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AJS田尻一会長が指摘する「これからの食品小売はどうなっていくのか?」

日本スーパーマーケット協会(JSA)、オール日本スーパーマーケット協会(AJS)、全国スーパーマーケット協会の3団体は7月21日、7月度販売統計調査の記者発表会を開催した。定例発表の内容と、スピーカーとして登壇したAJS 田尻一会長の発言をまとめた。

i-stock/recep-bg

6月SM販売統計調査は反動減ひと段落

 スーパーマーケット(SM)販売統計調査報告(2021年6月)の内容は、は前年同月比売上高(全店ベース)で100.0%、同既存店ベースで98.9%と、4月、5月と続いた昨年の反動減に歯止めがかかったかたちとなった。前々年同月比売上高は、全店ベースで106.2%、既存店ベースで103.7%とプラスを維持した。要因として、コロナ特需の反動減少が落ち着きを見せつつあることや、梅雨入りしたものの前半雨が少なく、客足への影響が少なかった地域があったことなどが挙げられる。

 部門別では、コロナ禍で苦戦した総菜が前年同月比売上(全店)で107.6%と回復を見せた。これには外食の時短営業の影響や、家庭調理に疲れ即食系商品へのニーズが高まっている傾向があるとみられている。生鮮では、昨年コロナ禍で冷凍精肉が爆発的に売れたことや、ここ最近の輸入肉の相場が高かったことを踏まえて畜産部門がやや低調な結果となった。また、非食品が同87.8%と大きな落ち込みとなったが、これには昨年のマスク・衛生用品の特需の反動減、昨年7月のレジ袋有料化に向けて6月にマイバッグの販売が好調だったこと、キャッシュレスポイント還元の終了が昨年6月だったため、タバコなどの駆け込み・まとめ買いがあったためだとしている。

 その他の傾向では、全国的にみて保有店舗数の少ないSMの売上がなかなか回復せず、等しくコロナ特需の恩恵を受けた昨年と比較し、より格差が顕著になりつつある。また、AJSの独自調査では、客数が減少し客単価が上がった昨年からの傾向が解消され、客数が伸び客単価が下落する傾向になってきているという。これは、消費者の買物傾向がコロナ禍から以前の状態に戻りつつあることを示している。

宅配好調の生協は堅調に推移

 主要地域生協の6月度供給高速報では、前年比総供給高が100.0%、前々年比では114.1%と引き続き堅調な結果となった。なかでも宅配に限って見ると、前年比供給高100.6%と前年超過。冷凍食品や飲料の購入がとくに好調だった。昨年コロナ禍で大量に獲得した新規会員の傾向としては、今年に入っても通常と比べ退会が少なく、継続して利用している割合が高い。また、新規入会者は青果をあまり購入しないというのが今までの傾向だったが、昨年および今年の新規入会者は青果を含めて積極的に利用する傾向にあるという。

原材料高騰と価格競争のリンクが直近の課題

オール日本スーパーマーケット協会 田尻一会長

 AJS 田尻一会長は発表で、「原材料の高騰による値上げと、価格競争をどうリンクさせるかが直近の大きな課題になる」と述べた。

 発表の前半では、1980年から2020年までのエンゲル係数と食品支出の推移を示し、エンゲル係数は大きくV字を描くように変化がみられるが、これは母数である消費支出合計の変化によるもので、食品支出の絶対額は、実はさほど変化がないことを指摘。「世の中にどのような変化が起こっても、食品にはいつの時代も安定した需要が発生する」ということを示した。

 後半では、これからの食品小売がどうなっていくのか?について「私自身も悩ましく感じている。これはある意味、消費者が決めることでもある」(田尻会長)と、行き先の不透明さを表現した。一方で、コロナ禍以前の消費行動に世の中が少しずつ戻りつつある状況を踏まえ、価格競争の激化についての懸念を示した。大豆をはじめとする原材料の高騰にも触れ、「安売りできる商材が今後どれだけ作れるのか?という課題もある」と述べ、段落冒頭で示した値上げとの戦いと価格競争をどう両立するのか、を直近の課題として提示し発表を締めくくった。