「業務スーパー」を運営する神戸物産(兵庫県)は2022年12月15日、2022年10月期の連結決算を発表した。節約志向の高まりに加えて、昨今の値上げラッシュも追い風となり、好調を続ける同社。神戸物産の最新決算の概要と2023年10月期の戦略についてレポートする。
売上高が初めて4000億円を突破!
神戸物産の2022年10月期の連結業績は、売上高は対前期比12.4%増の4068億円と初めて4000億円を突破した。店舗数の大幅増加に加えて、既存店が好調に推移したことにより、2ケタの増収を果たした。
売上総利益は同8.1%増の465億円で前期実績を上回ったものの、売上高売上総利益率は11.5%と前期から0.4ポイント悪化した。販売管理費も187億円と前期から大きく増加し、売上高販管費率は4.6%と前期から0.2ポイント増加している。
粗利益率の悪化、販管費率の上昇について、「あえて説明する必要もないかもしれないが、原材料費や水道光熱費などが高騰していることに加え、当社では輸入品を多く扱っているので、為替が円安に振れた影響も強く受けた」と沼田博和社長は説明する。
ただそれでも営業利益は同1.9%増の278億円、経常利益は同10.4%増の321億円と難なく前期実績を上回り、当期純利益は同6.3%増の208億円と、初めて200億円を突破。8期連続の増収増益で着地している。
一連のコスト増の影響は、商品価格改定というかたちで反映されている。たが、それでも「業務スーパー」の低価格で大容量の商品群は、ほかのスーパーマーケットに比較して「割安感」があり、消費者の支持は根強く、同社の業績好調につながっている。
主力事業「業務スーパー」が業績をけん引
主力事業の業務スーパーは店舗拡大を続けている。2022年10月期は79店舗を新規出店し、22店舗を退店。総店舗数は57店舗の純増となり、2022年10月末には1000店舗を達成し、期末時点では全国に1007店舗を展開する。「純増数は目標の60店舗に対して3店舗の未達となったが、依然として各オーナー様の出店意欲は非常に旺盛で、今期(=2023年10月期)もある程度の数値が期待できると考えている」(沼田社長)。
業務スーパー事業の売上高は3962億円、営業利益は316億円(2021年10月よりセグメント区分の変更があったため、過去データとの増減比較なし)で売上高営業利益率は前期から0.7ポイント悪化したものの8.0%と高い水準を維持している。
業務スーパーの競争力の源である、プライベートブランド(PB)商品の開発・生産体制は強化されている。2021年1月に宮城県、同4月に岡山県の食品製造工場が稼働し、自社グループ工場数は国内で25カ所と、日本最大級の規模となっている。これら自社工場で製造された商品と、直輸入商品を合わせたPB比率は34.74%と、同1.62ポイント増となった。
既存店売上高は18年10月期比較で32%も成長!
また、既存店売上高(直轄エリア、業務スーパーへの出荷実績)は2022年10月期は対前期比4%増と好調。直近4期だけでも、19年10月期7.1%増、コロナ1年目の20年10月期15.9%増、21年10月期2.4%で、毎期プラス成長。
18年10月期と比べると22年10月期の既存店売上高は32.2%も成長していることになる。沼田社長はダイヤモンド・チェーンストア誌のインタビューで、最も重視する指標を「既存店売上高」とした上で、「毎期、対前期比2%以上伸ばすことを目標にしている」と語っており、近年はそれを遥かに上回るペースで既存店を成長させていることになる。
そのほか、神戸物産では、ビュッフェレストラン「神戸クック・ワールドビュッフェ」、焼肉オーダーバイキング「プレミアムカルビ」、総菜専門店「馳走菜」など外食・中食事業を展開しているが、とくにビュッフェなどはコロナ禍で打撃を受けており、同事業は2022年10月期は前期に続いて営業赤字での着地となった。
「ワールドビュッフェに関してはこれから確実に回復に向かうと見ている。プレミアムカルビは、さらなる成長のための先行投資の位置づけで、個店ベースの営業損益の合算ではすでに黒字化している事業だ。とくに大きな心配はないと考えている」と沼田社長は話す。
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値上げが予想されるなか、今期も増収増益を計画!
2023年10月期の業績予想は、売上高が同8.2%増の4400億円、営業利益が同6.8%増の297億円、当期純利益が同1.8%増の212億円と増収増益を見込む。
一時1ドル150円を越えた未曽有の円安は緩和されつつあるものの、依然として円安ドル高の状況は続いている。そのため、売上の2割を占める輸入商品のコスト増が来期も課題となる。加えて原材料の価格高騰や電気水道などのインフラコストは高止まりが続くと見られ、コスト圧力がグループ工場に大きな負担としてのしかかっている。
これらコストの商品価格への転嫁について、沼田社長は「輸入品については、為替自体が落ち着いてきたので、これ以上の値上げはおそらく必要ないだろう」とする一方で、「ナショナルブランドや当社のグループ工場の商品はまた一段、二段と値上げが必要になる」と述べる。
「この1年間は原材料価格や為替が急速に変化し、それを後追いするようなかたちとなってしまった。原材料の値上げも、そこから上がってはいるものの、上昇ペースは緩やかなになっていると見ている。うまく価格に転嫁して、しっかりと利益を調整していきたい」(沼田社長)。
その一方で、出店戦略では、フランチャイズオーナーからの後押しもあり、40店舗の純増をベースに予算を立てるなど、不透明な経済環境下においても攻めの経営を続けていく計画だ。
中計2年目!売上目標は前倒しで達成
神戸物産では、2022年10月期から3カ年の中期経営計画がスタートしており、今期はその2年目となる。中計では、2024年10月期に売上高4100億円、営業利益320億円、ROE20%以上を目標としているが、すでに売上高は2023年10月期に達成する見通しで、修正を検討するという。
中計の基本方針は、PB商品の強化を継続するほか、主力事業の業務スーパー事業を拡大することを中心となる。加えて少子高齢化や女性の社会進出に対応すべく中食事業も拡大していく。多様化する食のニーズに対応すべく、外食事業も強化していく方針だ。
2023年も食品やその他品目の値上げは確実だ。これまで節約志向が高まれば高まるほど顧客を獲得してきた神戸物産だが、スーパーマーケットやドラッグストアなどの他業態も必死に売上確保を目指すなか、「食の製販一体体制」と「独自のローコスト販売システム」、独自の「商品力」という3本柱の戦略で、この値上げ時代にどんな成長や革新が見られるのか?
2023年も神戸物産の事業拡大から目が離せない。
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