5.7%と低く、インバウンドも含めた国内消費の復調が好業績につながった格好だ。

 ただ、収益性には不安も残る。営業利益の絶対額は過去最高を更新したが、第1四半期における売上高営業利益率は2.2% と、他の有力小売と比較すると見劣りする。イオンは中期経営計画において「2025年度に営業利益率3.5%」という数値目標を掲げている。達成のためには、デジタル化、付加価値向上、ドラッグストア事業の強化など取り組むべき課題は多い。

反動減も海外事業は引き続き好調? セブン&アイ1Q決算

 セブン&アイ・ホールディングス(東京都)の2024年2月期の第1四半期決算は、営業収益が前年同期に対し8.3 %増、額にして2033億円増の2兆6506億円、営業利益が19.9%減、額にして203億円減の819億円と、増収・営業減益だった。

 第1四半期における営業収益は過去最高を更新。「国内コンビニエンスストア」「海外コンビニエンスストア」「スーパーストア」「金融関連」と主要セグメントはいずれも増収を果たしており、とくに海外コンビニエンスストア事業の寄与度が大きい。

 一方で営業利益は、国内コンビニエンスストア事業が増収効果により48億円 の増益だったものの、海外コンビニエンスストア事業の減益(前年同期から229億円減 )が足を引っ張った。ただ、これは前年の原油高に伴う記録的なガソリン販売好調の反動によるもので、あくまで一時的な要因と見ていい。

 売上全体への寄与度が大きい海外コンビニエンスストア事業は、成長率も全セグメントの中で唯一の2ケタ成長(前年同期比10.3%増)となっている。一方、営業利益は8割近くを国内コンビニエンスストア事業が稼ぎ出している構図が続く。加盟店の利益確保、光熱費や人件費などのコスト負担といった問題を抱えつつも、客数・客単価の伸びに支えられ、好調を維持している。

新中計は好調な滑り出し! ライフの1Q決算

 ここからは食品スーパー企業を見ていこう。ライフコーポレーション (大阪府)の2024年2月期 第1四半期決算は、営業収益が対前年同期比5.4%増の1958億円、営業利益が同15.0%増の63億円となり、増収・営業増益だった。四半期ベースでは、3四半期期連続で増収・営業増益となっている。

 部門別売上高でも、生鮮食品、一般食品、衣料・雑貨のいずれも前年同期を上回った。300店舗体制の節目となった「セントラルスクエアららぽーと門真店」(300店舗目)を23年4月にオープンするなど積極出店を続けるほか、売場拡大や冷凍・PB食品拡充を目玉とする既存店改装にも取り組んだ。

 ライフコーポレーションでは今期から「第7次中期経営計画(2023~2026年度)」がスタートしている。新中計の滑り出しは好調と言ってよさそうだ。

今期も増収増益記録更新なるか、ヤオコーの1Q

 ヤオコー(埼玉県)の2024年3月期の第1四半期決算は、営業収益が対前年同期比8.5%増の1487億円、営業利益が同18.1%増の90億円とこちらも増収・増益だった。営業収益・営業利益とも、第1四半期ベースでは過去最高となった。

 食材の高騰に、光熱費・人件費といったコスト負担増もあり、食品スーパーにとって厳しい経営環境が続く中、ヤオコーはEDLP(エブリデイ・ロープライス)政策や、「厳選100品」といった価格訴求の販促活動を展開し、お客の支持を集めている。加えて、コロナ禍から続く中食志向も堅調で、総菜の根強く支持されている。消費者の節約志向もあって、23年4~6月の1人当たりの買い上げ点数(既存店ベース累計)は前年同期から1.9%落ち込んだものの、一品単価がそれをカバーする伸び(同6.1%増)を見せており、客数も同2.0 %と伸びている。

 間もなく2月期決算企業の中間決算が発表される。見通せない状況が続く中、各社の業績がどのような折り返しを迎えるかに注目だ。