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焦点:新型肺炎に身構える日本企業、日中GDP下押しのリスクも

新型コロナウイルス 羽田空港
1月28日、拡大する新型コロナウイルス。日本企業は、訪日客の減少や中国の景気減速など多方面から影響が及ぶのではないかと身構えている。写真は羽田空港で20日撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 28日 ロイター] – 拡大する新型コロナウイルス。日本企業は、訪日客の減少や中国の景気減速など多方面から影響が及ぶのではないかと身構えている。SARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した2003年当時と比べても、中国の存在感は格段に高まっており、影響も大きくなることが懸念されている。

今年の春節休暇は1月24日―30日。ある観光関連業者は、30日が木曜日にあたるため、1日休暇を取得すれば、2日まで春節休暇需要が見込めると期待していたが「見通しにくくなった」と肩を落とす。

27日から団体の海外旅行禁止措置が発動され、国内のホテルではすでにキャンセルも出ている。25日現在、新型ウイルスを理由に144室のキャンセルがあったと話す大阪のホテルでは「今後についての影響は予想もできない」という。

ある百貨店では、昨年12月後半からインバウンドの売り上げが伸び始め、春節スタート3日間は昨年と比べ30%増で推移していたという。ただ、幹部は「定期的に日本を訪れて化粧品など消耗品を購入していたような人は、次にいつ訪日できるか分からないとして、早めに、または、いつもより多めに購入していた可能性がある」と振り返る。

日本企業への影響については、訪日客の減少が直接的に影響する。日本政府観光局の統計によると、SARSが流行した2003年と比べて2019年の中国人訪日観光客数は21.3倍に拡大。2019年は訪日客のうち中国が30%、旅行消費額は36.8%を占めている。消耗品をより多く扱うドラッグストアなどは、訪日客数の減少がダイレクトに売り上げ減に効いてくる可能性がある。

春節が過ぎた後も、花見やオリンピックなど、訪日客を呼び込むイベントが続く。旅行の予約が2カ月程度前に行われることを考えると「1日、1日と長期化することによって、影響は大きくなってくる」(前出の観光関連業者)と懸念の声が上がる。

<中国株に下押し圧力、消費に懸念>

もう一つ、日本企業に影響を及ぼすのは中国経済の減速だ。中国は、世界の生産拠点から消費拠点へと変貌してきた。第一生命経済研究所では、目先、米中貿易協議の一段の悪化が避けられたことなどを受けて、昨年末には底入れ感が出た中国の株式相場について「連休後は大幅な下押し圧力がかかることは避けられず、再び、家計消費の足かせとなることが懸念される」とみている。

昨年10―12月期には前年同期比6.0%増を確保した中国の実質GDP。みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は、春節が延長されたことを受けて「製造業の生産活動が止まる期間が3日長くなる。今年1―3月期は、昨年10―12月期よりも弱い数字になる可能性が高い」と指摘する。

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、悪影響が1年間続く場合には、日本のGDPは2兆4750億円、0.45%押し下げられると試算している。そのうえで「これはインバウンド需要の変化を通じて日本経済に与える影響を試算したもの。実際には、日本人の個人消費悪化の影響、企業の生産活動停滞の影響、海外経済減速の影響なども加わってくる可能性がある」とコメントしている。