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米国セミナーweb報告

2020年11月19日、「世界の食品トップ10トレンドと、『新たな日常』におけるアメリカ小売業の現状」をテーマとするウェビナーが開催された(主催者:米国中西部・北東部食品輸出協会/米国大使館 農産物貿易事務所)。従来、日本の市場開拓を希望するアメリカの加工食品メーカーと、日本の小売業や輸入商社のバイヤーとをつなぐ場として、毎年、日本国内で開催されていたものだが、今年については、新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、オンラインでの開催となった。
海外を舞台に活躍されているゲストスピーカー2名による(平山幸江氏/NY在住リテールストラテジスト・在米中小企業診断士、田中良介氏/Innova Market Insights)による基調講演に加え、世界の食品トレンドをリードする米国加工食品メーカー13社のプレゼンテーションが、映像配信された。その模様をレポートする。

第一部の基調講演は、NY在住リテールストラテジスト・在米中小企業診断士の平山幸江氏による「ニューノーマル時代の米国食品小売業の最新トレンド」だ。

まず、コロナ禍での食生活の大きな変化として、米国でも、日本同様、自宅で食事をする機会の増加があると、平山氏は指摘、自宅で料理する際のポイントとして、「便利・安心・ヘルシー」とあげる。
「コンビニエンス(便利)」は、調理法や食材がシンプル、どこでも購入でき、少ない食材で料理ができあがる。次に「コンフォート(安心感)」。失敗リスクの少ない料理、みんが好きなメニュー、子供の食べ慣れた味。感染リスクに注意しながら生活するなかで、家庭内での食事はストレスフリーでいたいという願望が強い。最後が「ヘルシー」。自宅調理の場合は、ヘルシーでも簡単にできなければならない。

このコロナ禍では、感染リスク対策として、EC利用が一気に高まった。しかし、今後はますます多様化する。たとえば、「店舗で購入」、「オンラインオーダーでクリック&コレクト」、「ファーマーズマーケット」、「レストランからデリバリー」、「レシピに必要な食材がそろうミールキット」などから、「どの方法で購入するか、そのときどきの気分で決める」というのが、平山氏の見方だ。

一方で、企業からのアプローチとして、便利に安心して日常生活がおくれるよう新たなテクノロジーを活用してビジネスモデルを開発する動きが高まっている。
ひとつは、人口が密集する大都市圏中心に小型FC(ミクロフルフィルメントセンター)が増加している点だ。EC利用者は大都市圏に集中しているが、大都市圏には大型FCを建築できるような土地はなく、コストも高くなる。そこで、とくにロボット導入による自動ミクロFCの導入がオンライングローサリーの分野で急増しているのだ。

店舗における非接触化の最大のポイントはレジレスだ。
アマゾンが2020年2月末、シアトルに開業したレジレスSMが「アマゾンゴーグローサリー」だ。入口ゲートでQRコードをかざすだけ、入店後はアプリを立ち上げる必要もない。
伝統的なSMと同じレイアウトになっているが、アマゾンの開発担当者は「正確に課金することが重要であり、顧客の行動を正確に認識するためには、不自然な行動をしなくてすむようにすることが大切(=顧客が慣れ親しんだ伝統的なレイアウトが適している)」と語っている。

第二部の基調講演は、世界でいちばん精度が高い食のトレンドを分析する企業として定評のある、Innova Market Insights田中良介氏による「世界の食品TOP10 トレンド2020」。
冒頭で、田中氏は「海外のトレンドは数年後には、必ず日本市場にやってくる。その意味でも、トレンドを先取りしておくことは、ビジネスの種をいち早くつかまえることになるのだ。以下では、TOP5を簡単に紹介する。

2020年のトレンド1は「ストーリーテリング(言葉による差別化)」だ。同社の調査によれば、56%の消費者が、ブランドの背景にあるストーリーが購買決定に影響すると回答している。たとえば、過去10年間に伸びてきた重要なトレンドである「クリーンラベル(Clean Label)」情報を、心に響くストーリーで伝えられるかだ。無添加、ナチュラル、オーガニック、Non-GMOなど、「からだにいい原材料を使いましょう」といったことをいかにストーリーに載せられるかがポイントになる。

トレンド2は「プラントベース革命」。植物性食品はトレンドのひとつであるだけでなく、食品革命をも引き起こすキーワードになっている。「Plant based(プラントベースト)」は、特定の食事でなく、一般の人対象のものになった。Plant basedをうたった食品の年平均成長率は、68%(2014年〜18年)と高いものになっている。

トレンド3は「サステイナブルマインド」。「企業がサステイナブルに投資することを期待」と答えた消費者は、2018年は65%だったが、19年には87%に増加。「プラスチック廃棄」、「食品ロス」、「労働搾取」の問題解決に貢献する商品に対して、その分、高い金額を払ってもいいと答えている。

トレンド4は「自分にぴったりの食」。いまや世界中の人たちの生活は多様化していて、忙しい。キャリア、家庭生活、社会生活のために、日々、走り回り、強いストレスを感じている。一人ひとりの生活スタイルに合った、「ストレス低減」、「安心感」、「ぜいたく感」が求められている。

トレンド5は「食感」だ。とくに、20代、30代は、食感にひかれる傾向がある。パッケージに入れると効果的だ。ただし、50代以上には、食感よりも、原材料、健康、ベネフィットをうたうパッケージが好まれる。

米国企業プレゼンテーション

2020年1月、日米自由貿易協定が施行された。それにより、日本に輸入される食品と農作物の多くが関税の撤廃、あるいは特恵税率が適用されることになり、米国産食品の日本市場での可能性がますます広がりを見せている。

以下では、今回ウェビナーに参加した、米国内で魅力的な加工食品を製造する13社について、その個性的な商品のごく一部を紹介しておく。

1)アクミオーガニック社(Acme Organics LLC)

創業8年目、ミネソタ州を拠点とする同社が製造販売するBBQソースは、すべてオーガニック認証、ヴィーガン対応、グルテンフリーで、「何よりも“味”を大事にしている」(創業者のアンディ・ライト氏)という。

2)シーボ ビタ社(Cibo Vita Inc.)

自社ブランド「Nature’s Garden」「Chocolate Orchard」で、ヨーグルトコーティングのプレッツェル、抗酸化プロバイオティクス(善玉菌)ベリーミックスを製造販売するほか、プライベートブランド(PB)の受託製造にも対応している。

3)フルフィル フード&ビバレッジ(Fulfill Food & Beverages)

「食物は、薬よりよく効く」という古代の知恵に対する信仰と近代的な栄養・医療リサーチとの調和により、製品開発を行っている。注力している成分は、プレバイオティクス(善玉菌)、ナチュラル、オーガニックだ。

4)ゲット シリー アイスクリーム(Get Silly Ice Cream)

ドットアイス、アイスクリームドッツ、ビーズ状アイスなどと、呼ばれているクライオアイスクリームを製造販売。独自の製法により、従来のアイスクリームと同じ温度帯で配送でき、新しいアイスクリーム製品としての提供が可能だ。

5)ヘノグループ社(Heno Group Corporation)

同社の「Bee’s Water」は、USDAでAグレードの評価を受けた天然のはちみつを使用する、RTD初のハニーWater。抗酸化作用があるビタミンA、ビタミンC、ビタミンEを豊富に含む。フレーバーはクラシック、レモン、オレンジ、シナモン、ブルーベリーの5種類。

6)カルマライズ社(KARMALIZE, LLC)

同社のKarmalize.Meには、USDAオーガニック認証、Non—GMO、コーシャ(ユダヤ教徒が食べてもよいとされる「清浄な食品」)、グルメスプレッド(ナッツバター)、スーパーフード、機能性パウダーの製品ラインアップがある。売上げの50%を寄付に充てている。

7)ケイズ ナチュラル社(Kay’s Naturals Inc)

1997年の設立。10年以上にわたり、Kay’s Naturalsのブランドで展開される高プロテイン、低GI、グルテンフリーのシリアル、スナックに注力。米国およびカナダのスポーツ栄養市場、体重管理市場で活躍する主要企業のためにPB製品を製造している。

8)ミラーズ マスタード(Miller’s Mustard)

自宅キッチンから創業。サイズや形、色からその名がついたといわれ、米国ではポピュラーな唐辛子「バナナペッパー」使用したペッパーソースを製造販売。チーズ、クラッカー、プレッツェル、サンドイッチ、バーガー、グリルした肉や魚にもよく合う。

9)オーガニック ペット システム

25年間、人と動物の健康とウェルネスの市場でビジネスを展開。100%オーガニック、100%天然、地球上でもっとも栄養価、効能が高い原材料を使って、ペット向け製品を製造。スーパーフード、ミールバランサー、適応促進剤などのラインアップがある。

10)SCDプロバイオティクス

1998年の創業以来、プロバイオティクス製品をグローバルに展開する、革新的なライフサイエンス企業微生物コンソーシア・プロバイオティクス技術の原理に基づいて、天然のプロバイティクス製品のリサーチ、開発、製造を行っている。

11)カルマ ソース社(The Karma Sauce Company)

原材料の多くを自家農園で栽培、手作業による最小限の加工でホッとソースを製造。ソースのベースはすべてかぼちゃで、「食事に合うソースを大胆につくる」ことをミッションとしている。前年比90%超の成長を続けている。

12)ランアソングループ社(The Run-A-Ton Group, Inc.)

1972年から多岐にわたる冷凍ベーカリー製品を製造。100%天然で、オーガニックの家庭用冷凍パイ生地やクッキーなどの「Wholly Wholesome」「Wholly Gluten Free」、一口サイズのプロテインバーの「MetaBall Energy Bites」などのブランドで提供している。

13)ストーングループ

ウィノナフーズ社(Winona Foods)
アメリカのチーズ製造の中心地、ウィスコンシン州グリーン・ベイにあるチーズ会社。現在、「チーズカップ」、「100%植物由来のチーズ」、「キューブ型チーズ」、伝統的な「ナチュラル・シュレッド」を主力に展開している。